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テンセント変遷とゲーム参入時期

スーパーセルはテンセント傘下ですが、ゲーム業界はテンセントが席巻しています。今回はテンセント自身もベンチャーだった頃に苦労した話から、目利きをいかに巧くやれるのか、ゲームメーカーの提携とあわせてみていきます。まずはテンセントの実績

米モバイルアプリ調査会社「Sensor Tower」が、2020年12月の世界モバイルゲーム売上ランキングを発表した。1位はテンセント(騰訊)の『王者栄耀(Honor of Kings)』。App StoreとGoogle Playを合わせて前年同月比58%増の2億5800万ドル(約268億円)を売り上げ、前月に引き続きモバイルゲーム売上世界一となった。
2位は同じくテンセントの『PUBG MOBILE』(中国版『和平精英(Game for Peace)』を含む)で、同月は1億7700万ドル(約184億円)超を売り上げた。

テンセント系列で世界のワンツーフィニッシュです。

当初からテンセントは自社開発というよりは中国代理店の立場で参入しており、自らというよりは提携や買収を通して根を広げています。

2003年3月上海でゲーム事業部を創設したのが始まりです。オフィスは浦東新区ルージアズイの電信大厦400平方メートルに30名の従業員からだそうです。

韓国imazicの「凱旋」というゲームの代理店販売も失敗、責任を取って王遠と李海翔は担当を外れ深圳に戻すなど当時も苦労しています。


現在ではその豊富な資本を使って、ソフトバンクグループのように群管理してます。辺り構わず伸びそうな企業はみんな友達状態です。

そのテンセントにもベンチャーの時代があり当時をすこし見ていきます。

テンセントのVCとの出会い

テンセントはミレニアム直前に資本不足に陥り確保に走ります。この辺りにテンセント自身も他人の資本に助けられています。

下の図はテンセントの本当の初期の資本注入の図です。

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最も最初?はIDGの王樹と面会し、シニアパートナーの王功権の視察を受けOICQを見せます。パクり元の?というと変ですが、AOLが元ネタのイスラエルICQを2.87憶ドルで買収しており将来性を感じたそうです。

同時に香港PCGは李嘉誠の次男リチャードリーの設立したVCもテンセントへの出資参加して二社から提供を受けることになりました。

評価額550万ドル。株式40%で220万ドルの資金調達予定でしたが半額に減免されます。この評価額は創業者自身の評価だそうです。締結前にIDGの王樹より450万元融通するなどしてもらい一息つく記載も有りました。

その後、南アフリカMIH(南アの有料テレビ運営会社)中国事業部 ワンダーウエイ副総裁が追加出資することを決めますも。

評価額6000万ドル(2001年1月)。南アMIH32.8%を現金支払い PCGは全部売却し1260万ドルを得ます、IDGは比率を下げて20⇒7.2%に。2002年6月 転換社債投入でMIH保有比率46.3% 、2003年8月 米IDG株を引き取り、MIHと創業者で半々にします。

評価額57.52億香港ドル(7.37億ドル2004年6月)が上場時の評価額です。新株25%3.7香港$、ゴールドマンサックスでロードショーし14.38億香港ドル調達する。

タイムスリップしてこの時期に買ってたら、一生不自由しませんね。

2021年頭だとMIHは31%の株を保有しています。テンセント創業者が今では1割弱程度なのでどれだけ多いかも分かると思います。なおMIHの親会社がナスパーズでしたが、余りにテンセントの時価総額が大きくなって2019年に投資部門をナスパーズから分割しプロサスという企業が保有しています。

ゲームとの関係

知財をみてゲームメーカーを買収、提携していたらカッコいいのですが違いました。

テンセントはQQなどSNSを使いビックデータを持つので、中国のZ世代など若者を中心にライフサイエンスをスマホを通して分析しています。

日本で言うオタクも多いのでいち早く流行をキャッチし投資に利用するのでしょうか。


テンセント、ゲームソフト世界大手に出資

下図は上が子会社、下が資本提携を持ちかけた会社の保有割合です。完全子会社はテンセントの中に入れてます。大手のゲームメーカーの提携前の特許もみていきます。まずはLoLのライアットゲームズから。

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ライアットゲームズは2011年にテンセントが過半株式を取得し、15年に完全買収した。 Riot Games は「リーグ・オブ・レジェンド」LoLの開発元として有名。

3億5000万ドル(約288億円)を上 回る価格で交渉し、別資料では「League of Legends(LOL)」を開発した米ライオット・ゲームズを21億6,800万元(約345億円)で買収とありました。

提携時の特許出願は2013年三件から、完全子会社化した2015年末まででも前記を含めると七件です。内容はオンラインゲームでした。現在でも17件のみアメリカで出願しているに過ぎません。

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中身も見ましたがうーんという内容です。

エピックゲームズ

アップルと手数料でもめて一躍有名になりました。

エピックゲームズは株式40%をテンセントが保有し創業者が残りの半分を保有する。 アップルの手数料で声を上げ1984的なCMで目立つ、 Epic Games はFortniteの開発元として有名。

12年には3Dゲームエンジン「アンリアル・エンジン」で知られる米エピックゲームズの株式48.4%を3億3,000万米ドルで取得と記事を読んだのでその時期以前をみます。

40%の資金提供を行った時期には下記のような出願が3件出ていました

US 2013-0260894A、US2013-0260895A、US2014-0113714A

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これをみても全く将来性が分かりません。

現在の隆盛を見抜いて一足早く手を付ける。テンセント恐るべしです。

またEpic Games(12年) がローンチしたFortniteは(17年)なので40%の理由はこのアプリとは別ですね。

スーパーセル

スーパーセルはほとんどの株式をテンセントが保有する。クラッシュ・ロワイヤルの開発元として有名。

84.3%分の株式(日本のソフトバンクからの73.2%分(約73億ドル)と一部のスーパーセルの従業員の持ち株12%分)を86億ドル(約9400億円)で取得したようです。Supercell(スーパーセル)は2010年フィンランドのヘルシンキで設立されたモバイルゲーム開発会社で我らがクラクラ、クラロワの開発元として有名。

2016年にフィンランドのSupercellの過半数株取得に86億ドル(約9400億円)払ったとあるのでこの前を探ります。

全期間でも29件、うち2016年までで半分の15件出願しています。

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詳細はGREEとの係争は度々記載済みなので割愛。

韓国との繋がりもでかい

そもそもテンセントのゲーム参入が韓国ゲームの代理店業務からなのでつながりは深いです。

現在ではネイバーの「ラインゲームズ」にも最近500億ウォン(約49億円、持ち株比率5.57%)・・・テンセントはネットマーブルの3位株主(17.55%)、カカオゲームズの2位株主(4.29%)
テンセントは約5億ドルを支払い韓国のCJゲームズの株式28%分を取得すること2014年3月27日
2014年9月、韓国のモバイルゲーム制作企業「PATI Games」はテンセントから1970万米ドルの設備投資を受けた

と各社に低額ですが資本提携を進めています。

他にもUbisoft、Paradox、Frontier、Miniclipなど数多くのゲーム会社にも投資。

テンセントはアクティビジョン・ブリザードの筆頭株主で、フランスのメディア企業であるヴィヴェンディから株式約6%を取得した。取得額は約5億米ドル(約490億円)に上るとみられる。29日付第一財経日報などが伝えた
Funcom(ファンコム)の完全買収提案が承認されれば、ノルウェー・オスロ拠点のFuncomの買収額は1億4800万ドル(約162億円)になる予定だった。交渉が不調に終わり2020年 テンセント(騰訊控股)が、ノルウェーのゲーム会社ファンコムにTOBした。
Ubisoft 2018年:ヴィヴェンディが中国のテンセントやカナダの年金基金などへの全株式の売却を発表

ゲームと名が付けば提携話が来るかもと?馬鹿話を聞いたことが有りました。

まとめ

テンセント自身も五千万円に苦労した記憶が有りましたので、出資の有り難みを知っています。ゲーム業界以外だとラウンドABから、シードでも行っています。でもゲーム業界にはヒットがある企業へ、ある程度の成功事例に参加する感じです。

そもそもゲームは100に3つヒットならぬ1000に3つ、万に3つのホームランなので、当てたところが更に盛り上げるための資金ショートにお手当てできるテンセントのやり方は上手いです。サーバ増強したり、バグ取り、イベントなどユーザーが増える毎に金食い虫です。(課金も凄いけども。)


テンセントはQQなどビックデータを持つので、中国のZ世代など若者を中心にライフサイエンスをスマホを通して分析しています。このエコシステムをを使い、ゲームはハマるので接続時間やウイチャットペイの課金を見れば流行りは一目瞭然です。日本で言うオタクも多いのでいち早く流行をキャッチし、投資に利用するのでしょうか。

二番煎じ、三番煎じはやれども、元々ゲームの持つ地力がないとヒット自体しません。またパクり過ぎると特許訴訟も有り得るようになって来たので、あくまでもバックボーンというか思想だけ利用しているのが良さそうです。

最初にテンセント創業者の付けた評価額はわずか550万ドル(2000年4月)。締結前にIDGの王樹より450万元融通しないと倒産の危機だったと聞いて、ここから二十年で時価総額1兆ドル(約104兆円)に迫っていたことを考えると感慨深いです。

この評価額の高騰を利用して、流行りのゲームの制作を根こそぎ資本提携していました。最近は米中経済摩擦で厳しいようです。

なおテンセントは上のライアットゲームズとエピックゲームズの筆頭株主になります。これに対して米当局の対米外国投資委員会(CFIUS)と交渉しています。

どうなることやら。

ちなみにテンセントは2011年 日本のSNS大手GREEと提携していました。今ではスーパーセルの敵ですね。

なお、最後に小ネタですが楽天がテンセントと低額の資本提携をしましたが、アメリカ企業も実績アリです。

2017年 テンセント(騰訊控股)が、米テスラに5%出資

2018年 テンセント(騰訊控股)が、グーグルと、特許クロスライセンス契約を締結

これを見ると目くじらたてすぎな気がしますよね。

参考図書:

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以下は次のネタ帳でまさに備忘録です。

現在のテンセント関連ゲームは隆盛を誇っているのでその条項記事を後々使うため列挙します。ソフト名と制作、売上実績です。お急ぎの方は次のチャプターまで

Moonlight Blade Mobileは、20年4QのiOSトップグロスチャートで1位を獲得しています‼️

2015年 テンセント(騰訊控股)が、王者栄耀(おうしゃえいよう)リリース 2015年11月26日にリリースされた、騰訊・天美スタジオ開発のチームストラテジーゲーム。提供はテンセントゲームズ。マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ(MOBA)型の基本プレイ無料のスマホゲームです。
人気FPSのコール オブ デューティシリーズから登場した無料のモバイルゲーム「Call of Duty Mobile」は、テンセント傘下のTimi Studiosが開発したタイトルです。このTimi Studiosは2020年に100億ドル(約1兆1000億円)以上を売り上げたことが明らかになっています。2014年、Jade Studioは、成都のWolong Studioおよび上海のTianmeiyiyou Studioの合併により改名しておりテンセントグループです。
なお、クラッシュ・バンディクーシリーズやコール オブ デューティシリーズの開発元である世界的なゲームスタジオのアクティビジョン・ブリザードは、2020年に80億9000万ドル(約9000億円)を売り上げています。Colin Yao(テンセント副社長兼TiMi Studios社長)ですから一体です。
なお、テンセントはモバイルゲーム「PUBG Mobile」の開発元であるLightspeed&Quantum(光子工作室群)の親会社でもあります。2018年 テンセント(騰訊控股)が、人気ゲーム「PUBG」開発会社の2位株主へ。PUBGに至っては、海外を見ても「モバイル版はテンセントと共同開発」「運営のKRAFTON(旧・Bluehole)の株式10%程度をテンセントが保有」と共同運営に近い状態とも言えます。

着実にビット作の出本はテンセント本体にも産まれていそうです。

https://sensortower.com/blog/revenue-per-iphone-2020


基本無料ゲーム(いわゆるF2P。無料で遊べる&アイテムなどで課金するタイプのゲーム)の世界収益ランキングを見ると

1位:Fortnite 2,400億円(24億ドル)
2位:Dungeon Fighter Online 1,500億円(15億ドル)
3位:League of Legends 1,400億円(14億ドル)
4位:ポケモンGO 1,300億円(13億ドル)
5位:Crossfire 1,300億円(13億ドル)
6位:Alena of Valor 1,300億円(13億ドル)
7位:Fate/Grand Order 1,200億円(12億ドル)
8位:キャンディークラッシュ 1,100億円(11億ドル)
9位:モンスターストライク 1,000億円(10億ドル)
10位:クラッシュ・ロワイヤル 900億円(9億ドル)
データ提供:SuperData

いやはや、いつの間にか任天堂よりゲーム業界の盟主ですね。


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