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米中 顔認識とセキュリティ

監視社会の中国と言われますが、

個人情報を抜くことは、アメリカも色々やってました。スノーデン事件でシスコのルーターや、ヤフーの情報が光海底ケーブルから抜かれるなどなかなかやります、えげつなさも敗けてません。

そこで今回は監視カメラにAI載せた1984の世界を旅行していきます。国別の監視カメラ数のランキングサイトを見つけました。

アメリカのテクノロジー企業

マイクロソフトのチーフコンプライアンスオフィサーが書いた本によると、(以下の引用プラグは全てこの本です。グローバル法務の臨場感が有ります。)

「TOOLs and WEAPONs――テクノロジーの暴走を止めるのは誰か 」
ブラッド・スミス (著)ASIN : B08GR25TPH
出版社 : プレジデント社; 第1版 (2020/8/28)

この本の中でマイクロソフトは2018年アメリカ移民·関税執行局(ICE )に顔認証技術を導入出来るような道を作ったそうです。ただし

正確には契約は顔認証と全く関係なく、国境での移民親子引き離し措置にも一切関わっていなかったp299

と無関係だそうなのですが、発表内容を削除するなどしたため叩かれたそうです。他にも税関·国境警備局との契約でセールスフォース

アメリカの軍向けAI開発プロジェクトでグーグル、軍との契約を撤回した。

顔認証サービス「recognition」にアマゾンの従業員が懸念した。

などGAFA各社も認識技術の国への導入で、叩かれたり、もめています。

最後にまた、アメリカの話と絡めてまとめることとし、中国の実状を分析していきます。

アメリカから見た中国のテクノロジー企業

マイクロソフトからみた中国及び中国テクノロジー企業は

細部までしっかり精査すればわかるのだか、こうしたサービス(注釈:アリババのECサイト、テンセントのウィチャット、バイデゥの検索など)は中国人の好みに合わせた工夫があり、アメリカ系製品にはこのような配慮が欠けている。…

と文化の違いにマッチ出来ない事を市場にアメリカ企業が参入出来ない理由としています。その続きを読むと

中国には優秀な人々がそこらじゅうにいて、中国系企業は、イノベーション志向と勤労精神を背景に、新機軸を打ち出し、精力的に取り組んで大きな成功を収めている。…AIによる先進技術を驚異的なペースで取り入れているのである。この市場展開の速さが中国産テクノロジーの強力な原動力になっている。こうした環境を背景に、中国のテクノロジー業界各社はアメリカのテクノロジー企業がいまだ経験したことのないような熾烈な競争を繰り広げている。p352

リップサービスもあるとは思いますが、これがマイクロソフトからみた中国です。もちろんそのあとに中国市場の参入障壁について言及し、「テクノロジー市場の参入障壁に関しては、中国は紛れもなく早くからグローバルリーダーだった」とチクリとしています。

それでは中国及び中国テクノロジー企業を概観します。

中国のAI監視

中国では新世代のAI開発計画が2017年7月に発表されています。目標は「中国は、2030年までに世界をリードする」だったのですが、強国の看板と共に脇に置いてアメリカと対峙しています。

天網恢恢疎にして漏らさずの「天網」が中国内を張り巡らされていますが、この画像認識の一旦も担っています。

「天網」にはセンスタイムの人工知能(AI)による顔認証技術など、中国が誇る企業の技術が結集しています。中国メディアによると、「毎秒30億回の照合が可能」「一対一での識別精度は99.8%」と驚異的なデータが載っていた。という記事を見ました。

犯罪の少ない安心した生活のため監視カメラを使った国家主導の信用システムを構築し治安維持が行われるようです。

それではマイクロソフトのいう熾烈な競争を勝ち抜いた中国企業を概観します。ここでは顔認識に特化してご紹介。

監視カメラ大手の中国の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)と浙江大華技術(ダーファ・テクノロジー)が有名です。

江大華技術股有限公司(ジャージャン・ダーファ・テクノロジー: Zhejiang Dahua Technology Co.,Ltd)

本社:浙江省杭州市濱江区濱安路1187号

本業:監視カメラ

創立:2001年、上場は2008年


と、もう一社

杭州海康威視数字技術(海康威视:ハイクビジョン:HIKVISION)

本社:中華人民共和国浙江省杭州市

中国政府直轄の中国電子技科集団(zh:中国电子科技集团、通称:CETC)の孫会社

公安部などに監視システムなどを納入している中国電子科技集団が全体として42%の株式を保有

本業:防犯カメラ及びレコーダー企業

創立:2001年

会長である陳宗年は中国共産党員で、中国の議会である全国人民代表大会にも参加していると報じられています。

監視カメラ及びレコーダーにおける2016年時点の売上金額ベースで21.6% 2017年時点の世界シェアは38%と約四割。

調べると 2008年の北京オリンピックや2010年の上海万博、さらには2016年のリオオリンピックで使われたんですね。これが海外への足掛かりだったはず。


監視カメラに写したら次は認識です。

顔認識で有名なMegvii Technology(以下、メグビー)について以前の記事から抜粋

•設立:2011年

当時、清華大学の学生だった印奇(Yin Qi)CEOと唐文斌(タン・ウェンビン:Wenbin Tang)CTOが2011年に学校主催のビジネスプランコンテストのため開発。顔認証技術を取り入れた同ゲームはコンテストで特等賞を受賞。中国のアップルストアのゲームのダウンロード数においてランキング5位に名を連ねたらしい。多分ヤン・ムーさんも居たとは思うのですが記事を漁って不明。

•事業内容:AI(人工知能)顔認証の開発 Face++

•創業者: 清華大学のコンピュータサイエンス学部出身の3名

YIN Qi (印奇) 31才 CEO  清華大学→コロンビア大学コンピュータ科学修士

TANG Wenbin(タン・ウェンビン:唐文斌)30才 CTO インターンとしてマイクロソフトリサーチ、グーグル中国で経験

YANG Mu (ヤン・ムー:楊沐)32才 シニアVP 清華大学修士、国際情報オリンピック金メダル

【City IoT】:スマートカメラを2015年~

Brain++ Deep Learning Frameworkを用いており、

「天網」と呼ばれる画像データが蓄積されたネットワークにメグビーの顔認証システムが採用されているそうです。

 国と共同で犯罪者を逮捕出来ていて2017年に5000人以上と説明していました。

中国においてクラウドベースの顔認識システムで売り上げベースで60%超えでありAIではトップ企業で100都市で使われている。

ここまで2019時点の情報。三本柱のひとつが「天網」に採用されています。


画像認証テクノロジーの分野でMegvii (Face++旷视科技) と争う2代巨頭だそうです。

センスタイム(Sense Time)(商湯科技)

•商号:Sense Time(センスタイム:商湯科技開発有限公司)

•設立:2014年

•事業内容:AI(人工知能)顔認証プラットフォームの開発

•トップ:CEO•徐立(シュー・リー)1981年生まれ

創業者:湯暁鷗(tang xiaoou)教授、協同ファウンダー徐冰(Xu Bing)

•所在地:香港(本社)、北京、深圳、成都、上海、杭州、シンガポール、京都(2016年~)

香港中文大学のマルチメディア研究室からスピンアウトした学術企業です。

徐立CEOは後掲の記事の中で

「画像認識技術のパイオニアとして知られた京都のオムロンにもインターンとして参加した」と日本に縁もあります。

FaceNextはアプリ「SNOW」でも採用されています。

カメラと顔認識で中国企業を各々二社見ていただいたのですが、数年前の古新聞で恐縮ですが監視カメラ の出荷台数は日経新聞によると 9316万台だそうです。

上位5社のシェアで半分を占めるらしいのですが、

ハイクビジョン (中国) が 30%

ダーファ・テクノロジー (中国) が10%

程度で、残り10%を アクシスコミュニケーションズ (スウェーデン)、ユニビュー (中国) 、 ティアンディテクノロジーズ (中国) で奪い合っているそうです。

出典: テクノ・システム・リサーチ

認識も中国政府に後押しされてやってました。中国の監視は下記の2つのプロジェクトが担っているそうです。

ひとつ目の「雪亮工程」は地方向けで2016年頃から導入されています。

「雪のように白いプロジェクト」という意味ですが、つまり犯罪を事前に予防することでクリーンな社会を実現しようとする計画です。顔認証システムや車のナンバープレート照合システムを活用して違法行為を減らそうという社会科学の実験的プロジェクトなのですが、例えば、赤信号の無視やスピード違反などの法律違反を取り締まり、犯罪を抑止するというSFのような仕組みが既に構築されつつあります。高度な顔認識このシステムを政府や民間企業に提供するメグビー・テクノロジー社、自動運転用の画像認識システムを開発するセンスタイム・グループなどとともにこのプロジェクトの一翼を担っています。・・・

ハイクビジョンは2016年のリオオリンピックの防犯・監視カメラシステム、各国の港湾監視、空港監視などの大規模監視システム案件を次々に受注」

出典:

https://bouhancamera-choice.com/hikvision/

とあり、中国の監視社会を担う企業です。

また、2つ目の「天網」スカイネットというのも前回センスタイムの項でも見ましたね。都市向けです。

2020年までに全土で導入予定だそうです。

2017までの2年間で犯罪逃亡者2000人の逮捕に貢献したそうで、精度の向上と共に虹彩や骨格認識情報を紐付けて個人情報を蓄積しているそうです。

「2015年に国家発展改革委員会などが公表した996政策(政策996号の意味)、2017年に北京で開催された全国公安科学技術情報化工作会議、孟建柱公安部長の発言が「620講話」として、ひとつの指針になっている。それは公安部の監視カメラシステムには、「天網」(ネットワーク化)、「天算」(画像高速処理能力)、「天智」(人工知能の応用)の3つが必要だとするものだ。」

http://tamakino.hatenablog.com/entry/2019/08/23/080000

国家プロジェクトに参画することで技術力・用途を広げていて、

餌となるデータが中国では多数手に入る状態なので手が付けられないということだと思います。


まとめ

マスクで認識率が落ちるそうだが、香港騒動で禁止するぐらいだったけどコロナ禍の前には敵わず皆さんマスクです。

それでも積極認識の認証サービスは精度が上がって、マスクでも正面だとそこそこ認識されているものの

アメリカだと警察車両とボディカメラに顔認証を付けて、犯罪データベースに照会することが、2018年カリフォルニア州で検討されたけど、能力不足で濡れ衣を着せられる事を懸念してマイクロソフトは見送りを働きかけ。

結果として、2020年6月11日、マイクロソフトは適切な法律が整備されるまで、警察への顔認識技術の販売を見合わせると発表。IBM、アマゾンも同様の方針を表明している。p310

一方既に中国警察が導入した顔認証眼鏡は、反体制派や少数民族の監視が容易になると懸念されていました。


世界にはどれくらい町に有るのか調べたら英語ですが面白いサイトを見つけました。

https://www.comparitech.com/vpn-privacy/the-worlds-most-surveilled-cities/


世界120都市の監視カメラ台数を分析したうえで、人口1000人当たりの台数へと換算して、世界で最も監視されている上位20都市としてランキングしたものです。ベストスリーは

1位 中国、太原– 1,000人あたり119.57台のカメラ
2位 中国、無錫–同92.14台のカメラ
3位 イギリス、ロンドン(UK)–9,304,016人に627,727台のカメラ= 1,000人あたり67.47台のカメラ

ちなみ日本

東京、日本–37,393,129人に対して39,504台のカメラ= 1,000人あたり1.06台のカメラ

でした。ベスト二十には中国ばっかりです。

追記:中国の首都、北京は1,000人あたり56.20台のカメラ

Beijing, China – 1,150,000 cameras for 20,462,610 people = 56.20 cameras per 1,000 people

ロンドンの方が多いのです。大阪は2120台しか監視カメラ数としてカウントされておらずこのランキング自体公共の監視カメラに限定され、個人やマンション、お店の監視カメラ、ドラレコは対象外です。

Osaka, Japan – 2,120 cameras for 19,165,340 people = 0.11 cameras per 1,000 people


西欧だとベスト二十にはロンドンぐらいで、なんでランクインかと思ったら、そういえばミレニアムにテロ対策で監視カメラを設置していました。オリンピック対策やら北アイルランド独立の爆破に市民からの非難爆発させながら設置されていたのを思い出します。

当時の記事を漁ると、

イギリス国内には約420万台の防犯カメラが設置されており、観光客は一日に約300回も防犯カメラに映されるという話を聞いたことがあります。2005年にロンドンで起きた同時テロ事件やテロ未遂事件の犯人特定に活用されたという

ことだそうです。

その昔と言っても写真もない15世紀には自画像を持つのも貴族のたしなみ。今で言うポートレイトです。

今日は早帰りして近くで美術鑑賞してたら、ポートレイトの周りには自分の紋章や領土の特産品、隙間が無いほど埋め尽くして自分アピールです。一生ものだから少し斜に構えておすまし顔、女性ははにかみ顔です。斜めに向くのは凹凸をはっきりとさせるためだそうでアメリカ人の証明写真なんかも今でも斜め。日本は卒業アルバムの右上のように能面のように正面を向きます。

それが今では街を歩くだけで勝手に撮られまくる。下手したらドラレコで止まってても存在が残る。有難いことです。

最後に日本について認証能力テストでNECが世界一だったり、キャノンが北欧の監視カメラを買収したりしたのですが、ここでも存在感が有りませんでした。


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