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新しさの中にある懐かしさ

私は、コロッケが好きだ。
お店でもよくコロッケを注文する。
中でも一番好きなのは、母親がつくったコロッケ。

一番美味しいのかと聞かれると、難しい。
一番好きなのは、一番食べたいのはと聞かれると、それは母親のコロッケ。

よそでコロッケを食べるまでは、家のコロッケが基準になっていた。
大きさもハンバーグのように大きい。
ジャガイモもごつごつしている。

出来立てのコロッケが当たり前だが、美味しい。
出来立てよりも冷えたコロッケを電子レンジで温め直した方が好きだった。
そのコロッケにとんかつソースをかけて食べるのが、一番美味しかった。

そんな大好きなコロッケを、いつも5個以上食べていた。
食べ終わると、お腹は割れそうなぐらい大きくなっている。
ただ食べるだけで、幸せを感じていた。

味を思い出すと、その当時のことも一緒に思い出す。

母親はもういないので、懐かしいコロッケを食べることはもうできない。
料理はほとんどしないが、教えてもらったらよかったと思う。

東京の蔵前近くのホテルに泊まるとき、よく行くトンカツ屋がある。
コロッケも好きだが、トンカツの方がどちらかといえば好き。
肉も、豚肉が一番好き。

どこかに行く時の楽しみの一つが、美味しいトンカツ屋を探すこと。
蔵前にあるトンカツは本当に美味しい。
お箸で切れるぐらい柔らかく、それが看板メニューでもある。
お店も家庭的な感じで、居るだけでどこか懐かしい。

コロッケ単体のメニューはなく、トンカツとセットメニューになっている。
名物トンカツを食べたら、コロッケがついてきた。
クリームコロッケぐらいの小ぶりな一口コロッケ。
食べた時の衝撃は今でも覚えている。

「美味しい」

今まで食べたことのないコロッケ。
見た目はクリームコロッケかと思ったが、食べると食感が全く違う。
それ以来、そのお店で頼むメニューは決まった。

先日も「トンカツ+コロッケ」のセット定食を頼んだ。
メニューではコロッケは2個となっているが、思い切って頼んでみた。

「コロッケ、もう一つつけてもらえませんか。」

それぐらい、ここのコロッケは好き。
何が違うのか。

ポテトサラダを揚げたようなコロッケ。
今まで食べたことのない、やさしい味がある。
今まで食べたことがないが、どこか懐かしい味でもある。

ふと思い出した。
母親が作るポテトサラダも大好きだったことを。
ジャガイモはコロッケと同じようにごつごつしている。

母親がつくったコロッケ、今一番好きなコロッケ。

あることに気づいた。
新しく好きになった料理には、懐かしさが隠し味としてあることに。

昔の思い出の味、新しい思い出の味。
思い出とは、過去だけのものではないということに、発見した。

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