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なぜロックはヒップホップに取って代わられたのか?~私なりの理由前編~


こんにちは。

今日は洋楽界隈では語りつくされている、なぜポピュラー・ミュージックを牽引する存在がロックからヒップホップに変わったのか、僕なりの意見を書いていきます。

この記事は昨日の続きになっています。
今日は、実際に私が考える、「なぜロックはヒップホップが取って代わられたのか」の理由の前編を書きます。


理由①:不良の憧れの推移

ロックは始まりは不良の音楽です。

前述のとおり、黒人が作った音楽なのですが、発展させたエルヴィス・プレスリーやビートルズは白人です。
当時、まだ公民権運動の前で人種差別が根強く、黒人の音楽を聴く白人=不良でした。

そしてこの不良が憧れるってのは重要です。
そもそも不良ってのは数が多いですし、完ぺきな優等生よりもちょっと悪い方がカッコイイという文化が日本よりもずっと強いので、ブームの原動力となるのです。特にそういう考えは若者に多く、若者文化として広まるため、息も長いのです。
ロックも始まりはそうやって広がっていった側面が強いです。

しかし、不良の憧れだったロックは変容していきます。
発展しすぎて、白人文化へと染まっていき、クラシックなども入ってきたりして、複雑になっていきます。
特にギターの超絶技巧がもてはやされたりすると、もう出る幕はありません。
さらに芸術性を高める方にムーブメントが変わっていったため、余計に不良にはなじみにくくなります。90年代のメインのロック(オルタナ)も、かなり内向的・陰鬱なもので、カートコバーン死去後には完全な自粛ムードです。

そんな中、ヒップホップが登場します。
まずN.W.A.というむっちゃくちゃに不良な連中のデビュー、その後出てくる人たちも悪い奴らばっか、さらに東西対立でリアルな殺し合い…

当然、不良が憧れたのは後者です。

そして不良の中では完全にヒップホップ>ロックという図式が完成し、それが若者全体にも波及し、現在ではその構図が共通認識として残るようになりました。


理由②:黒人が未だにシーンの中心だから

昨日長く語った歴史の中で、ロックの歴史の中心にいたのは常に白人でした。
ロックや、その前身のブルースを生んだのは黒人で、草創期は黒人のロックヒーローが多かった(Chuck Berry, Little Richardなど)んですが、特にビートルズ以降はシーンの中心にいたのは白人ばかりでした。
簡単に言うと、0→1にしたのは黒人でしたが、1→100にしたのは白人でした。

一方ヒップホップはどうだったかというと、より黒人文化という色合いが強いです。
ヒップホップは実はラップだけではなく、DJ、ダンス、グラフィティ、ラップの四つの要素を持つ文化で、これはアメリカの黒人の中で生まれたものです。
なので、文化を内包した音楽ジャンルでした。当然、白人のほとんどはこういった文化を背景に持たないので、白人のヒップホップ参入は難しくなります。

そしてラップのノリやタメ感などの問題からか、白人ラップスターは現在に至るまで非常に少ないです。
主な時代別のラップスターを羅列してみましょう。太字が白人です。

80年代…Grandmaster Flash、Run DMC、N.W.A.
90年代…Dr.Dre、Snoop Doggy Dogg、Notorious B.I.G.、2Pac、Nas、Jay-Z
00年代…Eminem、50Cent、Kanye West、Nelly、Lil Wayne、Rick Ross
10年代…Drake、Wiz Khalifa、Pitbull、Post Malone、Lil Pump、G-Eazy

紹介したのはあくまで一部ですが、とにかく白人が少ないのが分かると思います。ヒップホップは今でも黒人中心のシーンと言えます。

これがどういうことになるかというと、アメリカの黒人は基本ロックではなくヒップホップを聴くようになるということです。
加えて、前述の不良を経由して若者全体への波及が続くことで、若者+黒人が聴くようになります。
そして、ヒップホップが本格的にロックをチャート上で追い抜いた90年代当時に若者だった人たちは今や40,50代です。もう、ロックをメインで聴く層が60歳以上ぐらいしか残らなくなってしまったのです。


理由③:コラボのしやすさ

ヒップホップは圧倒的に他歌手とのコラボがしやすいです。

所謂フィーチャリングというんですが、ロックはあまりしません。というのも、歌でのコラボもしにくいこと、ギターなどで交流しても分かりにくいこと、そして何より元々バンドでやっている場合が圧倒的に多いからです。
というので、ロックの場合、一部楽器がゲストだったり、ライブで共演したりすることが多いです。

一方ラップは、まず色々なDJとコラボできるうえ、ラップ上でのコラボが容易です。例えば、1バース目はA、2バース目はB、みたいに分かれてラップする、など。
ロックでもありますが、大概バンド内で完結します(例:QueenのLet me live)。ヒップホップは、ロックと異なりソロアーティストのほうが圧倒的に多いので、ソロアーティスト同士でバースを分け合います。

このコラボのしやすさを利用し、コラボによってまず名前を売り、そのあとソロでも結果を残す、というのがラッパーが売れる典型的な路線となっています。

例をいくつかあげましょう。まずN.W.A.を通じてDr.Dreが有名になりますが、人気グループのメンバーのソロデビューってのはとても注目されるものです。そんなDr.Dreが注目のソロデビューをする際、さらに別ラッパーとコラボし、その別ラッパ-も有名にさせました。それがSnoop Doggy Doggです。

さらに自身のレーベルから、既に人気だった2Pacがデビュー、ここでも大ヒットしますが、その際にもきちんと自身と2Pacのコラボ曲を出し、名声を確立させます。

時は流れ、Dr.DreはEminemをプロデュースすることになります。そのデビューの際、Dr.DreとEminemは数々のフィーチャリングをしました。

そしてその後、50centがデビューする際、逆に既に有名だったEminemと沢山コラボします。(Wankstaは正式には、Eminemの制作した映画8mileのサントラに組み込まれる)


また、ヒップホップは他ジャンルの音楽のアーティストとのコラボも多いです。特に多いのが、サビはポップスで、それ以外はラップというコラボの仕方です。
というのも、ラップはビートさえあればできるので、サビの部分とジャンルが違くても違和感なくつなげることができるのです。

メリットとしては、当然ポップスの有名アーティストとコラボすることで自身の知名度を上げることができます。

また、既にラッパー側が有名で、ポップスのアーティストのほうの知名度を向上させるためにコラボが行われることがあります。RihannaのUmbrellaや、Charlie PuthのSee you againはその典型です。

もちろん互いに有名で、そのままコラボするパターンもかなり多いです。


まとめ

以上をまとめると、ロックがヒップホップに取って代わられた理由として、
①不良が憧れる音楽がロックからヒップホップに変わり、それが若者全体に波及したこと
②シーンの中心がすぐ白人に変わってしまったロックと異なり、ヒップホップはシーンの中心が未だに黒人で、黒人文化としてのアイデンティティを保持していること
③コラボが容易であること
があげられる、というのが僕の考えです。

続きは後編で。

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