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筋力トレーニングにおける「意識性」~マインドマッスルコネクション~

トレーニングでの意識性とは、いわゆるマインドマッスルコネクションのことである。マインドマッスルコネクションとは、その名の通り筋肉と脳の繋がりである。多くの研究から、このマインドマッスルコネクションは大きくExternal focus(外部的要因への集中)とInternal focus(内部的要因への集中)の二つに分類できるとされている。今回の記事では、2種類のマインドマッスルコネクションを説明し、研究を基にマインドマッスルコネクションがトレーニングに与える効果を説明する。最後に自身の目的に合わせてどちらのマインドマッスルコネクションを利用するべきか説明する。


Internal focusとExternal focusとは何か

Internal focusは、「内部的要因への集中」である。これは、人間の内面的要素に意識を集中することである。例えばトレーニングを行っている際に、特定の筋肉を使用することを意識する、収縮することを意識するといったことは、マインドマッスルコネクションの中でもInternal focusに分類される。

External focusは、「外部的要因への集中」である。これは、人間が外位面的要素に意識を集中することである。例えば、トレーニングを行っている際に、筋肉や骨ではなく、バーベルやダンベルに意識を集中することや、トレーニング中に監督やコーチが発した助言等は、マインドマッスルコネクションの中でもExternal focusに分類される。

[i]ちなみにExternal focusのうち外部からの口頭指導は、筋肉の活動をほとんど活性化させなかったという研究結果が報告されている。


External focusの効果

[ii]ウエイトリフティングにおける精神面での集中についての研究をまとめたシステマティックレビューでは、外部的要因に集中するほうが、内部的要因に集中するよりも、運動パフォーマンスを向上させる可能性が高いことが示唆されている。ここでの運動パフォーマンスとは、重い重りを効率的にあげることである。より重いものを上げる、速く挙上する等である。

この研究では、ウエイトリフターやパワーリフター等の競技スポーツを行う者は、内部的要因に集中するよりも外部的要因に集中することを推奨している。

この研究だけを見ると、Internal focusに効果がないように思える。次に、内部的要因に集中することで筋肉に生じる変化を調査した研究を見て、Internal focusの効果について考察する。


Internal focusについての研究、効果、及び特徴。

[iii]Internal focusについて調べた代表的な実験では、18人の被験者を、通常通りベンチプレスを行う群、大胸筋を使うように意識してベンチプレスを行う群、上腕三頭筋を使いように意識してベンチプレスを行う群に分けて、20%、40%、60%、80%1RMの重量でベンチプレスが行われた。

結果として、20%、40%、60%1RMでは、特定の筋肉に意識を集中した群では、特定の筋肉の活動が増加した。しかし、80%1RMでは、通常のベンチプレスを行った群と特定の筋肉を意識してベンチプレスを行った群との間で筋肉の活動に有意差は見られなかった。また特定の筋肉を意識したことで他の筋肉の活動が低下するという現象は見られなかった。例えば、大胸筋に活性率が高くなった代わりに上腕三頭筋の活性率が低くなったというようなことは起こらなかった。

この研究で強調したいことは、大胸筋、上腕三頭筋の意識のような内部的要因に集中することで、筋肉の活動が増加するという効果は生じるが、その効果は80%1RM付近の重量を使用する際には生じない可能性があることだ。

[iv]この研究では、80%1RMのベンチプレスにおいて、特定の支持を実践することを意識した群と通常のベンチプレスを行った群で筋肉の活動に有意差が生じなかった。これは上記の研究の結果を補強するものとなる。


研究を基にマインドマッスルコネクションを考える。

上記の研究から、マインドマッスルコネクションが筋力トレーニングにおいて効果的であることは間違いないだろう。マインドマッスルコネクションは、トレーニングの目的によって外部的要因を意識するか内部的要因に意識するかを変化させる必要がある。

外部的要因に集中することは、特定の筋肉に効かせるというよりは、重い重量を上げること、つまり筋力を上げることを目的とする際に有効であると考えられる。そしてこの際、使用重量は80%1RM以上が推奨される。80%1RMは比較的重い重量であり、重い重量では、特定の筋肉に集中するよりも重りを挙上することに集中すると良い。

内部的要因に集中することは、特定の筋肉へ効かせるため、筋肥大を目的とする際に有効であると考えられる。そしてその際、使用重量は60%1RM程度が推奨される。60%1RM以下は、比較的軽い重量であり、軽い重量では、特定の筋肉に集中する余力が生まれ、効かせる意識を持ちやすい。脳内で筋肉が収縮する想像をしながら行ってみよう。


まとめ

マインドマッスルコネクションには内部的要因に集中するInternal focusと外部的要因に集中するExternal focusの二つがあり、マインドマッスルコネクションが筋力トレーニングに効果的であることはほぼ間違いない。どちらのマインドマッスルコネクションを利用するかは、トレーニングの目的によって異なり、基本的には、使用重量は80%1RM以上であるかどうか、が大きな選択基準となると考えられる。


参考資料

[i] https://tinyurl.com/2ewm2jj2

[ii] https://tinyurl.com/2p8kzg7g

[iii] https://tinyurl.com/2eqqvj9h

[iv] https://tinyurl.com/2lh3cms7


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