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幸せなおじぞう(第1話)

むかしあるところに、幸福なお地蔵さんがいました。

金や宝石の飾りはついていませんでしたが

村人たちによく洗ってもらっていたのでいつもきれいでした。

お地蔵さんのそばにはお菓子や果物やお酒などが

いつもお供えされていました。


ある晩、遠い東の果てのほうから、

みすぼらしい身なりをした、鋭い目つきの旅人が村にやってきました。

男はお地蔵さんのお供え物に目をつけると、

くんくん匂いをかいで、がつがつ食べてしまいました。


桃の種をぺっぺと吐いて、お酒をごくごく飲み干して

空になった瓶をぽーんと草むらに投げ捨てました。


そして男はうらめしそうに

山のふもとの家の明かりをじっとにらんでおりました。


お地蔵さんは男の心の中をのぞいて思いました。

「かわいそうに。この男はこの世でもたいそう苦しみ、

あの世でもたいそうたいそう苦しむことだよ。」


男がうつらうつらしはじめると、

お地蔵さんは男の夢の中に入っていきました。

(幸福なお地蔵 第一話 おわり)

次回予告

男がびっくりして眺める前で、お地蔵さんは大きく大きく大きくなって…


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