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(アカウンティング③)アカウンティング ~会計の限界

デザインの章の「(デザイン②)なぜ、会計にデザインが必要なのか ~会計の限界」でも会計の限界についてふれたことを、改めてここでもふれていきたい。内容はほぼ同じ、会計的な視点から一部文章などを加えて補足していきたい。

会計からは、会社を語ることができないだけでなく、会社の未来を予測することも決してできない。こう言い切ると、時間と労力を大きく費やして作成する収支計画や予算計画などの計画作業に、意味がないように聞こえるかもしれない。
意味がない訳ではない、経営を知るという点では意味はある。ただ、予測ができないということ。計画資料を作ることで、「未来を予測している」と思い込んでいるにすぎない、少し厳しい表現ではあるが。計画資料を作成する目的は何かが、大きく問われてくる。

実際、経営計画通りの経営が進んでいくことはほぼない。計画に基づこうとしているが、多くは上方修正や下方修正をしている。また、決算発表で計画との差異分析をしている。これが会社の未来予測の現実。このことは実際、実務をしている人が一番わかっているはずだ。
予算計画をたてても、収支が思わしくなければ(収支計画通りの売上がない)、経費の支出は止められる。それは、止めなければ更に赤字になるから。期が始まってすぐに、経費が凍結されるようなケースもある。そう、計画にあわせるように、未来を都合よく創ろうとしているにすぎない

なぜ会社の未来を予測できないのか。

理由は大きく二つ考えられる。一つは外的要因で、会社の外で起こる出来事を予測できないから、未来を予測することはできない。もう一つは内的要因で、分析や検証が不十分なので、未来の予測に正確性が欠ける。この二つのことについて少し詳しく説明したい。

まずは、外的要因について。

私たちの世界は “不確実” な社会で、“想定外” のことが日々起きている。私たちは未来を予測するとき、会社の外の “顧客/他社/社会/環境など” の条件をいろいろ設定していく。予測精度をあげるため、より細かく条件を設定していく。どのような条件を設定するかが予測の鍵で、予測の前提でもある。

「果たして、予測の前提である条件通りに、出来事は起こるのか。」

予測の鍵の条件(前提)が崩れれば、予測した未来(結果)は当然変わっていく。不確実で想定外の出来事が起こると条件は崩れ、予測エラーが起こる。一滴のエラーは波紋のように周りに拡がっていく。大きな出来事であれば、一滴ではなく大きな波となって襲いかかってくる。
予測エラーを起こさずに予測通りに進めたいのなら、不確実で想定外の出来事が起こらないようにする以外ない。しかし、会社の外で起こる不確実で想定外に起こる出来事を、誰もコントロールすることはできない

コントロールできるのは、自分(会社)だけ。相手(会社の外)はコントロールできない。にも関わらず、相手をコントロールしようとしている。

続いて、内的要因について。

未来を予測しようと、過去の経営結果をもとに会社の経営状況を分析・検証している。しかし、未来を予測するための分析・検証にも限界があって、残念ながら未来を正しく予測はできない。

「なぜ、分析・検証は限界なのか。」

分析の前に、過去の経営結果(例:期首と期末)を数値や図表で表す。図表にすると期首から期末の変化(量)がひと目でわかり、つい経営がわかった気になってしまう。しかし全てはわかっていない、大切なことは何もわからない。
期首からどのような変化を辿って期末になったかまでは、図表からは見えない。単調な一直線ではなく、山あり谷ありの変化(質)の軌跡が一年の間にあるのに図表からは見えない。変化の軌跡が見えないから、誤った分析・検証をしてしまう。それも、正しい分析・検証であるかのように。

この例を、期首(100)から期末(120)の変化で考えてみたい。期首から期末の変化が山型なら(100→150→120)、来年の予測は右肩下がりになる。しかし、期首から期末の右肩上がりの直線(100→120)の延長線上に、未来を予測してしまう。
また変化とは傾きであり、厳密な分析とは数学の微分方程式を使っての分析になってくる。そう本当に分析するとは、ここまですることになる。が、専門的になってしまい、現実的には難しい。経営層も実は、そこまでを求めていない。

科学は進歩し分析・検証の方法も進歩し、予測の精度が高まったことは間違いない。しかし、進歩したからといって、完全とはいいきれない。科学の進歩が「予測できる」という過信を生んでしまった。不十分な分析・検証からは、近い未来すら正しく予測することはできない。

これらの二つの理由からわかる、会計の限界とは。

「何があったか」まではわかっても、「何が起き、これから何が起こるのか」は誰にもわからない。「何があったか」という事実(結果)は会計情報から把握できても、「なぜ起こったのか」については読み解けず、起こった背景(理由)はわからない。もっともらしい説明は用意するが。

わからないにも関わらず、わからないことをわかっているにも関わらず、 “わかった” と思い込んでしまう。この “わかった” と思い込んでいる会計情報からは、会社のことは何もわからない。会社のことがわからない会計情報から、会社を語ることはできない。

会計とは何かでふれたが、会計の役割は会社を語ること。しかし、「会社を語ることができない」、これが会計の限界である。会計の役割を果たしていないという課題がある。会計について、考え直す必要がある。

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