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インターネット実名制は誹謗中傷を防げるのか

 インターネット上の誹謗中傷に対してどのような対策ができるか。このレポートでは「事前に防ぐ」という観点でその方法を考えていく。

 これまでに既に取られた対策としては「インターネット掲示板の実名化」だ。2004年から韓国では一部のサイトにおいて、インターネット上における匿名性の制限(インターネット実名制政策)を導入し、2011年にはRandi Zuckerberg氏も実名制について発言した。これは「誹謗中傷は匿名性の傘の中において行われる」という考えに基づいており、誹謗中傷を事前に防ぐための抑止的な対策としてはごく一般的なアイデアだと言えるだろう。

 だがこの方法は誹謗中傷を防ぐ有効打とはならなかった。韓国での事例においては、規制が行われる前後のインターネット上の書き込みを分析した結果、悪意のある書き込みは1.9%程度しか減少しなかったのに対し、悪意のあるなしに関わらずインターネット上の書き込みそのものは約半分にまで激減したという。韓国における実名制の導入はインターネット上の書き込み数の現象、つまりは議論の委縮を招く結果となるにも関わらず、本来の目的である誹謗中傷を防ぐ効果を果たせなかったと言えるだろう。

また、この方法は「実名でなければ書き込めない」・「実名でなければ削除する」という行為をプラットフォームやユーザーに強制するにおいて、表現の自由を侵害する可能性がある。この規制は内容に左右されずに書き込みを制限する表現内容には中立な規制であるが、私はこれでは規制の内容が広範過ぎると考える。

 誹謗中傷・悪意のある書き込みを防ぐという目的を果たすために必要である規制とは、「悪意のある書き込みをしたものを、裁判所が処罰する」という規制のはずだろう。悪意や有害性を持たない書き込みが制度の都合で制限されることは、前述の通り表現の自由を侵害している可能性がある。

 この点においては、プロバイダ責任制限法によって発信者情報を開示する方法で裁判手続きを行い、民事もしくは刑事裁判による判断を経て処罰がなされるという現在の我が国の誹謗中傷対策は、表現の内容による判断が行われ、悪意のないユーザーの書き込みが不利益を受けないという意味で評価されるべき方法だと言える。

 対策として、実名制と発信者情報開示の2つを挙げた。今後も、誹謗中傷以外の表現活動を規制しない方法で対策がなされるべきである。

※この文章は大学の授業で課題として出された期末レポートの一部を改変し投稿したものです。

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