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US最高裁判事&ゲノム裁判

知財訴訟のノンフィクション本を久しぶりに読みました。逆さにしているのは反面教師にしたいから。


US最高裁判事


US最高裁判事も選挙シーズンになるとクローズアップされてきます。
特に今回はトランプ前大統領が訴追されている状況のため出馬資格自体が有るのかを判断する主体なので大事です。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB085MB0Y4A500C2000000/?n_cid=NMAIL007_20240526_A

遥か昔に判事の傾向などを調べたことが有ったので、その内容をアップデートします。

今回「ゲノム裁判」という本を読んだら、その最高裁判事が知財事件でどのような発言をしたのか、
そのキャラクターと共に面白い一端が明らかにされています。
後でも書きますが誰か最高裁判事の最新情報で書籍など出してほしいところです。

と言っても何にもないのもあれなので、現在の最高裁判事をリベラルと保守でラベリングしてみます。
以前は書いてあった人種的な記載は日本でも忌避されがちですが、重要なファクターと思っているので記載を続けます。

現役のUS最高裁判事

2024年5月現在の最高裁構成 WIKIより加筆して作成しました。

2024年5月現在の最高裁構成 WIKIより加筆

判断傾向についてはリベラル・保守度合いを抽出し再配置 下に行くほど保守的となります。

司法の独立性のため自己申告の引退か死亡でしか最高裁判事は変わらないため終身裁判官です。。
後述する本でも存在感を示すリベラル派のルース・ベイダー・ギンズバーグの死去に伴い保守派のエイミー・コニー・バレット
トランプ政権で最後に任命した最高裁判事です。
この方、養子2人を含め7人を育てる肝っ玉母さんとのことです。

スティーブン・ブライヤーが2022年6月30日に引退を発表したことに伴いケタンジ・ブラウン・ジャクソン
バイデン政権下で引継ぎするため引退したなど憶測も飛んでいましたね。

ソニア・ソトマイヨール
女性69歳
リベラルというか庶民派のおばちゃん感覚を持った判断をされる裁判官です。
ケタンジ・ブラウン・ジャクソン
女性53歳アフリカ系をバイデン大統領にねじ込みました。

2022年4月7日(52歳)なので最近です。

エレナ・ケイガン
女性64歳の中堅の最高裁裁判官という変なネーミングになります。
ユダヤ系で、ここまでがリベラル。
ジョン・ロバーツ 17代長官
男性69歳、白人系ニューヨーク州の18年目
conservativeは、中立とも読みます。

エイミー・コニー・バレット
女性52歳白人系
ルイジアナ州ニューオーリンズ出身でトランプのゴリ押しです。

サミュエル・アリート
男性74歳
イタリア系ニュージャージー州
ブッシュ時代に任官された18年目の保守の大物です。

ニール・ゴーサッチ
男性55歳白人系
トランプ・チルドレンです。
2017年4月10日(49歳)なので5年目のガチガチ保守です。

その1年後2018年10月6日(53歳)に
ブレット・カバノー
男性59歳白人系なので似ていますね。

クラレンス・トーマス
男性70歳
アフリカ系ジョージア州
1991年10月23日(43歳)から32年目、
保守の重鎮です。

最高裁判所の系譜

過去の最高裁判決を読む際には誰が健在だったのか下の表を良く読みます。

これ、2017年当時の本を未だに使いながらなので
最新情報にアップグレードした本が有ると嬉しいですね。

本の所感

さてこの表の2010年あたりの最高裁の雰囲気も分かる
バイオ訴訟の本になります。

ゲノム裁判
ジョージLコントレラス
みすず書房

判例研究した内容がドキュメンタリーになるとは深いです。

このアプリマジ使えん。て、使えんのは私ですか、そうですね。笑えたのでそのまま逆さま。手書きは最高裁判決をまとめたミリアドの部分


遺伝子検査会社のMyriad Genetics社(米国ユタ州ソルトレークシティー、以下ミリアド社)の最高裁判決に関するストーリーです。

バイオや医薬に関わらない弁理士にとっては101条絡みでしよ!ぐらいしか土地勘も無いのですが、読みやすく作られてて読み切りました。


ミリアド社が保有する2種類のがん関連遺伝子(BRCA1とBRCA2)の特許訴訟が題材です。相関関係を有する変異の有無で乳癌などを早期に、いえ将来リスクまで読み取るものです。
アンジョリーナ・ジョリーが摘出手術をしたことで有名になりましたよね。

自然界にも存在する関連遺伝子(BRCA1とBRCA2)が癌と密接な関係が有ることに着目して権利化しています。この遺伝子は単独では存在出来ず別の遺伝子と共有結合しています。これって権利化して良いのか?という問いを患者を探して訴えた物語です。

さて本のクライマックスはp381以降のミリアド社に対する最高裁判事のやり取りです。
裁判のスクリプトを見る事は多々あれど、判事毎の色を魅せる切り抜きは是非ともお読みください。
もう一生味わうことは無いとは思いますが
・臨場感あふれるプレッシャー
・判事の言葉の罠
・インナーサークルに居ることの意味、フィーのバカ高い弁護士を雇う意義

など追体験しています。

「体内で意図的に単離する事は無い」
と書いていたにも関わらず
その文章を思い出せなかった後悔。
偶然と意図的
の説明を特許屋さんとしては、頑張って欲しかった。
などなど知財担当なら楽しめます。

それにしてもスカリア判事の法廷意見も厳しい。アメリカの誇るCAFCの判事をして科学的にアマチュアとこきおろしているなんて。何処かで引用しよう。

人工的なDNA であるcDNAは今も権利化出来るが
ほぼミリアド社のビジネスから離れた勝ちを誇るジョーンズ・デイも、そのらしさに笑える一冊でした。

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