創作: 支える側

彼氏と別れそうになった友達と話をしていて、そこからインスピレーションを得た創作。プライバシーのため色々ぼかしたりフィクションだったりしますがご容赦下さい。



もう限界かな。

そう思った。
ここ半年間、不安定な彼女を必死で支えてきた。一緒に過ごす時間は少しでも安らいで欲しくて、出来るだけ彼女のやりたい事や体調に合わせた事をするようにしてきたつもりだ。そこに不満は何一つ無かった。
でも、もう元気な彼女が分からない。半年間があまりに長すぎて、彼女がどんな風に屈託なく笑うのか、どんな風にはしゃぐのか、思い出せない。それがあまりにも悲しかった。
それまでと同じように笑っていても、目の奥がずっと暗い事に気づいてしまって、一緒に過ごしていても隙間で日々の疲れが積もっている姿が見えて、のこのこ会っている場合じゃない、会っているはずの時間家に帰って、ずっと寝ていた方がいいのじゃないか、と思ってしまう。こころを休める時間を。自分がサンタクロースなら、今すぐに彼女に長すぎるほどの休みをあげたい。 

決して嫌いではない。決して。
心の底から好きで、好きだからこそ、悩んでしまう。

疲れている彼女には、酷だと思って飲み込んできた事や勝手に気を回したこともある。そんな配慮の積み重ねが、次第に自分の体を蝕んでいたみたいだ。
普通なら元気に過ごせるはずの初夏を、闇を引き摺りながら過ごした。食欲は、春あたりから、食べたい日もあれば基本食べたくない日のほうが多く、寝つきの悪い日々が増え、感情が不安定な日々が日常化しつつあった。自慢の肌も荒れが目立つ。
友からも、家族からも、日に日におかしくなっていると言われる。何も考えていない時の顔が怖くなっている、日を追うごとに疲れている、ちゃんと食べているのか、と。

自分だって頑張って支えている。でももう、何をしたら良いのか、そもそも自分が支えになれているのか、一緒になってすぐこんな事になるなんて、とか吐き出してしまいたい事は山ほどあって、酒を飲みながら吐き出したいけれど、吐き出せるほどの時間も自分には与えられていないのだ。大学の課題、サークル、バイト、全てが自分の時間を吸収していく。

彼女の方も同じだろう。見ていて本当に心を落ち着ける余裕が無い。でも、自分が彼女の前からいなくなれば、空いた時間を、彼女は自分の時間として使えるのでは無いだろうか。もう2人の関係は限界だと思うから離れたいと、嘘を付けば。そこで負う僕らのダメージは計り知れないけど、でも、いつか乗り越えて忘れられる日々が来る。恋愛なんて、他のことに比べればそんなものだ。
ダメとは分かっていてもここ最近、ずっとそんなことを考えて過ごしている。もうダメだ離れよう。と思って、でもまたすぐに写真を見返してしまう無限ループを繰り返して、自分は一体何がしたいのだろう。

彼女はたまに、彼女の闇をポツリポツリと話してくれる。信頼してくれているのが伝わって、すごく嬉しいけれど、闇の重さが重すぎて、自分が容易く言葉を返すことができない。話して欲しくないんじゃない。ただ、自分が何もできない事に、悔しさだけが残る。できることなら代わってあげたい。自分が苦しむ事で、彼女が救われるのならいくらでも。こんなに苦しむべき人間じゃないんだ、君は。

考えすぎて、自分の心が沈んでいく。でも彼女に比べたら、大した事はない。もっと辛い思いをしているのだから、これくらいのことは大丈夫なはずだ。そうやって心を押さえつけてきた。だけど、もう限界なのかもしれない。もしかしたら、離れるのが1番の選択肢なのかもしれない。

でも、離れることを考えるたびに、彼女の笑顔が浮かぶ。大好きで仕方がない、その笑顔が。付き合い始めた夏が来る。夏の香りを嗅ぐたびに、好きになった、付き合った一連の流れが走馬灯のように頭の中を巡る。

ぐるぐる回る頭の中で考えた。今は正直、人生で1番かもしれないくらい辛くて、苦しくて、終わりが見えなくて、どうしたら良いか分からない。
それでも好きで、大好きで、愛していて、だからやっぱりそばにいたい。何年かかるか分からないけど、また心の底から笑える日はいつか必ず来る。その日まで、大切に接する方法を絶対に見つけて、彼女を支える。今の自分はいっぱいいっぱいすぎるから、自分にも目を向けてあげよう。遊びたい事、やりたい事は全部その「いつか」に取っておこう。今は彼女に合わせて、無理に動かなくても良いじゃないか。
そうやって自分の心を整理したら、詰め詰めだった心の時間が少しは空いた気がした。今夜は早く眠れるかもしれない。

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