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使用済み切手マニアとは

会社で使用済み切手の回収がある。
名前の通り、送られてきた封筒から
切手の部分を切り出し、回収する。

若いころは疑問だった。
これは一体何なのか?
最近回収の役員となり、その全貌を聞いて驚いた。

世界中に「使用済み切手マニア」
と呼ばれる人達がおり、
箱いっぱいの使用済み切手を漁って
素敵な模様を探すことを
至上の楽しみとしている。
だから、使用済みでも一箱幾らで売れる。
収益金を福祉に役立ている団体がある。

嘘みたいだが本当の話だ。
こういうときはググらずに、
妄想するほうが楽しい。

例えばこんな感じ。

ニュージャージー州のとある郊外。
ジェフは夕食を済ませると、
ソファーに深々と腰を掛けた。
ウォール街での慌ただしい生活は遠い過去。
リタイアした今は庭の野菜と、
別れた妻を思いながら過ごしている。

黄昏がジェフの心を暗く染めた。
スコッチの瓶をゆっくり開ける。
俺の人生には何の意味があったんだろう。

そういえば、今日は切手が届く日だった。
慌てて玄関に戻ると、
無造作に置かれた箱があった。
<From Japan>
今回は日本の切手か。


胸が高鳴る。
箱を開ける瞬間が、彼には何よりの幸せだ。
幼いころに祖母と開けた記憶。
別れた妻と初めて開けた記憶。
全てが過ぎ去り、全てが愛おしい。


開けた後は惰性だ。
スコッチを片手に、
ぼんやりと一枚一枚を眺める。
この気持ち悪い生き物はなんだ?
「ふなっしー記念切手」彼には読めない。
日本は不思議な国だ。


スマホの画面が光る。
「ジェフ、聞こえているの?」
半年ぶりに聞く妻の声はひどく怯えていた。


とかこんな風に。
世界中で愛されている使用済み切手。
みなさんも集めてみましょう。


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