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JDLAのディープラーニング検定を受験してみた

先日行われたJDLA Deep Learning for GENERAL 2018#1という認定試験を受けてみました。JDLAとは一般社団法人日本ディープラーニング協会のことで、AIで著名な東大の松尾豊准教授らが中心となり、「ディープラーニング技術を日本の産業競争力につなげていこうという意図のもとに設立された」(協会HPより)とのことです。

(出典:JDLAサイト)

受けてみた理由

ニュースなどでAIという言葉を見ない日はなく、そろそろ勉強しなきゃなあと思っていたのですが、何から手をつけようか迷っていました。検索していたところ、たまたま見つけたJDLAの検定試験のシラバスを参考に勉強しつつ、せっかくなので、チェックとして試験を受けてみました。

受けてみた感想

for GENERALの名の通り、エンジニア以外の人も対象にしています。AIに関する知識を網羅的に幅広く問われるので、私のようにひとまずこの分野の知識のインデックスを頭の中に作りたい、という人にはぴったりです。ただ、穴埋め式の選択問題なので、問われるのは表層的な知識であり、これに合格したとしてもAIやディープラーニングの実装ができる証明にはなりません。そういう方にはエンジニア向けのE検定が用意されています。また、ディープラーニング検定という名前ですが、実際はその他の機械学習手法についても多く出題されるので、人工知能検定とかAI検定という方が実体に近いです。

どんな勉強をするのか

WEBサイトに推薦図書として3冊が示されているので、まずはそれらを読みます。「人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの」は松尾氏自らが書いた一般書で、 AI開発の歴史などについてここからほぼそのまま出題されますので必読です。

「AI白書 2017 」は文字通り白書で、技術の発展とその応用、産業応用、世界各国の状況、法規制・倫理など網羅されています。2、3回通読すればだいたい頭に入ります。

「深層学習 機械学習プロフェッショナルシリーズ」 は技術書で、ディープラーニングの技術について手際よく網羅されています。

ただ、全く知識がない状態でこの「深層学習」を読んでも意味がわからないと思います。そこで、推薦図書以外に読むと良い本として、「統計学が最強の学問である 数学編」と「ゼロから作るDeep Learning」をオススメしたいと思います。「統計学が最強〜」は有名なシリーズですが、この「数学編」は深層学習の理解に必要な統計、微分、行列などの数学にフォーカスした内容なので、特に文系の方は読んでおくと後の理解が早まります。

「ゼロから作る〜」は実際にニューラルネットワークをpythonで実装してみようという本で、文字通り作りながら勉強できます。確率的勾配降下法や誤差逆伝播についてとても説明がわかりやすいです。事前に「統計学が最強〜」を読んでおくと、シグモイド関数とか尤度関数とかに馴染みができるのでさらにわかりやすくなります。

pythonを書かずに説明だけ読んでも良いのですが、私の場合、試験に受かるためというより、動作原理をざっくり知りたいという動機だったので、実装もやってみて結果的にとてもためになりました。

これらを終えてから、青い「深層学習」の本を読んでみると、なんとなくは分かるようになっているので、RNNとかオートエンコーダー、ボルツマンマシンなど、これまで出てきてない技術について概要を知ることができます。

実際の出題傾向

基本的に、上記の推薦図書の内容を中心に満遍なく出題されます。220問以上の選択式問題が出るので、2時間の制限時間で1問あたり30秒ぐらい。オンライン受験なので、ググったり参考図書を見たりできますが、全く知らない問題の答えを検索で見つけるには時間が足りません。一度頭に入れておいた知識を検索で思い出すぐらいは30秒で可能なので、よい分量感と難易度設定といえます。

実は推薦図書以外の範囲もけっこう出題されていました。特にディープラーニング以外の機械学習の手法周り(クラスタリング、主成分分析、サポートベクターマシン、k-means法)、情報検索の有効性(再現率、適合率、F値)、強化学習(探索、状態、報酬、DQN)、物体検出(R-CNN、SSD、セグメンテーション)、最近の進展(カプセルネットワーク)などが厚めに出されていました。この辺り、受験される方は他の参考書やウェブサイトなどでカバーしておいた方がいいでしょう。

結局のところDL検定はオススメ?

試験から4日後にメールで合格通知が届きました。約2000人が受験して、合格率は6割弱だった模様です。年内に2回目の実施があるようです。

結局、受けた方が良いのか?という点ですが、目的によると思います。いまのところ、知名度がある試験でもないので、シグナル効果みたいなのは期待できないでしょう。エンジニア向けのE検定ならともかく、G検定は転職などでも考慮されるのかどうか不明です。私のように一般教養的な意味で勉強したことのチェックをしたい、という人にはオススメです。

協会のHPにはG検定合格者について「ディープラーニングに関する知識を有し、事業活用する人材」と定義されていますが、「知識を有し」はともかく、「事業活用」できるかはその後の精進次第という感じがします。もちろん全く知識のない人に比べればかなり詳しい人、であることは間違いないので、エンジニアと会話する際に行き違いは減るでしょう。

「事業活用」できるようになるにはまずやってみることが大事なので、業務で豊富なデータを活用できる立場の人が、本格的に実践を始める際のきっかけとしては役に立つ試験かもしれません。

<追記>

その後、G検定問題集が出たようです。これはいいですね!