野鳥を押収するつもりが、イエス時代の墓地を…
見出しを見ただけでは「・・・?」かと思いますが、イスラエルならではのニュースです。
ゴシキヒワの捕獲・密売を発見
今日(12月16日)未明、オリーブ山の南にある東エルサレムの地区で、国境警備隊があるアラブ人住民の家を家宅捜索しました。希少野生動物に分類されているゴシキヒワ(スズメ目)を、捕獲・密売しているという情報が入ったからです。
ゴシキヒワ(写真上)は姿形がよく、住んだ美しい声でさえずることから、歴史的にも愛玩鳥として飼われてきており、イスラエルでは野生のゴシキヒワが生息しています。しかしペットとしての需要があることもあり乱獲され、現在イスラエルでは『保護種』に指定され、捕獲や飼育、販売が禁止されています。
このアラブ住民宅からは26羽のゴシキヒワが発見・押収され、取り調べからは「1羽約150シェケル(6000円)で売っていた」というのが、分かっています。
野鳥に関する家宅捜索からの、副産物ー
とここまでであれば普通のニュースなのですが、本題はここからです。
家宅捜索中に国境警備隊の兵士たちは、被疑者の自宅の中に穴の開いた岩の壁を発見したのです。そしてその穴の奥に入って見ると、こんなのを発見しました。
天井がアーチ状となっている、低い四角形の空間です。
そして正面と左右には、穴が開いています。これはイエスも生きた1世紀のイスラエルでは最も一般的だった、ユダヤ人墓地です。
1つ1つの穴は1.5mから2mほどの奥行があり、人を横たえることが出来るスペースになっています。
イエス時代の埋葬パターン
ヘロデ大王の時代(紀元前1世紀末)以降、ユダヤ人の間では二段階の埋葬法が広がって行きました。
第1段階
まずはこのようなほら穴の中に人がひとり横になれるほどの、カプセルホテルの『カプセル』のようなスペースに、個人を横たえて石でふたをします。
写真の正面には2つのカプセルがあり、その入り口は平たいアーチ状になっているのですが、その手前は長方形になっています。そしてその2つのカプセルの手前には、長方形の石板が横たわっています。この石板は、埋葬カプセルのふただったのです。
(新約聖書には墓に石のふたがしてあった、との記述も)
第2・最終段階=埋葬
数か月から1年ほどすると肉や体内の組織が腐食して抜け落ち、骨格だけが残ります(白骨化)。そんな状態になるとカプセル内に残された骨をすべて集め、骨壺・長方形の箱に入れて墓のなかに保存するのです。
今回の発見
そして、このイエス時代(1世紀)のユダヤ人の墓からは、複数の骨壺として使用された、長方形の箱が発見されました。
箱の中からは人骨は見つからなかったのですが、国境警備隊からの報告を受けて駆けつけた、イスラエル考古学庁の職員は洞窟内の広い空間から人骨を発見。
散らばった人骨の数が箱の数よりもはるかに多いことから、「おそらく長期的に密売を行っていたと考えられる」と、取材に対して答えていました。
古代においてイスラエル民族やそのすえとなるユダヤ人は、町の中で埋葬することはしませんでした。聖書(特にレビ記・民数記)には、死んだ動物や人(遺体)と接触すると汚れるとの規定があります。そこからも死者の町と生者の町は、交わることがありませんでした。
エルサレムでも東にあるオリーブ山をはじめとする、旧市街の周辺部には旧約聖書や新約聖書を含む第2神殿時代など、各時代のユダヤ人墓地が多く見つかっており、その墓地の分布からも「それぞれの時代のエルサレムはどれぐらいの大きさで、どこまでがエルサレムの街だったのか」が分かったりもします。
今回見つかったこのユダヤ人墓地は、ラス・アル=アムードと呼ばれるオリーブ山のすぐ南。
オリーブ山には中世~現代のユダヤ人墓地だけでなく、旧約聖書時代からイエス時代にかけての、イスラエル民族・ユダヤ人の墓が多数見つかっています。
今回の発表について考古学庁は、
とのコメントを出していました。
また考古学的価値のある文化財の盗掘・密売に関しては、以下のように答えていました。
「家の中からイエス時代の遺跡が出土」というのは、エルサレムならではのニュースですね。
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