見出し画像

□□□とボードゲーム(0.5)〜バウハウスとアブストラクトゲーム

前回の記事はこちら。

なかなか第1回になりませんが、もしかするとずっと行かないかも知れません。
今回も刻んでしまいましたが、ほぼ第1回にしてもいいかも。

Josef Hartwigさん

とにもかくにも〈抽象芸術〉についてあれこれ文献や検索をしつつ、ボードゲームを絡めつつ記事を書くという無謀に挑んでおります。
正直、書き始める当初これという核心もありませんでした。

で、ふと思いつきで調べると見つかりました。

Bauhaus Chess(バウハウスチェス)です。

と、そのまえにバウバウスについて。

【引用】
バウハウス(ドイツ語: Bauhaus)は、1919年、ヴァイマル共和政期ドイツのヴァイマルに設立された、工芸・写真・デザインなどを含む美術と建築に関する総合的な教育を行った学校。また、その流れを汲む合理主義的・機能主義的な芸術を指すこともある。無駄な装飾を廃して合理性を追求するモダニズムの源流となった教育機関であり、活動の結果として現代社会の「モダン」な製品デザインの基礎を作り上げた。

Wikipediaの項目には、運営に係わった人物がならんでいます。
有名どころでは、カンディンスキーやパウル・クレー、モンドリアンはおります。
しかし、このなかに含まれていない人物がバウハウス・チェスを作りました。
その名は、Josef Hartwig(ヨーゼフ・ハートヴィッヒ)さん。

Hartwigさんは、1921年から1925年まで、バウハウスの教師そして彫刻部門の長として努めていました。

Bauhaus Chess=世界初のアブストラクトゲーム?

Hartwigさんはバウハウスに在籍している1922年から1924年に、バウハウスチェスのデザインを構築していました。
つまり、2024年はバウハウスチェス100周年と言っても過言ではありません(まあ、去年も一昨年も100周年といってもよかったね)。

現在流通しているのはモデルXVIと呼ばれているものです。
16回モデルチェンジをしているのか、あるいは1セットで駒16個あるから、なのかは知りませんけど(調べろって話ですが)。

一方、その前のモデルはどうなっているかと。
Youtubeに、初期バウハウスチェス(モデルI)の映像があります。

モデルIをみると、まだ普段見かけるチェスピースの面影が残っていますし、それぞれの駒の下部には台座がついています。

一方モデルXVIは、(クィーンを除いて)立方体のみ(切断部分含む)で構成されています。
それぞれの駒の違いは、駒の動きからイメージされている、とみることもできます。


モデルIだと、6種類の駒は、それぞれの普段の駒のかたちを模しています。
例えば、ナイトは小さな立方体をつなぎ合わせて駒の動きを表現していますが、「馬の頭」の形状を模しています。

モデルXVIのナイトは、以下の図のように2×2×2のチェッカー立方体を組み合わせて、そこから2個除去した位置がナイトの動きの始点と終点をあらわしています。

左:チェッカー立方体
中:小さい立方体を除去
右:ナイトの動き

モデルXVIは、ルークをベースにして、
X:重ねる  (キング、クィーン)
V:削る   (ビショップ、ナイト)
I:拡縮する (ポーン)
と、残りの駒を表現しています(私案なのでVとIは入れ替わってもOK)。
モデルXVIの表記は、駒の変形をあらわしている、とみることもできます。

モデルXVIは、収納に優れている(基本、ルークと同じサイズ。ポーンはルークの$${\frac{1}{\sqrt{2}}}$$倍サイズ)ほかに、キングとクィーンをのぞいて、六面どの面を上に向けるかを無視できるポイントもあります。

現在、チェスはアブストラクトゲームと扱われつつも、妙な言い回しの条件がついています。

【引用】
二人零和有限確定完全情報ゲームという意味ではチェス、将棋もその代表例として挙げられるが、チェスや将棋では駒に種類がありそれぞれ異なる性能が与えられている(それほど抽象化されていない)ため、アブストラクトゲームに含まないと解説されることもある。

引用元:Wikipedia「アブストラクトゲーム」
引用文献:『ベストゲーム・カタログ 遊びの新世界をパトロール』松田道弘/社会思想社

上の引用をふまえると、バウハウスチェスモデルXVIは、抽象化されていない複数の駒をただ1つの駒(ルーク)を元にして表現しているので、抽象化しているといえるのではと考えます。
抽象化でないものを抽象化を達成したという意味では、バウハウスチェスは世界初のアブストラクトゲームである、と言うべきです。

アブストラクトゲームの反対のゲーム

前回の記事で、Wikipedia(スペイン語版)ではアブストラクトゲームの対義として「テーマゲーム」という項目を設けていることを書きました。
そして、多数の言語のWikipediaでもアブストラクトゲームの説明として「テーマがない」を取り上げています。

今回、バウハウスチェスのモデルIとモデルXVIを取り上げましたが、ふと気付きました。

アブストラクトの反対はテーマ
ではなくて、
アレゴリー(寓意)じゃない?

【引用】
アレゴリー
寓意、寓意像の意。語源はギリシア語の「allegoria」で、「別のものを語る」という意味である。抽象的な概念や思想を、具体的形象によって暗示する表現方法であり、その主要手段は擬人化、擬動物化である。

引用元:現代美術用語辞典 1.0
https://artscape.jp/dictionary/modern/1198044_1637.html

チェスは戦争をテーマにしているゲームではあるが、兵士や騎士などを寓意した駒で表現しています。
そう考えると、バウハウスチェスの場合、戦争というテーマがなくなった(あるいは反転した)というわけではありません。
依然テーマは残っているのです。

アブストラクトゲームの反対は何かと問われればアレゴリーゲームではないか、と仮説立ててみます。


締め

ということで、バウハウスチェスに触れつつ、アブストラクトゲームについてもちょっと考えてみました。

仮にバウハウスチェスを世界初のアブストラクトゲームだということにすると、アブストラクトゲームも100周年になります。
そんな都合良いわけがないですが。

ちゃんと美術の話題も突っ込まねばと思いますが、目下及び腰でございます。
なんとかせねばね。

では。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?