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筋力トレーニングのための生理学~骨格筋の機能と構造~

はじめに

小腸や大腸、血管などの臓器は、平滑筋に分類され、これらの筋肉は意識の支配下に存在しないことから、不随意筋とも呼ばれる。

心筋は心臓のみにみられる筋肉である。心筋も、平滑筋と同様に、意識的に収縮されることができないという特徴を有する。このことから、心筋も不随意筋として分類される。心筋は、基本的に神経や内分泌系によって操作される。

骨格筋は、意識の支配下に存在する筋肉で、そのことから随意筋とも呼ばれる。その多くが骨格に付着し、骨格を動かすことから骨格筋と呼ばれる。骨格筋は骨格を形成する骨と共に筋骨格系を構成する。大胸筋、上腕三頭筋、三角筋前部、橈側手根屈筋等様々な筋肉が身体を組織している。


「cardiac muscle:心筋、skeletal muscle:骨格筋、smooth muscle:平滑筋」

運動を行うには、身体の動きが必要になる、そしてそれは骨格筋の動きによって達成される。運動というものは人間の動きであり、人間の動きは骨格筋の収縮によるものである。このことから、筋力トレーニングを行う上で骨格筋の構造、機能、生理学を理解することは重要である。今回は筋肉の中でも骨格筋に焦点を絞り詳述していく。

骨格筋の機能解剖


概要


筋肉を考えるとき、例えばバーベルカールを行うとき、我々は上腕二頭筋があたかも全体で、換言すれば1つの単位として運動しているように考える。これは自然なことであるが、実際には筋肉はもう少し複雑に運動している。


筋肉を解剖すると、最初に筋外膜(epimysium)という骨格筋全体を覆っている膜を切ることになる。次に、結合組織によって覆われている束のようなものを見つける。この筋肉の束を筋束(Fasciculus)といい、筋束を覆っている結合組織を筋内膜(perimysium)という。


筋内膜を切り、顕微鏡を使用すると、筋束を構成する筋繊維(muscle fibers)を見ることができ、それら一つ一つが筋細胞であることが分かる。筋内膜が筋繊維一つ一つを覆っており筋繊維は筋肉の端から端まで伸びていることが分かる。


骨格筋の基本構造。出典:Physiology of Sport and Exercise 5th edition p29


以上のような構造から、最も長い筋繊維は12センチにも及び、筋原線維の基本単位であるサルコメアは50万本ほど存在する。また筋繊維の数は筋肉によって数百本であったり数百万本であったりと異なる。


一つの筋肉細胞は筋繊維と呼ばれ、筋繊維は他の細胞と同様に、細胞膜や、ミトコンドリアやリソソームといった小器官を有している。他の細胞の多くは単一核であるが筋肉細胞は多核であるという特徴を持つ。

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