【旅】広島、尾道 プロローグ 旅行ではなく、旅を求めて。

これは僕が初めて”旅”を意識した旅の、
旅のエクリチュール。

実際の旅のことを書く前に、まずはプロローグとして、”旅”について書くことから始めたい。

旅行ではなく、旅がしたい。
そう思ったのは今年のいつのことだったか。

きっかけは、知人から送られてきた写真と動画。とあるリゾート地の知られざる景色だった。そこにはメディアには載っていない、その土地の姿があった。

僕はその写真や動画に見入りながら、
メディアで紹介される土地は、土地そのものではなく、パッケージ化された土地なのではないか?そう思った。
例えば僕が、東京の情報をメディアで調べたとしよう。僕は東京を知ることはできないだろう。それはメディアが作った東京だ。
そうやって土地のイメージは作られる。悪くすると、パッケージ化された土地が、その土地の概念になってしまう可能性もある。

パッケージ化することで、そこがどういう場所で、何を得られ、満たされるのかが発信される訳だから、人に行く”目的”を持たせる。これは、パッケージ化によって目的が形成されると言ってもいい。
さらにメディアは、行くべき場所、食べるべきもの、すべきことなどを発信する。
人はメディアをみて、行く場所や食べるもの、することを決める。つまりここでも目的が作られる。
僕はこの”目的”が”旅行”の大きな特徴なのだと思う。

しかし、僕は土地そのものと言ったが、これもおかしな話しだ。土地そのものとはなんだろう?それは物理的な意味では説明できるかもしれない。しかし、概念的な意味では人によって差異がある。つまり土地そのもの、その土地の絶対的な真理は存在せず、個人個人の土地そのものがあることになる。
ならば出会うしかない、自分にとっての、土地そのものに。
それは、パッケージ化された土地の中で見つけることは可能だろうか?
パッケージとして予め用意された土地と出会うだけで、終わってしまうのではいか?

僕はパッケージ化された土地ではなく、自分なりの土地そのものを見つけたい。では、どうすればいいのか?
パッケージ化されたものを拒否し、目的、即ち旅行を棄却するのであれば、目的を持たずに偶然に身を任せるしかない。
僕はこれを”旅”であると考えた。
そして目的のように、「ここに行く」とは違い、「旅をする」とは、常に旅という行為の過程の中にいることになるだろう。
「偶然と過程」、これが旅の大きな特徴だろう。

ここで一応断りをいれておこう。僕はパッケージ化をネガティブなものとして否定したいのではない。
先に述べたパッケージ化は、非常に資本的な目的のパッケージ化だ。
その土地の、場所や食などの魅力を発信する。その情報を見て、人はその土地に惹かれ、その土地に行く。これは、ポジティブなもので、大切なコミュニケーションでもあるはず。
これを、パッケージとしていいのであろうか?
コミュニケーション。この言葉の方が、僕には腑に落ちる。
また、営利目的が動機であったとしても、土地と人に敬意があれば、その土地を深くあじわうことを、提供できるのではないか?
それは、その土地に根差したおもてなしを考えることに繋がり、招く方にとって、より土地の魅力に気付くきっかけにもなりうるかもしれない。

メディアにある情報も、一概にパッケージ化されたものではないと思う。その土地への敬意や愛があり、それを伝えたいとする、コミュニケーション的な情報もあるはずだ。

僕がここまで述べたことは理想論だ。
観光を生業としているのであれば、どうしても理想だけではやっていけないだろう。生活もある。
しかし、だからこそ理想論が必要なのだ。
理想論を振り翳すことは正しくないだろう。ただ、導き出された理想論をもって、世に問題提起をすることは、意義があるはずだ。
旅行や旅が消費になっていないか?本当にその土地を魅力をあじわえているのか?迎える人と訪れる人、双方にとっての満足とは何か?
旅行や旅について問いを立て、旅行や旅を哲学することが必要だと、僕は強く感じる。

今回の僕の旅は、上記の旅とコミュニケーションが混じったものだったように思う。
1日目は旅の要素が強かったが、2日目、3日目は友達に案内をしてもらった。これはコミュニケーションであろう。しかし、事前に情報を仕入れず、行く場所は全て友達にまかせた。(これは僕の身勝手な我儘で、友達には申し訳なく思っている。そして、我儘を聞いてくれたことに、心から感謝している。) 
これには、旅の偶然性があると言えるだろう。

さて、長くなってしまったが、プロローグはここまで。
これでようやくまた旅がはじめられる。
想起し、書くということで、また偶然に何かと出会えるだろうか?それならば、これも旅を旅する、想起とエクリチュールによる旅なのだろうか?

次回より、実際の旅のことを書く。

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