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”地域 × eスポーツを科学する” file03:沖縄県 美ら組代表 J-Snakeさん

こんにちは。ZORGE note編集部です。

”地域 × eスポーツを科学する”

今、日本の最南端である沖縄県では「スマブラ」が盛り上がっています。その火付け役がスマブラコミュニティ「美ら組」の代表を務めるJ-Snakeさん。RyukyuGamingに所属するプロプレイヤーであり、沖縄県でトップクラスの実力者でもあります。

沖縄最強と謳われる「美ら組」は上位メンバーのほぼ全員が「VIPクラス」の実力を持ち、参加者100人規模の大会や定期大会では平日でも20~30人が参加するほど、沖縄県内屈指のスマブラ集団へと成長しています。

今回は、美ら組代表のJ-Snakeさんに、活気あるコミュニティを生み出すためにどんな仕掛けをしていったのかをお聞きし、熱狂的なムーブメントを作る秘訣について考察していきたいと思います。

J-Snakeさんのプロフィール

プロフィール画像3 トリミング

1990年生まれの31歳。沖縄県出身在住。20歳の時に、カードゲーム(遊戯王)を中心に県内の大会に出場するなどして、競技シーンに足を踏み入れる。現在は整骨院で働く傍ら、RyukyuGaming所属の選手兼イベント運営もこなしている。


自分たちの遊び場は自分たちで作る

---ゲームコミュニティは全国でも多数ありますが、「美ら組」が高いモチベーションを保って活発的に活動できている理由やポイントを教えてください。

コミュニティを立ち上げた7年前、最初に決めたことが「”お客様気分”の人はメンバーにいらない」ということでした。

私が尊敬している沖縄県出身の選手がいて「今は"公園"かもしれないけど、頑張り続ければ"遊園地"になれるかもしれない。だから自分たちの遊び場は自分たちで作ろう」という言葉が心に残っていて、それ以降はずっと、みんなで活動を盛り上げていきたいと気持ちがある人だけに参加してもらっています。

美ら組1

美ら組2

なので、よくある「なんで自分だけ苦労してんだ」みたいな不満とか、メンバーによって熱量というかモチベーションの差があるという状況にはならないですね。

そう言った意識をみんなで共有してきた今では、私がいなくても大会がメンバーだけでまわせるようになるくらいまで、みんながある程度できるようになっていて、すごく助かっているんですよね。


スポットライトを選手に当てて、コミュニティを育む

その他の取り組みとしては、県内のスマブラプレイヤーの増加とレベルの底上げ、コミュニティの認知を広げることを目的に、Youtubeで「スマッシュちゃんぷる」という沖縄スマブラ情報番組を毎週1時間程度の配信をしていました。

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このコーナーでは、大会情報や私が注目している選手を「笑っていいとも風」にゲスト出演してもらい質問コーナーを設けたり、他には中堅層の実力が近いライバルプレイヤー同士でどっちが強いのかを決める「魂の5本先取」をしてもらったりと、選手にスポットライトを当ててあげるんです。

配信を通じて選手を紹介してあげることで、選手一人ひとりの人柄をコミュニティのみんなに知ってもらえるんですよね。そのほうがみんな親しみを持って接することができるし、その選手自身も自分のことを知ってもらうことでより活動がしやすくなるじゃないですか。

「沖縄スマブラ会でこの人はこういう選手なんだ」と周りに認知してもらうことでその選手にとって「ここにいていいんだ」という居場所ができるんです。

そういったことを最上位のメンバーじゃなくて、意識的に中堅層や新規層にスポットライトを当てるようにしていったんです。すると、一人ひとりに「おれは美ら勢(沖縄のスマブラ勢)だから」みたいな、ちょっとした帰属感が生まれ、一体感が生まれるんです。


“プレイヤーファースト”でゲーマー心をくみ取る

---大会を開催する時に心掛けていることや工夫していることはありますか?

「もし自分が初心者だったら」と考えると、1回戦や2回戦で負けてしまう大会が続いてくるとつまらなく感じてしまうと思うんですよ。なので、予選で敗退してしまっても配信で映れる場や自分にスポットライトが当たって応援してもらえる場っていうのをどこかで用意してあげることで、その選手のモチベーションにつながると思っています。

なので、プレイヤーたちには大会に負けた組が参加できるBクラスの大会を設けて、Bクラスの決勝戦を本選のAクラスの決勝戦前に配信すると決めてます。そうすれば、Bクラスで勝ち残ればみんなが注目して観戦している場で戦えるといった工夫をしています。

それとは別に、今考えていることとしては、大会参加者用の「名札」です。名札って大会に参加したことの「記念品」になるんですよね。

ただ、ほとんどの大会では自分で名前を手書きしなきゃいけないものですけど、これよりもすでにデザインされた名札のほうが自分の汚い文字よりカッコイイじゃないですか。

なので今度開催する大会では、「誰でも参加」「上級者のみ」「初心中級者のみ」の3つのグレードに分かれているんですけど、その「上級者のみ」に参加する選手のみがもらえる、使用キャラクターと名前を印字した名札を制作して渡そうと思っています。

上位グレードだけに与えられる名札にすることで、中堅の子たちが「おれも名札欲しいから頑張りたい」といった上を目指すための原動力になれたらと思います。

お金がもらえるわけではないんですけど、お金で買えない価値を提供していきたいなと思っています。


美ら組の文化 HYPE(ハイプ)

---メンバーが自発的にコミュニティを盛り上げるための「共通認識」ってどのように作っているんですか?

私たちは熱狂することを「HYPE」と読んでいて、オフラインで試合を観戦するときには「声をだそう!」と伝えています。どんな雰囲気かは実際に見ていただいたほうが早いかもしれませんね。

※動画リンク 【美らブラSP#8】勝者側決勝戦 エリクム (ドンキーコング) VS J-Snake (ウルフ)

オフラインの醍醐味はライブのような盛り上がりだと思っています。それを参考にしたのは福岡県のスマブラコミュニティ「修羅ぶら」でした。
私が大会に参加した時に、歓声による盛り上がりがすごくて驚いたんですよね。特におもしろかったのは、騒音の指数となるデジベル数を会場で計測して、「一番会場を沸かせた試合」としてピックアップするなんてこともしてました。

美ら組3

この時の空気感を取り入れたいと思って、メンバーに「修羅ブラ」の大会を見せてイメージを共有し「声を出そう!」と呼びかけたんです。コミュニティをより活性化させるためには「プレイする楽しさ」と同じくらいに「観戦する楽しさ」も文化として形成していくことが重要だと今では思っています。


”地域 × eスポーツを科学する” file03:沖縄県 美ら組代表 J-Snakeさん

今回、J-Snakeさんからお話を伺って感じたことは、「プレイヤーファースト」のもと、自身もプレイしながら他のプレイヤー達のことも考えて、こういったイベントを仕掛けながら運営している姿勢というのは、すごく美しく見えました。

それでありながらも、主催者としての様々な葛藤などがあるかとは思いますが、実際にこれだけの参加者を集めてみんなで楽しんでいる様子を、外から見ている限り大変羨ましくも感じました。

美ら組4

今、全国的にeスポーツを広げようとする動きであったり、それを事業として捉えるような動きも増えている中で、美ら組のような事業ではなく純粋に「みんなで楽しもう」という気持ちで集まっているコミュニティの存在というのは、大変重要だと思います。

美ら組5

私たちが、eスポーツを事業として日々活動して見ている景色とは違った部分に対して、高い解像度を持っているとお話を伺って感じました。
J-Snakeさんを含めるプレイヤーコミュニティが、このまま楽しく活動をしていけるような環境を私たちのような事業として取り組んでいる側からも配慮して守りつつ、より楽しめるよう、拡張性ある地域での取り組みに向き合っていく必要がありますね。

J-Snakeさん、ありがとうございました。

//関連リンク
・Twitter - RG | J-Snake (新里 渉)
・Twitter - 美ら組 -沖縄スマブラ情報アカウント-

(ZORGE note 編集部 http://zorge.jp

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