【日記】 23/12/21 谷保祥寺
ひたすらに真っ直ぐ歩くというのは不安を感じる。随分歩いた気がする。いつになったら着くのだろう。通り過ぎてはないだろうか。足音の代わりに、そんな言葉が聞こえてくる。その言葉を消すように、早歩きで冷たい風に切り切られながら歩く。
吉祥寺通りをひたすら真っ直ぐ歩いた。といっても15分程。『ひととてま』というシェアスペースにて開かれる、『喫茶よるべ』にやってきた。
この建物は見覚えがあった。昔バスでたまに通り過ぎていた。目立つ建物だったので覚えていた。正面の白い木製の壁。ステンドガラスが嵌め込まれた扉を開ける。
店の中には店主の方と、最近谷保で仲良くなった友達のNさんがいる。そして奥の席に谷保でよく会うイツメンのTさんFさんの驚く顔が見えた。僕は今日2人が来ることは知っていたけど、むこうは知らなかったようだ。やはり谷保でいつも会う人と他のまちで会うのは不思議だ。
まず、今日のこの空間がどういった縁で編まれているのかほどいてみよう。発端は喫茶よるべの店主とTさんが知り合いで、そこから喫茶よるべの常連だったNさんがTさんと繋がり、TさんがNさんに谷保を紹介して、Nさんが小鳥書房(谷保)を訪れ、Nさんと僕が知り合い、僕がNさんに近日僕の家でこういう会をやろうとしていると言ったところ来てくれて、その会のときに喫茶よるべのことを教えてもらう。そうして編まれた縁がこの時この空間だ。
あとから国立に住んでいたり、関わりのある友達がさらに2人きた。店内にいる人はほぼ谷保に関わる人になっていた。
ピンク色の壁が落ち着く。屋根の内側の木材が見える。後から来た友達Wのすわった目。そこだけ空間が窪んでいるようだ。同じく後から来た友達Dが誕生日にもらったケーキが傷まないか、心の片隅で心配になる。
Nさんは今歌を作っているらしく、吉祥寺をテーマにしたいとのこと。何かヒントになればとそこにいる人たちに吉祥寺というまちについて思うことなどを書いてほしいとノートを渡していた。僕も書こうとする。吉祥寺は今まで何度も訪れていて、思い入れもある町だ。ふわりと何か思いが浮かんでいる。言葉にするのに時間がかかる。うまくいったかは分からないがノートに書いた。
木を見るように 森を見るように
やっぱり違うかも
いつか出会える
たぶん
人のざわめきに消されそうだけど
高架線の下で
せまい路上で
テーブルの上で
井の頭の水面に
暗がりに
木々の間に
飛ぶ声に
こすれる砂利に
静寂に
イメージは役に立たない
このまちを知ることはできない
だけど
出会えることはできる
美味しい珈琲にプリン、おかわりのほうじ茶ラテ。途中から一番奥の席に移動した。色んな話が咲いているのを見る。目の前にいるWも笑っているけど、やはり目はすわっている。
谷保のイツメンもご年配のお客さんと話している。谷保のイツメンが多いのに、やはり谷保とは違う、独自の空気になっていた。
帰り道、国立を歩く。国立はふと闇を感じないと思う。吉祥寺はなんとなく闇を感じる。それは表面ではなく、過ぎ去っていたり、残っているもの、潜んでいるものと言った感じだ。昔の闇市か、武蔵野の鬱蒼とした森か。森だったら、国立にもあったと思うけど、なぜだろう。
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