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「アブストラクトというボードゲームのジャンルはない」という仮説を立てて、いろいろ考えてみる。

この記事はアブストラクトゲーム Advent Calendar 2022の25日目の記事として書かれました。

はい、どうも。
珍ぬと申します。
3年半近く、noteでボードゲームやパズル関連の記事をかれこれ250本以上書いてしまいました。


改めて御礼申し上げます

全くもって、自分勝手に立ち上げてしまった「アブストラクトゲーム Advent Calendar 2022」ですが、約半分の12日分の記事を連ねることになりました。
何者かも怪しい唐変木の企みにもかかわらず、参加していただきました、

天空 薙さん(7日目)
Kanare_Abstractさん(9日目、20日目)
アニマルウィップさん(14日目)
lengthさん(17日目)

改めて御礼申し上げます。
本当にありがとうございます。

各々の記事を読んで、それぞれのアブストラクトゲーム観が興味深く、考えさせられました。
特にアニマルウィップさんの、アブストラクトゲームを柔らかく「らしさ(っぽさ)」でとらえて、文章化されたのは素晴らしかったです。

さて、カレンダーも最終日で何を書こうかといくつかネタ候補をあたためていましたが、参加者みなさまの刺激を受けまして、あたらためて「アブストラクトゲームとは何か」について、異なる角度から考えてみることにしました。
それが、

アブストラクトという
ボードゲームのジャンルはない

です。

いきなりのちゃぶ台返し


「アブストラクトゲーム」とは何か。
「アブストラクトゲーム」の定義とは。
これらに関連した問いは、おそらく「アブストラクトゲーム」という言葉がそれなりに定着したことで、産まれ興きたと思います。
それはいつ頃かは定かではありませんが、少なくとも1960年代以降ではないかと推測します。

おおよその根拠として、組合せゲーム理論(Combinatorial Game Theory)、とりわけ非不偏ゲーム(Partizan Games)の研究が発展したのがこの頃です。
アブストラクトゲームの定義のひとつで「二人零和有限確定完全情報ゲームとほぼ同義」がありますが、「零和」「有限確定」「完全情報」などの数学用語に則したものです。

ところで、1940年代にフォン・ノイマンさんとモルゲンシュテルンさんが提唱構築した「ゲーム理論」があります。
こちらは、運の要素や不確定要素がはいったゲームも含まれます。



組合せゲーム理論を産んだゲーム

組合せゲーム理論がなぜうまれたのか。
ちらりちらりと情報を集めてみると、どうやらあるゲームが大きく関わっているようにみえます。
それが、

チェス

です。
さらに絞ると、

コンピュータチェス

です。

Wikipediaなどの資料をおってみると、1840年頃に数学者バベッジさんが、機械などにゲームを行わせる思考ルーチン(思考エンジン、解析エンジン等の名称もある)があるだろうと予測していどみましたが、膨大な量になるのであきらめたそうです。
それから月日は流れ、1950年頃にある数学者が初めてチェスを指すプログラムを紙に書き上げました(まだコンピュータの性能は未熟でして、人間がプログラム(というか思考ルーチンやアルゴリズムになるのですが)を読んで従い、チェスの手を指します)。

天才ですね。
それもそのはずです。
誰かといえば、

アラン・チューリングさん

ですから。

全ての不偏ゲームは「ニム」である

組合せゲーム理論は、ゲーム理論が登場した1940年以前にもありました。
その際の研究対象になったのは、不偏ゲーム(Impartial Game)です。
13日目の記事でもふれています。

不偏ゲームの研究として代表となるゲームは「Nim(ニム)」になります。

詳しいことは端折りますが、ゲームの勝敗を解析する数値として「ニム値」があります。
しかも、全ての不偏ゲームの勝敗を解析する数値は、「ニム値」と同じ(ように扱えるの)です。
極端に言ってしまえば、

不偏ゲーム=ニム

です。
これって言いかえると、他の不偏ゲームの持っているさまざまな要素からニムの部分を抽き出された

不偏ゲームがニムに抽象化(アブストラクト)された

ということです。

なぜチェスはアブストラクトゲームなのか

チェスは、登場した当初はアブストラクトゲームのひとつではありません。
当時はアブストラクトゲームなんて概念もありませんし、あえてジャンル的なくくりで言えば、伝統的ゲーム(Traditional Games)などでしょう。

つまり、あるきっかけによってチェスはアブストラクトゲームになったのです。
そのきっかけは、チューリングが実際にチェスを指すプログラムを作り、非不偏ゲームの研究が発展して、チェスも組合せゲーム理論の研究対象となった、ことではないかと思います。

そして、極端にいえば不偏ゲーム=ニムと同じく、

全ての非不偏ゲームはチェスであり、
チェスに抽象化(アブストラクト)される

がひとつの到達点である……と、妄想かつ暴走してみます。


意味の転用

おそらく、アブストラクトゲームというジャンルとはなにか、という問いをゲーム(ボードゲーム)全体の部分という視点で考えてみることで「抽象」を「テーマ(特定の対象)がない」としていたと思われます。

しかし、学問(組合せゲーム理論)の研究対象という別の視点からみると、
「抽象」を「余計な部分を棄てて、本質(ルール・アルゴリズムなど)を抽き出す」となると思います。

大雑把に言えば「ほぼ同じ」でもあり、一方の対象はテーマで他方の対象はルールと異なっている、とも言えます。

加えて、「Abstract Strategy Game(抽象的戦略ゲーム)」についてもみてみます。
加藤香流(Kanare_Abstract)さんの記事を引用します。

【ウォーゲームとの関係 より引用】
歴史上最初のウォーゲームは1780年、ブラウンシュヴァイク公爵の宮廷員ヘルヴィヒによって作られたものです。これは下図のように1666マスで区切られたフィールドを使用する複雑なチェスのようなゲームで、運の要素はありませんでした。

Abstract Strategy Gameもまた、チェスから派生・発展していったようです。

Abstract Strategy Gameの先祖はチェス。
非不偏ゲームは抽象化(アブストラクト)したらチェスの仲間たち。

なんやかんやで合体したり意味を転用したりで、ヒョイとうまれたボードゲームのジャンルが

アブストラクトゲーム

かもなあ、と仮説立ててみるのです。

締め

ということで、長々と無駄話を書いてしまいました。
この仮説がまったくもって正しい、とは考えておりません。
せいぜい一理あれば儲けもの、と思っております。

チャレンジのつもりでアドベントカレンダーを立ち上げなければ、書くことができませんでした。
何度も書いてしまいますが、参加したみなさまの記事の力のおかげでございます。

「アブストラクトゲーム Advent Calendar 2022」はこれで締めとなります。
実は、書くつもりだった記事が1本あるのですが、のちほど後夜祭の気分でお届けしようかと思います。

来年も立ち上げたほうがいいですかね?

では。

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