DMBOK第15章データマネジメント成熟度アセスメント
要約
定期的に成熟度アセスメントを実施することで企業内でどの程度データマネジメントが進んでいるのかを可視化することができます。成熟度アセスメントは代表的な成熟度モデルから自社用に適合させる必要があります。
初期のアセスメントでは、1つの業務領域や1つのプログラム等、管理可能な範囲を絞ってから実施し、徐々に対象を広げていく運用をするのが良いです。
ここでは成熟度アセスメントをどのように進めていくかについて記載しています。
成熟度アセスメントとは?
「成熟度モデル」というフレームワークに基づいたプロセス改善の取り組みです。 何が機能し、何が機能していないのか、組織のどこにギャップがあるのかを特定するのに役立ちます。
成熟度モデルとは?
様々な項目を並べてどのレベルまで成熟しているのかを表したものになります。 成熟度モデルは、進化の過程から定義され、プロセスの特性を表すレベルが使用されます。レベルには通常、次のようなものが含まれます。
複数の成熟度モデル
データマネジメント領域で開発された能力、成熟度モデルは複数あります。個別のデータマネジメントトピックによって分割されており、汎用的なものか、業種に特化したものかによって分かれています。
企業はベンダーを選ぶ前に、独自のフレームワークを開発する前に、複数のモデルを比較検討する必要があります。
下記はモデルの例です。
CMMIデータマネジメント成熟度モデル
EDM協議会DCAM
IBMデータガバナンス評議会成熟度モデル
スタンフォード・データガバナンス成熟度モデル
ガートナーのエンタープライズ・インフォメーションマネジメント成熟度モデル
代表的な成熟度アセスメントチャート
こちらの記事でも紹介されていますが、EY Japanのチャートが綺麗ですので本書とは異なるチャートを掲載します。(本書にもチャートは存在しますが、写真を撮ると分かりにくいのでこちらを掲載します。)
アセスメントは表にすると整理しやすいです。表については後述します。
①アセスメントアクティビティの計画
1. 目的を定義する
データマネジメントの成熟度を評価したい組織は既にアセスメントの実施に至った要因を特定しているはずです。その要因を目的として形式化することが必要になります。
経営幹部と業務部門がこのアセスメントの目的を明確に理解することで組織の戦略的方向性との整合性が確保されます。
2. フレームワークを選択する
前述の「複数の成熟度モデル」からフレームワークをレビューし、焦点を当てるポイントはカスタマイズながらフレームワークを選択します。
ただし、フレームワークはアセスメントの実施方法に影響を及ぼすため、評価を実施するチームは、モデルと方法論の専門知識を持っている必要があります。
3. 組織として実行する範囲を定義する
ほとんどのフレームワークは企業全体に適用されるように設計されています。しかし、企業全体をスコープとして実行するのは現実的に難しいこともあります。最初のアセスメントでは、1つの業務領域や1つのプログラム等、管理可能な範囲を定めるのが一般的です。
4. 対話型アプローチを定義する
組織は選択したモデルが推奨するやり方に従うべきで、情報収集活動にはワークショップやインタビュー、アンケート等が含まれます。 組織文化に沿って機能し、参加者の時間を最小限に抑え、アセスメントが迅速に完了できるような方法を採用します。参加者の記憶にあるプロセスが新鮮なうちにアセスメントを反映した行動を決めることができるからです。
アセスメントの完了が予定より遅れてしまうと、ステークホルダーはデータマネジメントの熱意を失い、変革に貢献する推進力を失う恐れがあります。
5. コミュニケーション計画を立てる
コミュニケーションは、参加者やその他のステークホルダーを対象とします。アセスメント結果を受けて、方法論や組織が変更されると人々の業務に影響を与える可能性があります。 そのため、個人やグループの目的、具体的な期待について明確に伝えることが重要です。
アセスメントを始める前に以下の内容を伝える必要があります。
また、常に参加者に感謝の意を伝えるとともに、次のステップを説明することが円滑に進めるために重要です。
②成熟度アセスメントの実行
DMBOKでは以下のような手順で実施・改善を行います。
1. 情報を収集する
他チームとの対話によってアセスメントに必要なインプットを集めます。収集する情報には評価尺度によって格付けが含まれます。
2. 評価付けを行う
参加者は評価項目に対して様々な意見を持ち、様々な格付けを与えるはずです。格付けを調整するには議論と合理的な説明が必要で、評価付けは現状に対して合意された見解に達することがゴールです。
ステークホルダーが現場に対する見解について合意できない場合、組織の改善方法について合意を得る事は困難になります。そのため、必要に応じて各基準の重要度に基づいた重み付けをしたり、モデルに準拠した判断基準と評価者のコメントを使用して格付けの解釈を記録していきます。
3. 評価結果を吟味する
評価が完了した後、目標とする状態に至る次のステップを明確化していきます。組織はデータマネジメントで達成したい目標に向けて計画を立てる必要があります。
4. アクションを特定しロードマップを作成する
アセスメントモデルを継続的な測定に使用すれば、可視化されるので組織をより高いレベルの成熟度に導くだけではなく、改善努力に対する意欲も継続できるようになります。
5. 成熟度の再評価
再評価は継続的な改善のサイクルであるため、定期的に実施すべきです。
内容は以下のような形になります。
最初のアセスメントを通じて基準となる格付けを確立する。
組織の評価対象範囲を含む再評価の全体像を定義する。
公開されたスケジュールに沿ってアセスメントを繰り返す。
最初の基準格付けに対する傾向を追跡する
再評価結果に基づいて推奨事項を作成する。
具体的なイメージ
イメージしやすいのは、よしむら@データマネジメント担当氏の記事「データマネジメント成熟度アセスメント、データ利活用機運アセスメントを行った話」になります。
特に表で記載されているアセスメントはレベル0 ~ レベル2までを例として記載しています。レベル3以降は自身で作成することをオススメします。
まとめ
以上、成熟度アセスメントについて解説しました。
組織の成熟度を把握することで、効果的なプロセス改善の道筋が見えてきます。多くの成熟度モデルが存在するため、自社に最適なものを選ぶことが重要です。
アセスメントを実施し、対象範囲のどの項目がどのレベルなのかを把握・共有できるかが非常に重要です。評価結果を元に具体的なアクションを特定し、ロードマップを作成することで、組織をより高いレベルの成熟度に導くことができます。成熟度の再評価を定期的に行うことで、持続的な改善をしていく必要があります。
DMBOKのデータ品質について特に重要な点を解説しました。ただし、非常に量が多いため解説していない部分が多々あります。詳細は本書を手にとってみて下さい。
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