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なぜロックはヒップホップに取って代わられたのか?~私なりの理由後編~

こんにちは。

すいません、昨日更新できませんでした。ちょっと修士論文発表が近くていかんですね。

さて、今日の記事は前回の続きになっています。
私が考える、「なぜロックはヒップホップが取って代わられたのか」の理由の後編を書きます。


理由④:ビジネスのうまさ

初期ヒップホップの立役者であるDr.Dre、Notorious B.I.G.、Jay-Zは、前職が共通しています。それは麻薬の売人です。
もちろん表立ったものではありませんが、ビジネスパーソン上がりで、そこでカリスマと言われた人たちです。

別に彼らもなりたくてなったわけではなく、当時、黒人である彼らが生計を立てる手段で最も有力だったのが麻薬の売人でした。
簡単な職業ではなく、かなりのビジネスセンスがないとカリスマと呼ばれるには至らなかったでしょう。

というわけで、この辺の人たちってのはラップだけではなくビジネスの嗅覚が尋常ではありません。
特にJay-Zは、最も成功したラッパーでもあり、最も成功したビジネスパーソンでもあります。
この辺は、Apple Recordを作って大失敗したThe Beatlesとは対照的です。

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前編で、他アーティストとのコラボのしやすさってのを上げたと思うんですが、それを利用して彼らは実にうまく自分たちを売り込みました。
誰かがデビューするときはすでに有名なラッパーとコラボさせたり、すでに有名なラッパー同士でコラボしたりと、コラボにより大きく知名度を上げた例があります。

コラボしていなくても、その立場を上げる例があります。Jay-Zが格好の例です。
Jay-Zはあるレコード会社に持ち込みますが、拒否されてしまいます。そこで、彼は自分でレコード会社を作り、さらに高校の友人ですでに有名ラッパーだったNotorious B.I.G.に自分の名前を出してもらいます。
それもあって(もちろん彼自身の実力もあり)、Jay-Zのデビュー作は死ぬほど売れますし、自身のロカフェラレコードも一躍大手になります。そしてそのロカフェラは、Jay-Zを落としたDef Jamと業務提携をすることになるのです。

Jay-Zがコラボ、プロデュースした相手は本当に多いです。
妻であるBeyonce、自身が見出したRihannaを始め、Kanye West、Alicia Keys、Timbalandなど、ビッグネームが連なります。


このように、コラボ等によって自分の名を上げるビジネスもうまいのですが、さらに他ジャンルとの交流がうまいです。特に、ファッションとの結び付けは大きいでしょう。

ストリートファッションはヒップホップが走りで、ヒップホップで身に着けられていたファッションが始まりです。
その中でも特にスニーカーの地位が高く、常にアイコンとなっています。

初期の有力MCであるRun-DMCはアディダスと業務提携を結び、Run-DMC=アディダスの図式を作り上げました。

PVなどでラッパーがそれをアピールするなどしてヒップホップカルチャーがスニーカーを強調するようになると、様々な人がそのスニーカーを求めます。当然スニーカーメーカーはラッパーと業務提携をするようになります。し、需要が高まってさらに価値が上がる…を繰り返し、ここ30年で飛躍的にスニーカーの希少価値は高まったのです。

僕にファッションの造詣があまりなくて恐縮ですが、スニーカー以外にもSupremeがtravis scottとコラボしたり…ととにかくファッションとの融合が定番です。

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一方ロックはどうかというと、もちろん彼らもカッコイイ着こなしをするんですが、基本的に彼らが着るのはあくまでステージ衣装なので、特定のメーカーとコラボしたり、いろんな人が服をまねたり…というのは起こりませんでした。
これは、ラッパーのほうがより「生活を見せる」ことにこだわること、それと、ロックは音楽ジャンルですがヒップホップは文化であること、が大きいです。

あとDr.DreはヘッドホンメーカーBeats by Dr.Dreを作ってAppleに売ってますよね。普通の起業家ならこれだけで大偉業ってレベルの成功です。


理由⑤:作りやすさ

ラップは作るのが簡単です。

Disっているわけではないです。これは明確な長所なのです。

ロックはボーカル以外は楽器ができないと話になりません。自分たちで演奏して、歌うわけで、まずは楽器ができる、というハードルが存在します。

一方ヒップホップはもともとお金のない黒人から派生した文化。楽器がないような貧困から始まっています。そこでどうしたかというと、既存の音楽を組み合わせて、その音の上にラップをしたんです。
このような既存の音楽を少し変えて使うことをサンプリングといいます。

ヒップホップはほとんどの曲がサンプリングです。例を見てみましょう。
超有名曲、Crazy in love(渡辺直美さんがよく使うやつ)は、Are you my womanという曲のサンプリングです。

つまり、ロックスターになりたい!と思ったらまずギターを勉強する必要がありますが、ラッパーはマイクだけでなれるのです。
今の時代なんてネット上にフリーのビートなんてあふれまくっているので余計そうですね。


まとめ

昨日今日をまとめると、こうなります。

ロックがヒップホップに取って代わられた理由として、
①不良が憧れる音楽がロックからヒップホップに変わり、それが若者全体に波及したこと
②シーンの中心がすぐ白人に変わってしまったロックと異なり、ヒップホップはシーンの中心が未だに黒人で、黒人文化としてのアイデンティティを保持していること
③コラボが容易であること
④ビジネスがうまい。自身のプロデュースやコラボでの連携、およびファッションとの提携
⑤作るのが簡単

次の記事では、こんな風にヒップホップに負けてしまったロックが、今後どのように生き残ればいいか、およびなぜ日本ではロックが優勢なのか、僕の考えを書こうと思います。

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