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予備疲労法は効果的なのか?研究論文をもとに考察する。
予備疲労法とは?
予備疲労法というのは、単関節種目であらかじめ対象筋を刺激してからメインの複合関節種目を行うトレーニング方法である。これはメイン種目で対象筋への効きが感じられないときに使用されることが多い。例えば、ベンチプレスで胸に効きが感じられないときに、あらかじめペックフライで大胸筋を刺激して行ったり、レッグプレスを行う前にレッグエクステンションを行ったりする。予備疲労法を行うことで対象筋を鍛えやすくなるといわれるが、実際はどうだろうか。
予備疲労法について調査した研究
[i]大胸筋トレーニングにおいて、ペックフライののちにベンチプレスを行う群とベンチプレスを行った後にペックフライを行う群に分け、大胸筋と上腕三頭筋と三角筋前部の筋活動を、筋電図を用いて比較した実験では、両者ともペックフライとベンチプレスの総レップ数、筋肉の運動量に変化はなかったが、予備疲労群の方が、ベンチプレスの際の上腕三頭筋の活動が高く、かえって大胸筋の活動はベンチプレスの後にペックフライを行った群よりも低かった。
[ii]その他の研究でも、予備疲労法は補助筋の活動を増加させ主動筋の活動を低下させる可能性が示唆されている。
このことから、予備疲労法は、複合関節種目での補助筋群の活動を増加させてしまい、予備疲労法の目的である対象筋の活動を増加させるということは達成できないように思える。
従前の研究の疑問点と、現実に近い研究
上記の研究の疑問点として、事前に行った単関節種目の使用重量が重い点があげられる。上記の研究はペックフライのRMが10RMであった。現実に予備疲労法を行う際は、20回以上できるような軽い重量で単関節種目を行うことが多いはずだ。
実験と現実の差を解消する研究がある。[iii]この研究では、健康な9人の被験者を対象に、30%1RMでレッグエクステンションを15回行った後に30%1RMか60%1RMでレッグプレスを15回行う群と、60%1RMのレッグエクステンションを15回行った後に60%1RMでレッグプレスを行う群と、60%のレッグプレスを15回行う群(コントロール群)に分けて、外側広筋の活動の違いを調査した。
結果として、レッグプレスの前に30%1RMの重量でレッグエクステンションを行う群が、他の群よりも多くの運動単位を動員した。このことから、複合関節種目の前に軽い重量で、追い込まない程度の単関節種目を行うことで、複合関節種目で多くの運動単位が動員される可能性が示唆される。従来のような予備疲労法を行う際には、事前に行う単関節種目の重量は低重量であることが望ましいと思われる。
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単関節種目であらかじめ対象筋を刺激してからメインの複合関節種目を行うトレーニングである予備疲労法は、予備疲労を行う単関節種目で対象筋を刺激しすぎるとかえって対象筋への効きを減少させる可能性が高い。低重量の単関節種目で、軽く刺激する程度の運動を先に動員することで、対象筋の運動単位を増加させ予備疲労法の目的を達成できる可能性が高い。
予備疲労法についての個人的見解
予備疲労法について調査した研究と個人的経験から、従来の予備疲労法の目的である、対象筋の効きを良くするということを達成するためには、事前に補助筋を鍛えることが有効ではないかと考える。例えばレッグプレスやスクワットで大腿四頭筋の効きを増やしたい際は、事前にレッグエクステンションではなくレッグカール、ハムフレクサー、アダクション等で大殿筋やハムストリング、内転筋群を疲労させれば、プレス系動作の際には補助筋は疲労し対象筋の活動が増加すると思われる。
しかし上記の予備疲労法も従来通りの予備疲労法も、①使用重量が落ち、コンパウンド種目の利点である「高重量での筋肉への刺激」が享受できなくなる、②疲労によりかえって対象筋群が狙えない、というデメリットがある。レッグエクステンションの後のレッグプレスでは、本当に大腿四頭筋が狙えているだろうか、ハムストリングや大殿筋等で重量を挙げる状態を作っているだけではないか、そもそも大腿四頭筋を狙うなら最初からレッグプレスを重い重量で行えばよいのではと思ってしまう。
最後に
結論として、対象筋の効きを増加させる際に、軽く単関節種目で対象筋を刺激することは効果的だが、補助筋や対象筋を過度に刺激し疲労させることは、メインの複合関節種目の使用重量を低下させ、また補助筋の活動を増加させるため、基本的には推奨されない。やはり複合関節種目から単関節種目という流れが基本的に効率的といえるだろう。
参考資料
[i] https://tinyurl.com/y4egoaj7
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