508号室の雪女、その後。
今年は、春になるのが早くて、いつもの年より急いで引っ越しをしなければならなかった。
でも、私は雪女。冬以外の季節に、ここに居れば死んでしまう。
引っ越しの手順は決まっていた。まず、冷凍・冷蔵のトラックに乗せてもらえるようにお願いする。もちろん、荷台のほうに。無料では申し訳ないので荷積みや、荷下ろしなどできることはする。私が乗ると荷台の温度は下がるので、顔見知りの業者さんには重宝されている。
港に着いたら、コンテナ船に乗り込み、一路、南半球へ。
南半球には、南半球の住まいがあるのだ。
(ふーっ、着いた。まずは、南十字星を探してみようか・・・。)
私はヒンヤリとした空気の中、空を見上げた。