そもそもアブストラクトゲームの「アブストラクト(abstract)」って何?について書いてみる。
はい、どうも。
珍ぬと申します。
3年半近く、noteでボードゲームやパズル関連の記事をかれこれ250本近く書いています。
今回、初めてAdventarのカレンダーをたててみました。
よろしくお願いします。
この記事は書かなくてもよい
いきなりちゃぶ台返しをします。
なにせ、数ヶ月前に加藤香流(Kanare_Abstract)さんが「アブストラクトゲームはなぜそう呼ばれているのか」という秀逸な記事(さらに関連記事2本)を書いているのです。
なので今更何を書くのか、という話です。
重箱をつつくような話題となりますので、補遺の補遺程度に扱っていただけるとさいわいです。
アブストラクトゲームと呼ばないとしたら?
本記事のタイトルの話題に入る前に、ちょっと寄り道をします。
アブストラクトゲームをアブストラクトゲーム以外の呼び方はいくつかあります。
加藤香流さんの記事では、
◆アブストラクト・ストラテジーゲーム(Abstract Strategy Games)
◆コンビナトリアルゲーム(Combinatorial Games)
の2つがあげられています。
アブストラクト・ストラテジーゲーム
「アブストラクト・ストラテジーゲーム」は、Boardgamegeekでもカテゴリとして使用している用語です。
今年逝去した松田道弘さんの著書『世界のゲーム事典』でも、数多くのアブストラクトゲームを紹介しています。
ただ、その際の呼び方は「戦略的ゲーム」です。
「アブストラクト・ストラテジーゲーム」は、ナカグロにあわせて「アブストラクト(抽象的)」な「ストラテジー(戦略)ゲーム」と読みとれます。
その一方、ナカグロの位置を変えることによって、「アブストラクトストラテジー・ゲーム」――「ストラテジー(戦略)をアブストラクト(抽象的)」した「ゲーム」とすると、松田さんのニュアンスに近くなります。
コンビナトリアルゲーム
もう1つの「コンビナトリアルゲーム」。
Combinatorial Gamesを翻訳すると「組合せゲーム」です。
数学の分野の1つに「組合せゲーム理論(Combinatorial Games Theory)」があります。
「コンビナトリアルゲーム」は、この理論の名称から採り上げた言葉です。
上のリンクは英語版で、日本語版Wikipediaではそれに相当するページがありません(ただし、カテゴリー:組合せ論の下位カテゴリーとして、作成されています)。
日本では、2015年に「日本組合せゲーム理論研究集会(Japan Combinatorial Game Theory Workshop (略してJCGTW))」があります。
組合せゲーム理論は20世紀はじめに研究がはじまりました。
そして、1960年代にElwyn R. Berlekamp(エルウィン・ベルカンプ)さん、John H. Conway(ジョン・コンウェイ)さん、Richard K. Guy(リチャード・ガイ)さんらの共同研究です。
1982年に、彼らの研究結果を一般向けにまとめた著書が『Winning Ways for Your Mathematical Plays』(日本語訳されたのが『数学ゲーム必勝法』(全4巻))です。
https://www.kyoritsu-pub.co.jp/book/b10003200.html
いろいろと細かいこと(難解なこと)がなんぼでも書けそうですが、今回はここで割愛します。
断っておきたいのは、
「コンビナトリアルゲーム」
イコール
「アブストラクトゲーム」
というわけではありません。
「アブストラクトゲーム」の多くが、組合せゲーム理論で扱える対象となりえるので、完全一致ではなく大雑把にあわせている、くらいのニュアンスです。
アブストラクトの語源・抽象の語源
加藤香流さんの記事「アブストラクトゲームはなぜそう呼ばれているのか」から、一部引用します。
では、辞書的な定義ということで「abstract(アブストラクト)」の語源を調べてみます。
珍ぬ的には、おそらく接頭語が「ab-」で「ab-stract」と分離できると思っていました。
思っきり違ってました。
「abs-」と「tract」に分けるのでした。
※「tract」由来の単語に「牽引機、トラクター(tractor)」などがあります。
語源「何かから抜き出したこと」ですが、
抽象の「抽」。
これって、訓読みすると
「抽く(ひく)」だよね。
ひきだしは「引き出し」とも書きますが「抽き出し」もあります。
このことから考えると、アブストラクトゲームは
テーマがないゲーム
というよりも、
テーマを抽き抜いたゲーム
とみるとよいかもしれません。
テーマに依存しない、テーマという衣服を脱いだすっぽんぽんゲームです。
さらにいえば、すっぽんぽんなら「かくしごと」がない(できない)の運の要素を抽き抜いた=完全情報も連想できます。
締め
ということで、「アブストラクト」って何?をおってみました。
すっぽんぽんを言い換えると、骨だけの「スケルトン」です。
アブストラクトゲームは、骨から旨味を煮出した「出汁ゲーム」です。
あっさりなのかこってりなのかは、いろいろです。
これからもアブストラクトゲームを楽しみましょう。
アブストラクトゲーム Advent Calendar 2022の2日目もよろしくおねがいします。
では。
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