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【読書感想文】他者を見ないと自分はわからない【動物のことば】

『動物たちは何をしゃべっているのか?』(山極寿一、鈴木俊貴)を読み終えたので感想を記しておく。

まず、この書籍は、ゆる言語学ラジオで取り上げられていたので知った。水野さんが編集に携わっている。鈴木先生も、ゲストとして登場している。山極先生は、評論の題材になっていた。本書のラストに「環世界」とい語が出てきて初めて気が付いた。確かにどこかで見たことのある名前だと思っていたが、LT1に取り上げられている文章の著者である。断片的にではあるが読んだことがあった。動物の視点に立とうとする立場の人だ。確かに、人間にとって良い環境が、その動物にとって良い環境とは限らない。

対談を文字にしたという体裁のため、非常に読みやすい。スラスラ読めた。少しばかり忙しかったので、時間をかけてしまったが、読み始めたらすぐに読み終えることのできるものだった。

山極先生はゴリラ、鈴木先生はシジュウカラという印象が強いが、当然ながら、それらに近い種についても詳しい。霊長類と鳥類という言語の書籍としては初めての世界を感じさせるものだった。言語の起源を想像するのは面白い。いつから、いまではなく、ここでもないものを伝えるようになったのか、いつ、どんなときに文字で伝えようとしたのか。コミュニケーションの手段の一つとしての言語は、こんなにも広い世界だと教えられた。

言語は文字。そんなふうに考えている部分が自分にはある。現代社会においては、文字の使いかた、文の作り方が大切なのは言うまでもない。しかし、本来、何を介してコミュニケーションをとっていたか。身振り手振り、表情、声のトーン、もうね、言葉にすると虚しくなるのだけど、「空気」。

想像力。知らないもの、見たことないもの、聞いたことのない音、様々なものを我々は想像できる。それを言葉にできる。細かく描写できる。自分を、自分の考えていることを表現できる。これを伝えたいという欲求がある。

いつか、「言葉にできないことがある、ということを言っていいのは、言葉を尽くしてから」という考え方を持つようになった。本書を読んで思うことは、コミュニケーションの形式というか様態は、もっと豊かなのだから、言葉にこだわらなくてもよいのだということ。そして、言葉を操る技術を鍛えてきて、本を読んで、文章を書いて生活しているからには、「文字ですべてを伝える努力を怠ってはいけない」ということ。

相手が必要。相手との共通理解があるから言語によるコミュニケーションが成り立つわけだ。誰に語るのかが大事だ。今ここでnoteで文章を書いているのは、いったい誰に読んでほしいのか。あまり考えずに書いているけれど、きっと読書感想文は、本の内容を忘れてしまった自分に対して書いているのだと思う。

そうだ。学校の夏休みの課題とかでよくある読書感想文は、その読み手を意識することが少ない。審査員に読ませるために書くのはつまらない。ほんとうにつまらない。だから、未来の自分に向けて、「おまえ、こんな面白い本を読んだんだよ。こんなおもしろいことを考えていたよ。思い出せなかったらもう一回読め。」と伝えるような感想文がいいと思う。

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