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キャプテン長谷部誠選手を世界標準の経営理論で分析する

入山章栄先生の『世界標準の経営理論』第3部は ミクロ心理学ディシプリンの経営理論をサッカーと絡めて読み解きたいです。

この本については、過去に一度知財と絡めて書いたのですが、納得行く出来ではなかったので今回はサッカーと絡めて書いていきます。

対比するのは長谷部誠選手の「心を整える」です。この本の印税は東日本大震災へのチャリティーに全額寄付しています。

第18章 リーダーシップの理論

 半世紀を超える研究が行き着いた「リーダーシップの境地」について書いてありますが、その生まれた時代は置いておいてサッカーのキャプテンとの対比で見ていきます。

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個性

リーダーシップは当初、個性に注目していました。

カリスマのイメージですね。産まれながらのキャプテンシー、日本だと元日本代表のガンバ大阪、宮本恒靖監督や長谷部誠選手が思い浮かびます。

この前のワールドカップ⚽杯で好成績だったので岡田監督、南アの2010年からキャプテンだった長谷部誠選手を例に挙げて対比します。

岡田監督は長谷部誠選手について、その個性を

·誰とでも分け隔てなく話せる

·独特の明るさがある

·声を出すことでも、プレーでもチームを前に進めることができる。

としています。試合中、長谷部誠選手のキャプテンシー溢れる拍手しながらの鼓舞は良く見ました。

行動

キャプテンマークをつけるからキャプテン、ルールや役割という設計された人為的なモノとしてみる考え方です。

長谷部誠選手は自身のキャプテンとしての役割を、

なるべく全体を客観的に見まわして、チームに足りないことを探し、チームを整える

としていたそうです。

理論上リーダーの行動に注目するのは

・ルールベース

リーダーのパフォーマンスとの強い相関関係

・人間関係ベース

フォロワーの満足度やモチベーションとの強い相関関係

がそれぞれ相関関係が有るそうです。言われて見たら当たり前では有りますね。つまり、

ルールで頭を押さえつけられて結果が出なかったら、そっぽ向かれます。

また、人間関係重視とか言われながら、部下にとって居心地良くないとリーダーが手前勝手に何を言ってるの!という気持ちになります。

交代時にサッカーではキャプテンマークをフィールドに残る選手に託します。まさに役割分担のひとつだと分かります。

条件

コンティンジェンシー理論という、リーダーシップはその時の状況·条件によるという見も蓋もない理論が有ります。

岡田監督はワールドカップ南アフリカ大会の直前に長谷部誠選手にゲームキャプテンを替え、他にも調子の上がらない?ゴールキーパーなどレギュラーを入れ替え、戦い方も従来築きあげてきたスタイルからの大幅な方向転換を決断しました。

そんな当時の日本代表には川口能活さんという、みんなが頼りにするチームキャプテンがいました。

そこで長谷部誠選手は

自分がゲームキャプテンになったことでチームの和が乱れるようなことは絶対に防がなきゃいけないと思ったし、だからチーム内の人間関係には細心の注意を払った。

と有ります。若手が抜擢されたらこうなります。決勝トーナメント進出という結果がついてきたから流石です。

しかし、二回のワールドカップを経てロシア大会の時の長谷部誠選手のリーダーシップはその頃の初々しさとは、また違いが出るのは当然のことですよね。

このように状況によってキャプテンシー、求められるリーダーシップの質が替わるのも分かります。

えこひいき

リーダーメンバーエクスチェンジという質の高い交換関係を築く理論です。

監督とキャプテンの関係はまさに期待する仕事を与え、信頼と忠誠心を持ってそれに答える関係です。えこひいきにも周りの選手や端には見えるかもしれません。

ワールドカップでゲームキャプテンとして、より監督の近くで、コミュニケーションを図らせていただいたことにより、以前よりも人の上に立つ人間の気持ちを想像する習慣がついたと思う。

理論上は全員とえこひいきを結ぶことも可能であるとの事だそうです。

このえこひいきをさらに進化させたのが次の2つです。ただし、オーソドックスな長谷部誠選手との対比は少しずれた例になったので、新たなリーダーを現役監督から投入します。

その名もガッツゥーゾ、現ナポリ監督、元ミランの“闘犬”ジェンナーロ・ガットゥーゾです。セリエAでガチガチと身体を寄せてハードタックルをする中盤の壊し屋のイメージしかなかったのですが、今では名将の仲間入り間近です。

TSL 

トランザクショナルリーダーシップは報酬体系に注目して、心理的な取引や交換関係を重視しますって理論です。

ガットゥーゾ選手はシオン(スイス)時代にプレイング・マネージャーを務めたこともあるそうですから歳を重ねるにつれて角もとれてリーダーになったのですね。ミラン時代の雰囲気からはどちらかというと問題児の雰囲気がアリアリです。

また赤字を抱えたギリシャのクレタの監督時代には選手たちへの給料は未払いだったため、選手の給料をポケットマネーで肩代わりしたこともあるそうです。まさに選手に対しての物理的な交換関係です。

その後もピサやミランでもガタガタのチームを建て直しを行います。選手のモチベーションを上げるのが得意で、新監督になったときに不遇の選手と心を通じて、現有戦力の中でも活躍させます。

監督の戦術は、ミラン特有の固い組織守備と縦へのショートカウンターを特色に勝利を掴みます。個人的にGIANT KILLINGする判官贔屓なので大好きです。


ちなみに長谷部誠選手のキャプテンシーはグループ内の伝達役です。

カメルーン戦での肩を組んだ国歌斉唱を伝達をコーディネートしたことで、あとは何もしなくても上手く回ったと有ります。

彼はザッケローニ監督と共に記者会見場にいき、そこで

「彼にキャプテンマークを渡したのは精神面、技術面でキャプテンの重責を担うのに最もふさわしいと考えているからだ」

と、おまえに任せたぞというメッセージを貰い意気に感じたそうで、言葉が心理的な交換関係になった例ですね。監督のリーダーシップですが参考になります。


TFL 

トランスフォーメーショナルリーダーシップはビジョンで啓蒙する理論です。


ガットゥーゾ監督の試合後のインタビュー記事では

「今後も選手たちの魂に訴えていきたい。私はこうやってチームを鍛えていく方法しか知らない」

というまさに泥臭く体を張って、ミラン時代には闘犬と恐れられた魂のリーダーシップです。


長谷部誠選手は読書家として知られ松下幸之助さんの「日本のために」という言葉がワールドカップなどの時に心に響いたそうです。

これはスポーツなら間違い無しにまとまりますね。ナショナリズムのひとつですから。

実際、みんなで日本サッカーを強くするという想いで、当たり前ですが動いているそうです。

同じ目的を持っている仲間がいて、その仲間とともに前に進もうとしているとき、自分でも驚くような力が体の奥底からわきあがってくること

は次のシェアードリーダーシップにも関わっています。その大きな波の中に自分がいる幸せを感じているそうですから。

全員リーダー

全員がリーダーとして主体的に行動した方が垂直型の組織よりパフォーマンスが良いそうです。

私が習った時は指揮者のいないオルフェウス 室内管弦楽団が持て囃されていました。指揮者が居ないので各人がリーダーシップをとって盛り上げます。

長谷部誠選手の本の中でも、

選手は互いに対等な関係だ

特に日本代表までくる選手なら

アジアカップなら絶対に優勝するという目標を全員で共有する

チームメイトはライバルでもあるけど、同じ目標に向かう仲間でもある。キャラクターを知り、絆を深めることで、それがピッチでも活きる瞬間があるだろう。

と全員で勝ち取るイメージもありそうです。


まとめ

リーダーは結局、元々持つ資質の部分が大きいんじゃないかな

長谷部誠選手は中学のサッカーチームでもキャプテン。

産まれながらのキャプテン資質、

自分には無いなあ。

これだけリーダーシップ、キャプテンシーがあっても、ちゃんと

クラブでも代表でも、新しい監督と出会うたびによく観察し、言葉にしない行間を読むようにしている。表面的な出来事や印象だけで分かることは限られている。

とフォロワーの動きもしています。リーダーシップの理論を再掲しておきます。

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さて、リーダーシップの五個の理論を当て嵌めましたけど、製造業のリーダーシップも、

仕事が出来る人間がリーダーの地位に付けられ、その個性にあわせて運営します。

TFL のようにビショナリーに目標に向けて動く人もいれば、

リーダー自らアイデアを設計図にまで具体化し、手足のように具現化する人もいます。

ビジョンは啓蒙する理論に該当するのでしょうがミクロ心理学の理論はもやっとしてしまいます。


部下との関係も、

箸の上げ下げから指摘するマイクロマネジメントする人もいれば、

善きに計らえとお殿様もいます。

この場合、サブリーダーぐらいの人がそれぞれまとめます。この人は明らかにえこひいきしますが、まあ当たり前ですよね。

居ないと動かないのですから。

TSL 飴と鞭でも、潤沢な予算をブン取ってきたり、部下を昇進させたりしてリーダーシップの燃料にします。

さて、長谷部誠選手はこの後、フランクフルトのフロントサイドへ移る事が決まっているそうです。

ブンデスリーガのフロントの地位にサッカー後進国から選ばれる。半端ねぇ!ってこれは別のブンデスリーガでした。





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