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子どもの頃の夏の音

子どもの頃
夏休みはいつも
ばあちゃんの家に行った
 
千葉から岩手まで車で9時間
出発はいつも夜
 
子どもにとって夏の夜の大冒険

この日だけは
寝なくても怒られなかった
 
夜中の高速道路を通るのが好きだった
ずーっと続く道路のライトが綺麗なんだよね
 
サービスエリアに寄ることも楽しみ
この日は好きなものを買って貰えた
 

帰省するとき
いつもより父さんは優しかった
 
 
AM 5:00
夜明けとともに夜の冒険がおわる
 
窓を見れば
のどかな田園風景
懐かしい景色が出迎えてくれる
 
「おかえり」って
言われているように感じる
 
 
くねくね続く山道を抜けると
ばあちゃんの家に着く
 

家の前は小川が流れ
丸太で作られた橋の先には
畑と田んぼが広がっている
 
 
小川では魚釣りが楽しめて
畑にはみんな大好きトウモロコシが一面に
 
畑仕事を手伝うと
叔父さんがご褒美をくれる
 
「このまま食えるから、ほら食ってみ」
 
その場でもぎ取ったトウモロコシは
 甘くてみずみずしいんだよね

子どもにとって最高のおやつ
 

ビニールハウスでは
ばあちゃんと叔母ちゃんが
野菜の世話をしている
 
トマト、きゅうり、ほうれん草
野菜の世話のお手伝いは
子どもにとって最高の社会勉強
 

家の裏へいくと
牛小屋がある
 
モォォォォモォォォォ
小屋から響き渡る2頭の鳴き声
 
目の前で見ると少し怖かったけど
牧草を運んで
餌を与えるお手伝いもした
 
子どもにとって
農家のお手伝いは新鮮な遊び
 

小屋から外へ出ると
指にとまるフレンドリーなとんぼ
 
心も元気になる透き通った空気
 
ずっと寝っ転がって見続けたい
ご先祖様も見ていた星空
 
普段、体験できない圧倒的な自然
子どもにとって最高の学び場
 
 
家に着くと
ばあちゃん、叔父さん叔母ちゃんが
いつも出迎えてくれた
 
「よくきたなぁ」
「元気だったか?」
「疲れたでしょ。家さ入って休んで」
 

家に入るとお線香の香りが漂う
 

ばあちゃんの家では
毎朝ごはんを食べる前に
ご先祖様に手を合わせる
 
僕たち一家は
仏間へ行き
手を合わせた
 
心の中で挨拶をする
「ただいま」
 
 
ご先祖様と感謝を大切にする
昔からのしきたりが好きだ
 
 
 
最後にみんなと会えたのは
コロナ前の2019年
 
皆すっかり老いていたけど
あの頃と変わらず優しさが溢れる笑顔だった
 
 
今は風景だけが変わらず残されている
 

景色を見ると
心に聴こえてくるよ
 

子どもの頃の夏の音
 

「よくきたなぁ」
「元気だったか?」

 


 

大切な景色 ありますか?


 
 


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