見出し画像

『ツェねずみ』

宮沢賢治シリーズ 第一回

かいのどうぶつえん 園長です。
今回は、宮沢賢治の動物寓話『ツェねずみ』(A rat named "Tse.”)です。
古い家の屋根裏に「ツェ」という名前の”ねずみ”が住んでいました。親切な”いたち”に「金平糖をひろったよ」と教えられ、戸棚に駆けつけると、黒山の”あり”に追い払われました。ツェはくやしくて、いたちに八つ当たり。
「私のような弱いものをだますなんて、まどうて(つぐなって)ください、まどうてください」
としつこくわめき、金平糖を奪ったそうです。あまりに身勝手で動物仲間や、バケツなど道具友達とも絶交状態。ところが意外にも、孤独なツェに”ねずみ捕り”が「イワシだよ。食べて。入口は閉めないよ」と、優しく声をかけたのです。実は、ねずみ捕りは嫌われ者のツェに同情。「なぜ捕まえない!」と人間に叱られても、かばい続けてくれたのです。ただツェは、毎日餌をもらっても当然顔。そんなある日、カゴに入って”はんぺん”を食べたとたん、腐っていると激怒!本性をむき出して「まどうてください、まどうてください」。困ったねずみ捕りが身もだえすると、突然、鍵がはずれて入口が閉じてしまいました。さて、ねずみの運命は?

「安心して食べて!閉めないよ」
「今日の餌はなにかな?」

☆裏話−1
☆”ネズミ”の呼び名
英語圏では、”ネズミ”はラット(Rat)とマウス(Mouse)に区別しています。ラットはドブネズミのような大型のネズミで、汚くて卑怯者の意味もあります。マウスはハツカネズミのような小型のネズミで、可愛らしくて臆病者のイメージです。
☆裏話−2
”ねずみ捕り”は、漁師の従兄弟が寄贈してくれた「ガンガゼ」で制作しました。ガンガゼはウニの仲間で、鋭く尖った”棘”には毒があり、細長くてとても折れやすく、四苦八苦しました。

2003年の開園時より、貝たちとは「割らない」「塗らない」「削らない」と固く約束して制作しています。園長

             <貝の配役>
ツェねずみ:ハツユキダカラ/コガモガイ(稚貝)/シマメノウフネガイ/
ムシボタル/パイプウニ 他
ねずみ取り: ガンガゼ/パイプウニ/レモンカノコ/スガイ/
ムラサキウニ 他
:タマキビ ★:ナミマガシワ ★:ホタテガイ

「ガンガゼ」の棘には毒があります


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?