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きみのおめめ 紺色の制服 #25

子ども用のハンガーに、5歳の娘の制服をかけている。先々週まで夏用の制服だったのを、10月に入り衣替えした。

娘が久しぶりに紺色の制服へ袖を通すと、「大きくなるから、これくらいを買ったほうがいい」と入園前にアドバイスをいただいた保育園の先生が正しかったと実感した。
だんだんぴったりになってきたね、と肩と裾の位置を整えながら言う。
「娘ちゃん、ほいくえんで3番目に背が高いからね」
と声に嬉しさをにじませながら、つま先立ちになり少しだけ跳ねた。

入園時には袖を折って着ていたけれど、1年半経った今は折らずとも手がのぞく。
毎月ある保育園の身体測定でも身長は毎月伸びているのだから、1年前の娘は今より小さいし、1年後の娘はきっと今より大きいのだと改めて思わせる。
それがとても幸せなことだと知っているのに、どうしてもすこしだけ寂しい。

針だからじっとねと声をかけ、紺色の制服に名札をつける。
プ、と音を立てて厚い生地へ銀色の針が刺さる。生地を掴んだ針がもう一度顔を出し、同じ音が軽く鳴る。
針の先端を見ていた娘が、ふっと息を吐き私の親指にかかった。
よし、OK、行こうか。
名札にポン、と触れた後、両手で娘の頬をつつむ。娘はくすぐったそうに身をよじる。
玄関のドアを開けると、先月よりも冷えた外気が部屋の中に流れ込む。
冷たいほうが、空気が澄んだように感じるのはなんでだろう。
そう思いながら、娘が玄関に置いたお気に入りのぬいぐるみへ「せーの、いってきまーす」とふたりで手を振った。

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