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一次元盤面チェス年代記(1D Board Chess Chronicles)……は言いすぎですが、書いてみる。

この記事はアブストラクトゲーム Advent Calendar 2022の2日目の記事として書かれました。

はい、どうも。
珍ぬと申します。
3年半近く、noteでボードゲームやパズル関連の記事をかれこれ250本近く書いています。
1日目に引き続き、よろしくお願いします。

前日書いた記事はこちらです。

今回の記事は(1次元だけに)1日目にアップする予定でしたが、上の記事は、より1日目の内容としてふさわしいと思い、差し替えた次第です。

Kanare_Abstractさんの記事より


「変則チェス」について書いた、加藤香流(Kanare_Abstract)さんのnoteの記事があります。

この記事で採り上げられているひとつが『リニアチェス』です。
通常のチェスは、正方形のマスが縦横に並ぶ二次元(平面)の盤面で遊びます。
二次元なので、コマは上下左右に動きます。
しかし『リニアチェス』は、一次元の盤面で遊びますので、コマは左右(あるいは上下)の2方向にしか動きません。

『リニアチェス』は1961年にルールが考案されましたが、その後もいくつかの「一次元盤面チェス」が考案されました。

それらを年表にしてみると、

(1)1961年
Vernon Rylands Parton(ヴァーノン・ライランズ・パートン)さんが考案した『Linear Chess(リニアチェス)』

(2)1977年
Dam Glimne(ダム・グリムネ)さんが考案した「一次元盤面チェス」

(3)1980年
Martin Gardner(マーティン・ガードナー)さんが考案した「一次元盤面チェス」

(4)年代不明
Sid Sackson(シド・サクソン)さんが考案した「一次元盤面チェス」
※(3)の拡張版として考案したらしい。

(5)2018年
Doctor Popular(ドクター・ポピュラー)さんが考案した『One-dimensional Chess(一次元盤面チェス)』

参考資料:
・「The Chess Variants」より、One-dimensional Chess Variants
・Boardgamegeekの「One-dimensional Chess」内のForumの1つ、A Short History 1D Chess Variants

のようです。

Linear Chessのコマとその他のゲームとの違い


上記のゲームのうち(1)〜(4)は「The Chess Variants」、(5)はDoctor Popularさんのサイトをみると、盤面とコマの初期配置と動かし方が確認できます。

互いのゲームを比較した際、(1)のみ他のゲームと様相が異なります。
いっしょくたに見てしまうと、混乱します。

(1)つまり『Liniar Chess(リニアチェス)』で、使用するコマは5種類。
King(キング)、Jumper(ジャンパー)、Runner(ランナー)、Hopper(ホッパー)、Stepper(ステッパー)です。
下の図は、コマとゲーム開始時の盤面配置です。

画像引用:
https://www.chessvariants.com/shape.dir/onedim.html

『リニアチェス』の全てのコマは、前進のみで後ろへの移動はありません。
それぞれの、コマの動き方をみてみます。

ステッパーは、1マス前に動きます。
これは、通常のチェスのポーンの動きと画像に即しています。

ホッパーは、2マス前に動きます。
1つ前に駒があっても飛び越えて動かせます。
これは、通常のビショップ(同じ色のマスに移動する点で)の動きに近いです。
画像のコマはバッタのような昆虫を模していますが、この点はあとで詳しく述べます。

ランナーは、いくつでも前進できます。
他のコマを飛び越えることはできません。
通常のルークの動きに(コマの画像も)即しています。

1つ飛ばして、キング。
動かし方については特に何も説明はないそうです(こちらで、適当に決めるしかありません)。
動かない、もしくはステッパーと同様に1つ前に動く、としてあつかっているようです。

さて、残ったジャンパーです。
このコマの動きですが、通常のチェスにはないコマ(そのようなコマを妖精コマ(フェアリーピース)と呼んだりします)であるGlasshopper(グラスホッパー)に近いです。


動き方は「動く方向の先にあるコマを飛び越えた1つ先のマスに進む」です(上のリンクのブログ記事を参照してください)。

ところで、グラスホッパーは何かというとバッタです。
そうなのです。
すでに紹介した『リニアチェス』のコマの画像は、ナイトではなくジャンパーのほうがしっくりくるのです。

さらに付け加えると、他の「一次元盤面チェス」でのナイトの動きは、2マス、ないしは3マス先のマスに移動します。
どちらかといえば、『リニアチェス』のホッパーに近い動きです。

言いたいことをまとめると、

「The Chess Variants」での『リニアチェス』のコマは、
ホッパーとジャンパーを交換したほうが
他の「一次元盤面チェス」と親和性がある

のです。
交換すると、以下の図のようになります。

赤の矢印、▲をつけた箇所が変更になります。


おそらくパートンさんはその辺の事情を気にせず考えていた、と思われます(なにせ、一次元盤面チェスの前例がありませんから)。


最新版の『One-dimensional Chess』

その他の「一次元盤面チェス」、(2)〜(5)のゲーム開始時のコマの配置は、下の図になります。

(2):Dam Glimne(ダム・グリムネ)さん
(3):Martin Gardner(マーティン・ガードナー)さん
(4):Sid Sackson(シド・サクソン)さん
(5):Doctor Popular(ドクター・ポピュラー)さん

となります。
コマの動きはゲームによって多少の違いはありますが、おおよそ、
ポーン:1つ前へ移動
ナイト:2または3つ前(あるいは後ろ)へ移動
ビショップ:同じ色のマスを前(あるいは後ろ)へ移動(違う色のマスは飛び越える)
ルーク:何マスでも前(あるいは後ろ)へ移動
クィーン:ビショップ+ルーク
キング:1マス前(あるいは後ろ)へ移動

です。

最新版の『One-dimensional Chess(一次元盤面チェス)』は(5)ですが、(2)の配置とかなり酷似しています(ビショップが1つと2つで異なる)。
「あ、ヤベ。似てるやん」と、Popularさん、焦ったかも知れません。

ちなみに、(2)を考案したGlimneさんが何者か調べてみましたが、わかりません。
不明(判明したら追記するかも)です。

締め

ざっくりと、「一次元盤面チェス」を紹介しました。
(4)のSacksonさんは(3)のGardnerさんを踏まえていますが、あとはそれぞれが独自に考えてポコポコあらわれたかな、と思います。

この記事を書いて、ほかの一次元盤面のアブストラクトゲームが気になってきました。
また機会があれば、それらを追ってみようかと思います。

では。

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