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(アカウンティング⑨)アカウンティング×デザイン ~会計に求められるもの

“新しい可能性” という言葉を聞くと、自分の外側の景色に可能性が在ると思いがち。しかし、新しい可能性の多くは、外側の景色ではなく、今見ている目の前に拡がる景色の中に在る。
ただ、今見ている眼からは、なかなか発見できないだけ。異なる眼でもう一度眺めてみると、気づかなかった可能性を発見することができる。

今まで会計の景色を、経営学や経済学などの眼で見続けてきた。変わらない眼で見続けてきたから、眼が景色に慣れてしまい、異なる眼で見れば見えてくる(気づく)可能性を発見できなくなっていた。
新しい可能性を発見するために、今までとは異なる心理学や行動学の眼から会計を眺めてみたい。

公認会計士であり心理カウンセラーの藤田耕司は『リーダーのための経営心理学』で、「会計は人の心や感情の動きによって行われた経済活動を、数字を使って表現するアートです」と書いている。
経営学者・会計学者の山根節は『新版ビジネス・アカウンティング』で、「財務諸表を通して見ているのは、実は数字の裏側に広がる人間行動の理解なのである」と書いている。

会計を専門とする二人の著者はともに、「数字ではなく、数字の背後にある人の行動をみること」についてふれている。

また『新版ビジネス・アカウンティング』で、マネジメントについて次のようにも書いている。この文章からは、マネジメントのプロセスをみせることが求められていることがわかる。

マネジメントとは、組織目的と経営戦略に沿って、いわば経営の部品(ヒト、モノ、カネ、情報)という資源を集め、適切に配分・投入し、それらを成長させながら進めていくプロセスなのである。
( P19より )

藤田と山根の文章からは、「行動(プロセス)をみせること、そしてみること」が重要であることを示している。そこで会計で行動をどうみせる(表現する)かについて考えていく。

会計では、結果を事実として示し、構成比率や推移などの図表で表していく。そう、目に見える形で、考えなくてもわかるようにみせる。数字の背後にある「なぜその事実になったのか」という文脈は、会計には求められていない。
求められるのは、結果という目に見える事実。文脈ではなく、事実を補足する簡単な説明が求められる。説明は求められたときのみ、答えるだけ。それも結果が悪いときだけ、問題があったときだけ、説明は求められる。

事実(数字)の背景には、ほとんど関心を示さない。文脈の大切さは恐らくわかってはいる。ただ、限られた時間に日々追われ、簡潔で明瞭な説明をマネジメントは常に求めてくる。

しかし、“なぜ” を求めるよりも “結果(事実)” ばかり追い求めた結果、会社や社会はどうなっただろうか。さらに正しい事実であるはずの会計情報を偽った結果、会社はどうなっただろうか。答えは、明らかな事実として私たちは知っている。

文脈には、数字の背後にある人の行動が隠れている。この隠れている行動を知ろうとしなかったことで、様々な問題が引き起こされた。起きた問題の原因は説明からはわからず、気づいたときには大きな問題になって、対応できなくなっている。

これからの会計に求められるのは、数字ではなく、文脈で「会社を語ること」、「会社をみせること」の二つ。何よりも一番求められるのは、意識を変えること。

文脈とは物語であり、文脈の中に経営のプロセスがある。何かを語ることや何かをみせることは、“何か” に意味を持たせることでもある。デザインは人によって意味や使い方は違うが、私が考えるデザインとは、「カタチのないモノに意味を持たせること」。

そこで次に、デザインの眼から「文脈を会計でどのようにしてみせるのか」を考えていきたい。

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