おくち

ポケモンソード&シールドのスゴイ進化にポケモン10年ぶりに遊んで感動した話

最近ひたすらポケットモンスターソード(以下、ソード)を遊んでるんですが、とんでもなく面白い。ポケモンというコンテンツのもつパワーが最大限まで高まるデザインがなされていて、プレイヤーが最高に気持ちよく「ポケモン体験」できるようになってます。

キャッチコピーの「ポケモン、どまんなか」はマジでガチ。今作の、ポケモンというゲームの面白さの本質を煮詰めきった仕上がりにドンピシャな言葉です。天才の仕業だと思います。だからその感動を書いておきたくなりました。そんなnoteです。

念の為のおことわりですが、僕がソードの前に最後にプレイしたポケモンは『ポケットモンスター金』のリメイク『ハートゴールド』です(実に10年前…!?)。下記のポイントたちは前作までに既に実装されていたものかもしれません。でも感動はファクトだから気にせず書きます。

めっちゃもらいやすい経験値

冒険を開始してまず驚いたのが、ポケモンバトル後の経験値のもらいやすさです。

なんと、手持ちのポケモン全員に経験値が入ります。戦闘に出ていると出ていないポケモンと比べて多少多くもらえますが、極端な差ではありません。また、レベルが低いポケモンは戦闘に出ていようがいまいが、多めにもらえます。

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↑相手ポケモンと戦ったレベル68のポケモンより、戦っていないレベル24のポケモンのほうが多く経験値をもらっています。

すると何が起こるのか。手持ち内でのレベル格差が起こりにくくなります。

僕が知っているポケモンでは、手持ちのレベルの低いポケモンを育成したかったら「手持ちの先頭にする→戦闘→レベルの高いポケモンと交代→勝利」をする必要がありました。あるいは「がくしゅうそうち」を育てたいポケモンに持たせる。

しかしこの方法はあくまで経験値の分配であり、手間がかかる割に育成効率は悪いです。またがくしゅうそうちも使えるのはせいぜい一、二体に対してであり、今度はそれ以外のポケモンが育ちにくくなります。結構面倒ですし、ストレスでした。

だから多くのプレイヤーの冒険スタイルは、たまたまレベルが高くなったポケモンをメインにすえ、相手ポケモンをひたすらレベル差で蹂躙していく形になっていたんじゃないでしょうか。

しかしソードでは何もしなくても手持ちにさえ入れておけば全てのポケモンに勝手にそれなりな量の経験値が入ります。手持ちのポケモンはみな、多少の凸凹はあれど冒険に適したレベル感に育っていくのです。

これはポケモンと冒険する楽しさをグッと増す改善だと思います。プレイヤーは手持ちポケモンが難なく育つと学習できますから、メンバー入れ替えもレベルを気にせず気軽に行えるのです。

この改善からは、プレイヤーに新しいポケモンとの冒険を思う存分楽しんでほしいという制作の意図を感じました。新しい場所で新しいポケモンと出会って、仲間にしたいと思ったらすぐに一緒に戦えるようになりますから。

おかげで僕はまんまとメンバーを入れ替えまくって、過去作よりもたくさんのポケモンと冒険の思い出ができてしまいました。

あらゆるポケモンがいい感じのレベルで手に入るワイルドエリア

今作の目玉であり、プレイヤーが何度も足を運ぶことになるのがワイルドエリアです。

その名の通りワイルドな設定のエリアで、簡単に言うとあらゆるポケモンがいい感じのレベルで手に入る箱庭です。草むらや水辺、山岳地帯といったエリアが混じり合っています。

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↑複合的な地形。突然、雪が降ったり砂嵐が吹いたりもして出現するポケモンがころころ変わる。

ワイルドエリアには冒険が始まるとすぐに入れるようになるのですが、冒険の段階に応じて手持ちポケモンと同等かそれ以上のレベルのいろんな種類のポケモンがウロウロしています。つまり即戦力が即手に入るということ。タイプも豊富で、その時ほしいポケモンがガンガン手に入ります。

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↑殿堂入り後なので、野生のポケモンのレベルが60に

すると何が起こるのか。プレイヤーの手持ちメンバーが多様化します。

これまでの作品では冒険の舞台となる地方のなかでも、なんとなく炎のポケモンが多いエリア、水のポケモンが多いエリアが分かれていたと思います(もちろん今作でもそうしたエリア分けは別であります)。

ワイルドエリアはいわばそれがギュッと1箇所にまとまっている感じなので、プレイヤーはストレスなく多種多様なポケモンと出会い、捕まえられるのです。

しかも本作では先に触れたように手持ちに入れて少し冒険すればどんどんレベルが上がりますから、目的に応じてワイルドエリアで手持ちポケモンを入れ替えていくというプレイスタイルになるプレイヤーは多くなっていると思います。

多様なポケモンがそれに応じた場所に住んでいる、という世界観に浸るのもそれはそれで素晴らしいものですが、今作ではワイルドエリアの登場によって「楽しい冒険」にフォーカスも可能なのです。

ちなみにワイルドエリアに限りませんが、ソード&シールドでは『モンスターハンター』みたいな感じでフィールドに立体造形されたポケモンがウロウロしています。

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↑追いかけてくるポケモン。ぶつかるとバトルが始まる。

僕が知っていたポケモンでは、草むらをうろついていると急に画面が切り替わってポケモンバトル画面になったものでしたが、本作ではプレイヤーがウロウロしているポケモンにぶつかったらバトルが始まります。ポケモンごとにプレイヤーに向かってくるヤツや逃げるヤツ、テレポートしてるヤツなどいろいろいて、それも見ていてたのしいです。

ひでんわざの廃止を始めとする、わざの規制緩和

ポケモンの世界を旅するにはこれまで、なみのりやそらをとぶなどの「ひでんわざ」が欠かせませんでした。

海の上を移動したいなら、手持ちになみのりを覚えたポケモンがいる必要があり、街から街へ移動したいならそらをとぶポケモンが必要だったのです。

しかし今作ではなみのりは自転車に吸収され(水陸両用車になった)、そらをとぶはタクシーになりました(マップを見ると移動できる座標が同時に表示され、ワープできる)。手持ちがどんなポケモンでも関係ありません。

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↑マップを開いて行きたい街を指定すると移動できる「そらとぶタクシー」

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↑自転車に乗ったまま水上に移動すると、水陸両用車に変形してそのまま進める。

かつては必要なポケモンが手持ちにいない場合、いちいちポケモンセンターに戻り、パソコン通信で当該のわざを覚えているポケモンを引き出さなければなりませんでした。比較すると冒険のテンポは圧倒的に良くなってます。

しかもわざの規制緩和はそれにとどまらず、過去の作品では特定の街にいかないと出会えなかった、「わざ思い出しおやじ」と「わざ忘れおやじ」が、すべての街のポケモンセンターに常駐するようになりました。正確にはおやじは1人になり、「姓名判断&わざ忘れ&わざ思い出しおやじ」という一人三役おやじです。

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↑すべてのポケモンセンターに彼がいる。ちなみに何気ないけど、選択をキャンセルしたあとのフローがすごく快適。

おかげで、たとえばレベルアップで「あたらしいわざをおぼえたい…」となったときに、とりあえず既存の技を忘れさせる抵抗が減りました。

4つしか覚えられないポケモンのわざ、どれを選んで覚えさせる?という問いはポケモンの悩ましくも楽しいジレンマですが、実は覚えさせること自体がこれまでは結構な大変な工数でした。わざを頑張って覚えさせてみたけれど、実際戦ってみたら思いのほかワークしないというケースもあったでしょう。

それが今作では解消され、とりあえず「新しい技を試してみよう」というプレイングが可能になりました。しかも、一度覚えた技はわざマシンなどでの習得だとしても忘れさせたあとでまた覚え直させることができるのです。

新たに登場した技を目一杯試して、独自のポケモンバトルを展開してほしいという制作側の思いが見える気がします。

タイプの相性を誰でもわかって戦える戦闘画面

しばらくポケモンをプレイしていなかった僕が最も戸惑ったのは、新たなタイプ「フェアリー」タイプの登場でした。

炎は草に強く、草は水に強く、水は炎に強い…といったタイプの相性はポケモンバトルの要です。それを理解しないでバトルに勝つのは不可能といえます。

そこにもう一つのタイプが加わると、結構な混乱が発生するのです。しかももともとノーマルタイプだったポケモンがフェアリータイプになっていたりするもんですから、さらに戸惑います。ピクシー!おまえ、ドラゴン技当たらんのかい!

しかしながら、そんなプレイヤーにも優しいのが今作。なんと戦闘画面において、自分のポケモンの技が相手ポケモンに効果的か否かが、技ごとに表示されるのです。

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↑タイプ別に色分けされる & 技名の下に効くかどうかが出る。

よって正直、チャンピオンを倒したいまでもフェアリータイプがどのタイプに対して効果的なのかイマイチよくわかってないのですが、戦闘がなんとかなります。

しかも素敵なのが、本当に初めて出会ったポケモン相手ではそれが表示されないところ。プレイヤーの分身であるポケモントレーナーが、新しいポケモンと出会うたびに成長していっている感覚が得られて、もっと冒険しよう!という気分になります。

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↑初めて出会ったポケモン相手ではタイプの相性がわからない。

つまり、ポケモン体験の高品質なブラッシュアップ

たぶんまだまだ気付いていない、あるいは書き漏れている改善がめちゃくちゃなされているであろう本作、ポケットモンスター ソード&シールドですが、どんな改善も、制作側がプレイヤーにしてほしいポケモン体験の定義が、相当な練度でなされた結果によるものだと思います。

過去作からの線的な改良であれば、メニュー表示を早くするとかひでんわざをもっと気軽に忘れられるようにする程度のアイデアに留まると思います。しかし今作では楽しいポケモン体験に不要・余分な要素をバッサリと切り、新しいシステムによって補完・補強する方針が取られています。

多くのファンからの残念がる声を受けながらも過去作から登場しないポケモン(2020/02追記:Pokemon HOME のリリースに伴い、過去作からポケモンを連れてこれるようになりましたね)がいるのも、その一部かと思います。

いわばマジック・ザ・ギャザリングにおけるスタンダード・フォーマットみたいなもんじゃないでしょうか。プレイヤーに最新のポケモンで、最高の体験をしてほしいというメッセージです。そのための、最高の体験とは何かという議論は相当されたことでしょう。上記ではぜんぜん触れませんでしたが、主人公がチャンピオンに至るまでのストーリーも、プレイしながら思わず叫んでしまうほどいいものです。

ポケモン、どまんなか」に至るために、ポケモンは何を捨て、どのように変わったのか。単なるスペック的なブラッシュアップではない、本質的なプロの仕事がここにはあります。ポケットモンスター ソード&シールドは、僕のようなしばらくポケモンを遊んでいなかった大人こそ遊び、様々な角度から感動できる作品です。


ナイスプレー!