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宝塚大橋の向こうから眺めている②

私は宙組ファンなので、亡くなった彼女の事と同じぐらいに加害者と名指しされた上級生たちの事も案じていた。

彼女たちが週刊誌で芸名を挙げられた事も悲しかった。何かの間違いであって欲しかったし、あの舞台で夢を与えてくれた人たちがハラスメントを行うなんて事を受け入れがたかった。彼女たちも下級生時代はそうやって指導されて来ただろうし、普段から感情的だった訳ではないはずだ。それに、万が一違っていたら彼女たちの今後のセカンドキャリアにも響く。宝塚歌劇団なんてろくに知らないような人達から、アクセス数稼ぎのインフルエンサーのような人達から言われたい放題に囃し立てられる事だって耐えられなかった。

なので、この件に関しては、誰がハラスメントをしたかの犯人探しではなく、劇団のあり方について憤りを感じている。返す返すも、劇団幹部による初動の会見での誠実さの欠片もない言葉の数々が発端だ。全てを「伝統」の2文字で、生徒さん達の苦しみを受け止めて改善してこようとしなかったのではないか。変わっていこうとする姿勢があれば、劇団内部の誰かが聞いてくれたら、働きかけてくれたら。劇団内にちゃんと機能する相談窓口があれば。誰かが助けてくれたらば、命を絶つ事も週刊誌にリークするような事も無かったと思う。

そして、もう1つ耐えられなかったのは、亡くなった方やご遺族に対し誹謗中傷を行うファンだ。思う事は自由だが発言していいか悪いかの区別がつかない人達。正直、同じファンだとは思いたくない。

一般論として、確かに命を絶つ要因は複合的にあり「これが原因だ!」と断定はできない部分はある。その理屈はあるかもしれないけど、それを第三者が勝手に騒ぎ立てて同調する。故人やご遺族・弁護士にまで誹謗中傷を行う。そしてそれに同調するOGまでいる事が悲しい。恥を知れと言いたい。弁護士が怪しい?報道禍?行き過ぎた報道?ここまでしなければ動かなかったでしょ、劇団は。臭いものには蓋をして、のらーりくらーり時が過ぎて、それでもファンは来るんだもん。あの会見ぐらいの強烈なアクションを起こさなければいけなかったの、劇団のせいじゃないの?

この人達に言いたい。

犠牲者が贔屓だったら同じ事が言えるの?自分の身内が学校で職場で同じ目に遭ったら同じ事を言えるのか。

亡くなった彼女だって、大切な宙組生だったんじゃないの?

掛け替えのない大切な命じゃないの?

自分の贔屓さえよければ、それでいいの?と言いたい。

宙組が大好きだ。特に応援している宙組生が居て、彼女が舞台に立ち続けるならば応援する事は変わらないと思う。でも、彼女が被害者にも加害者にもなり得たかもしれないと言う環境は受け入れがたい。誰にだってその状況が起き得るかもしれないと思ったら怖い。今のこの劇団の姿勢を見て安心して応援する気持ちになれない。

110年と言う時は変わっている。

時代は違うんだ。

「うちだけは特別」じゃないんだ。

伝統、で許される時代じゃないんだ。

いち宙組ファンとして願う。早急な舞台再開よりも、この件に対し双方が納得する話し合いの結末を迎えて欲しい。それでもあの子は帰ってこないけれども、せめてご遺族が納得する形で終えて欲しい。

ファンとしては生徒の誰かが犠牲を払うかもしれない状況は避けて欲しい。庇えるなら庇いたいし守られるならそうしてあげて欲しい。きっと誰も根からの意地悪じゃないよ。自分達も伝統の中そうされて来た、個人的にハラスメントかも?と思っても「伝統」には抗えないだろう。よりよい舞台を作るために熱が入り過ぎたのかもしれない。それぞれ言い分もきっとあるだろう。でも、命を落とした人がいる。それは軽視できない。痛みを伴わなければ変われないと思うし、事なかれで済ませないで欲しい。

早急な舞台再開よりも根本的な解決に向かって欲しい。

こんな悲しい事が二度と起きないようにして欲しい。その為に掛かる時間ならばいくらでも待っている。「はよ舞台再開したいから」と言うスケベ心が見え見えの謝罪なんかしない方がいい。偉い人がスーツのおじさん達が退任したから何なんですかって話で、私は望むのは舞台に立つ人達と舞台に携わる人達全ての尊厳が守られる事。環境整備と心理的安全性だ。

この行く末を見届けるまで、宝塚大橋の向こうから眺めている。