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白白明け、朱の鳥居

明け方の京都は肌寒かった。

参道に並ぶ店も、ぴしゃりと閉ざされていた。
陽も昇らぬうちに本殿を抜ける。

人の気配は、ない。

已己巳己と並ぶ朱色の千本鳥居は、天高くそびえる木に囲まれている。
その木々の陰で、より一層、暗い。
時折、チチチと鳴く鳥の声を聞き、うねうねと続く道をひた歩く。
歩けば歩くほど、山の奥へと招かれるようだ。

誰に、招かれるというのだ。

不意に、がさり、と音がして振り返る。

コン。

狐が鳴いたか。

おや。

ぐるり。
前を向いても、後ろを向いても、遠く見える鳥居の出口は暗い。
はて、ここで進むは北か、南か、東か、西か。はたまた、天か、地か。
前後に伸びる朱色の道を交互に見る。

どこへ向かえば。
他に、生きものはいないのか。

すう、と息を吸い込む。凍てついた空気が肺に充満した。
天を仰ぐと、瑠璃色の空が広がっていた。
ああ、陽が昇る。

かさり、と音が鳴り目を向ける。

柱の陰から出てきた黒猫が、みゃあ、と鳴いた。





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