見出し画像

(アカウンティング⑭)会社を評価するとは ~分析・検証の問題と課題

会計の限界会計に求められるものでもふれたが、分析・検証には問題がある。それ以外にも、ふれていない問題がいくつかある。これらの問題を纏めて整理することで、マネジメント2.0の課題を探っていきたい。

【 問題① 】
 会計分析・検証からは、未来を正しく予測できない

会計の限界でもふれたが、期首から期末の単調な一直線を変化と捉えて、分析・検証をしている。しかし実際は、期首から期末までの一年間に、様々な変化がある。月次でみるだけでも、いろいろな変化が起こっていることがわかる。
変化は一直線ではない。変化をより厳密に分析するには、微分方程式など数学を駆使する必要がある。しかし、あまりにも数学的な専門性が必要となり、一般的な会社では難しい。また予測の精度も高まってはいるが、完全には予測できない。

このような不十分な分析・検証からは、近い未来すら正しく予測することはできない。

< 課題① >
 何のために未来を予測するのか。予測から何を得ようとしているのか。

【 問題② 】
 会社が発表する数値は、信用できない

経営数値(事実)には客観性があるから、第三者も判断できると思われている。しかし実は、公表する経営数値には主観性(思い・思惑)が入っていて、正しくは判断できない。主観性はみえないから、主観性があることに知らず、気づかない。みせたい情報だけをみせて、みせたくない情報はみせていない。
また図表にも、みせ方を工夫して作り手の「こうみてほしい」「ここに気づいてほしい」という、意図が大きく働いている。さらに財務諸表から作成された図表をみると、「なぜこの数値をみせないのか」「なぜここを強調するのか」「因果関係は本当にあるのか」と主張の強引さから違和感を覚えることがよくある。違和感は膨みだすと、会社への信用がどんどん薄れていく。

そう実は、会計情報から経営を読んでいるようで、読まされている。読まされている会計情報だけをみて信用することには、大きなリスクが潜んでいる。20世紀末からの多くの粉飾や不正に金融危機などを振り返ると、信用できないことは明らかだ。

< 課題② >
 何をもって信用できるのか。何を信じればいいのか。

【 問題③ 】
 検証からは、問題の本質はわからない

検証結果から原因を探っていくが、探り出した原因が正しいかどうかはわからない。因果関係があるようにみえて、実は相関関係ということはよくある。また相関関係を因果関係のようにみせていることもある。これらのことから、分析は原因を憶測しているにすぎないことがわかる。
また、ある事実の原因が別の事実では原因として矛盾している、根拠がないこともある。原因を全て考え出したとは言えず、原因に漏れがあるかもしれない。すべて検証している訳でもなく、問題の大きさなどから代表的で表面的な検証をしている。検証しきれていない原因の中に、問題の本質が隠れていることは往々にしてよくある。

このような検証は表面的にしかわからず、問題の本質まで深く掘り下げきれていない。

< 課題③ >
 問題の本質には、どのようにすれば辿り着けるか。

【 問題④ 】
 数字(結果)が生まれた背景を、読み解いていない

会計に求めるものでもふれたが、会計で本当に求められるのは、事実(経営数値)ではなく事実に至るまでの文脈である背景。しかし、事実の背景にはほとんど関心を示さない。
事実は行動の結果で、本当に探らなければならないのは、数字の背後にある人の行動。「どう行動したのか」「なぜその行動をしたのか」「その行動は正しい選択だったのか」などの行動に焦点をあてての検証が、本当は必要。

検証が不十分、いや検証をしていないので、行動が引き起こす様々な問題が起こっていく。

< 課題④ >
 どうすれば、数字の背後にある行動をみせられるか。

【 問題⑤ 】
 経営指標が欲望を高め、人や組織を疲弊させた

経営指標は数値化されていて、目に見えてわかる。目に見えるから満足をし、不満を感じる。経営目標を達成できれば、満足する。しかし、満足してそれで終わりには決してならない。
満足したと同時に、「もっと頑張ろう」「もっと満足したい」という思いが膨らみ、更なる目標を掲げてしまう。前年や他社などと比べて、より高い結果を求めていく。終わりなき、目標設定が始まる。
これは一種の欲望であり、一度欲望の火がつくと簡単には消すことはできない。「もう十分」とは、決して思わない。何よりも欲望には限りがない。ひたすら欲望を、より高い結果を追い求めてしまう。

その結果、人や組織は疲弊し、閉塞感で覆われた会社になっていく。

< 課題⑤ >
 人や組織を疲弊させないマネジメントとは。

【 問題⑥ 】
 経営指標が、会社から個性を奪う

会社を起こした時には、その会社特有の個性がある。しかし時が経つと、個性が他社と比べた特徴(A社と比べて~、B業界の中では~)に変わってしまう。
他社と比較するから同じ経営指標を、会社を測るモノサシとして使う。決められたモノサシの目盛で、会社を評価し合う。経営指標は比較してわかりやすい半面、似たような数値にまとまり同質化してしまう。特徴的な数値は会社の特徴として明らかになるが、多くは同じ基準値を目指す経営をする。
結果、創業時にあった会社だけにあった個性が平準化され、特徴のない会社になる。尖った個性は削りとられ、小さくまとまったカタチになる。特徴のない会社に変わると会社から魅力が薄れ、個性のあった人たちは去っていく。

会社に残る人たちは同質化した人たちで、結果会社から多様性が奪われる。会社だけでなく、社会からも多様性が奪われていく。

< 課題⑥ >
 個性を失わずに個性を活かすマネジメントとは。

問題と課題を一覧表にまとめると、次のようになる。

「数字は、必ずしも正しくはない」「今までの会計分析では、すべてはわからない」「会社を数字で測ることで、会社が大切にすべきものを奪う」という問題が、マネジメント1.0にはある。これらの問題から、いくつかの課題がみえてきた。

これらの課題からみえてきたのは、“評価のあり方”

評価方法ばかり考えるが、そもそも(なぜ・何を・何のためになど)の評価について深く考えていなかった。次の二つの課題に答えながら、マネジメント2.0の評価を考えていく。

● 目標に対して評価することが正しいのか
● 評価は何に対してするのか

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?