見出し画像

改めて「Game System」について書いてみる~ボードゲームをモノボケ・大喜利から創発する

この記事はBoard Game Design Advent Calendar 2020の10日目の記事として書かれました。


はい、どうも。
珍ぬと申します。
ここ1年半近く、noteでボードゲームやパズル関連の記事をかれこれ90本くらい書いています。
よろしくお願いします。

ADVENTERの前回、9日目はシラオサさんが、パーティ系ゲームのデザインについての考察でした。
遊び方の要素の1つに「競争(アゴン)」がありますが、パーティ系ゲームではどうするのか。面白いテーマですね。

では、本編はじめます。

Game Systemを言いかえると

実は、昨年(2019年)の「Board Game Design Advent」に、「Game System」で参加するつもりでした。
しかし、ほかの参加者が書くテーマを見て、参加を保留後、止めました。

その記事とは、「Board Game Design Advent Calendar 2019」の23日目、sounio120さんの、

「汎用コンポーネントが欲しい」です。

実のところ、Game Systemは汎用コンポーネントと言いかえても差し支えないです。
酷似したテーマなので、多少かぶるかも知れないなと思いまして、回避しました。

Game Systemって、誰が名付けたの?

さて、誰でしょうかね?

昨年11月のnoteで、Game Systemのついての記事を書きました。

この時点では、なぜGame Systemという名称となったのか、わかりませんでした。
ところが間もなくして、とある書籍を入手したことで、最有力候補を見つけてしまいました。
それが、

『ルールズ・オブ・プレイ ―― ゲームデザインの基礎』。

2004年にKatie SalenさんとEric Zimmermanさん共著の大書。
日本語に翻訳されたものは、2011年にソフトバンククリエイティブから出版されました(上下2冊)。
しばらく入手困難(いわゆる古書入手状態)でしたが、2019年末にニューゲームズオーダーから再販されました。
4分冊になっており、それぞれ、

ユニット1:核となる概念
ユニット2:ルール
ユニット3:遊び
ユニット4:文化

となっています。

少し話がそれますが、ユニット1収録の「9.魔法円」に出てくる用語「マジック・サークル」はボードゲームとあわせて検索すると、このことに書かれたブログなどが結構引っかかります。

Game Systemですが、ユニット4収録の「31.開かれた文化のゲーム」の中盤(35〜37ページ)に、そのまま「■ゲームシステム」の見出しで書かれていました。

その中で、かなりの文量を占めた実例が『アイスハウスセット』。
後の「Looney Pyramids」です。


「ゲームメカニクス」との双対性

2019年に出版された、ボードゲーム関連のある洋書が話題となりました。
Geoffrey EngelsteinさんとIsaac Shalevさんの共著、
『Building Blocks of Tabletop Game Design』

翌年、日本語に翻訳されたのが『ゲームメカニクス大全』です。

メカニクスとはなにか。

コンポーネントとプレイヤーの振る舞い方を
あらわしたルール

自分なりの解釈ですが、大雑把にこう考えています。
『ゲームメカニクス大全』の構成は、1つのメカニクスに対して、その説明と、それを用いたボードゲームの実例(それなりの数)をあげています。

Game Systemは、1つのコンポーネント構成を用いて、数多くのゲームのルールが創発されました。

Game Systemの中で1番認知度の高い実例は、Traditional Card Game(伝統的カードゲーム、つまり、トランプ)です。

そういった意味で『ゲームメカニクス大全』と双対的に並べられる書籍の代表格としては『トランプゲーム大全』になります。

双対性については、この記事の2日前に書いた「改めて、ボードゲーム論としての『遊字論』で、GameSystemを考えてみる。」も参考にしてみてください。
ただし、概念的なことを書いているので少々とっつきにくいです。


Game Systemの遊び方を実演してみた

じゃあ実際、Game Systemでの創発ってどんなことをするのか?

説明するだけだと長くなるし退屈しそうなので、同じ長くなるなら実演したほうがいいかな、と思いました。

なので、1年かけて用意してみました。
題材は、日本ではほとんど

倒すことしかしないDomino(ドミノ)

です。
現在の標準的なドミノ(28枚1セット)になったのは、18世紀頃なので、200年以上経過しており、遊び方は200種類とも300種類とも言われています。

結構こすり倒しているわけですが、まだこすれるのか、その可能性を追ってみた記事をマガジンにまとめました。

【変更:追記】
12月12日に、1年間書き続けた「『ドミノ』の可能性を考えて、1年間書いてみる。」の最終話をUPしました。
ここで、今まで書いてきた内容を簡単に振り返ってみるつもりですので、こちらも興味があればお読みください。


やってみると、モノボケ大喜利(問題も考えている)している気分でした。


Game Systemと「Digital Ludeme Project」

以前のnoteで、こんな記事を書きました。

おそらく、世界初のAIが考案したボードゲーム『Yavalath』と、
遊具だけ発掘された、ルール不明の古代のボードゲームのルールがどのように遊ばれていたかをAIで再構築する「Digital Ludeme Project」。

前者のAIは「LUDI」、後者のAIは「LUDII」と名付けられています。

この2つのゲームの創発の仕方は、双対的にみることができます。

LUDIは、ゲームを創作する前準備として、どんなゲームが面白そうなのか、数多くの実際のゲームのデータを用意して、好みの判断となる指標も数多く用意して、計算してみました。
するとLUDIの返答は、

おれ、連珠がむっちゃ好きやねん。

ということで、「コマを並べる(N in Row)」ゲームメカニズムから、『Yavalath』『Pentalath』など20前後のゲームを創発しました。


LUDIIは、LUDI製作の経験を生かした二代目AIです。
数多くの実際のゲームのデータを用意して、発掘されたコンポーネントから、ゲームメカニズムなどのルールをあてはめつつ、遊び方を探っていきます。
このコンポーネントをもとにして創発する仕方は、Game System的です。

なので、LUDIとLUDIIの功績は、双対的だなあ、と感じました。

ちなみに、LUDIIは、ダウンロードしてPC上で動かすことができます。
実際にLUDIIで遊ぶことのできるゲームルールのスクリプト(拡張子は.lud)は、800近くまで用意されています。
その中には、『大局将棋』(駒総数804枚!)もあります。
正直、スクリプトもとんでもない長さで、ぶっ飛びました。


Game Systemは日本に定着していない?

このnoteの最初の方で書きましたが、去年のADVENTERでは「汎用コンポーネントが欲しい」と心の叫びがありました(そうさせてください)。

実際のところ、海外では結構な数のGame System(≒汎用コンポーネント)が出版されています。

ただ、日本であまり広まらない最大の要因は、言語の壁でしょう。

いくつかのメジャーなGame Systemは、コニュニティサイトが形成されていて、創発されたゲームルールもデータベース化しています。

ただ、日本語で書かれていないので、情報帯域が狭く(ナローバンド)広まりにくいのです。

例えば、「Looney Pyramids」には、ゲームルールを集約したコミュニティサイト「IcehouseGames.org」があります。
このサイトでは、最初に作られたゲームルール『Icehouse』(1989年)から各年ごとの創発されたルール数の記録を残しています。
その総数、518。
ここ数年間は創発数が落ちていますが、まだまだ作られています。

終わりに〜青森産のGame System

色々と長くなってしまいました。
書ききれないこともありますが、ひとまず、今回の記事を締めます。

最後に。

実は、7日後に別のADVENTERに参加します。
ボドゲ紹介02 Advent Calendar 2020」の17日目になります。
そこで、今回の記事に関連して国産のGame Systemのゲームを紹介します。
そのボードゲームとは、

アッテラ

『あおもりアッテラ!』

1年前に「青森ドブル」とも揶揄された「あおもり絵合わせカードゲーム『チーキィ』」が、臥薪嘗胆でついに2020年10月に発売されました。

このゲームについて、書きます。
よろしくお願いします。

11日目は、梟老堂さんです。
現在構想中のようですが、どんな話題を書かれるのか楽しみです。

では。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?