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2020年展示会感想まとめ

2020年は多くの美術館が休館に追い込まれ、会期が変更になった展示会、さらには1日たりとも開場せずに終わってしまった展示会までありました。
そんな中、この一年で125展の展示会に足を運べたことは幸運そのものだと思います。
関係者の皆様の想いがヒシヒシと伝わってくるような展覧会が多く、実りのあるアート体験ができた一年でした。
印象に残った展示会を、軽い感想とともに時系列順でまとめておきます。


所蔵作品展 パッション20 今みておきたい工芸の想い
国立近代美術館工芸館が金沢に移設される前ラストの展示会でした。金沢の方も10月に開館したので、近いうちに行きたいですね。少年の人体模型が良かった。

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未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命――人は明日どう生きるのか
近年、未来風のデザインと言われてイメージする様式が大幅に修正されましたよね。元来、スターウォーズの戦艦のようなメカメカしい装甲が未来風でしたが、今では有機的なデザインこそが未来的。現代人の僕の感覚では少し気持ち悪いです。

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チェ・ジョンファ「Blooming Matrix 花ひらく森」 展
空気ポンプによって開閉が制御された風船式の花はYCCヨコハマ創造都市センターで見たことがありました。子供の頃に遊んだキラキラなビーズを思いだすシリーズも好きです。

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大久保あり 個展「パンに石を入れた17の理由」
文という形式の作品を展示する上で、初めて見たスタイルでした。空想の説明文なのにお願いすると実際に石の入ったパンがいただけて、どこまで本当なのかわけわからなくなるところが面白かったです。

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ダ・ヴィンチ没後500年「夢の実現」展
立体的かつ写実的に表現する意識が強まって生まれたルネサンス美術だからこそ、最新技術を用いた立体フィギュア化に価値が出たのだと思います。ロマンある企画に感動しました。

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第68回 東京藝術大学卒業・修了作品展
最終日に滑り込みで興味のある学科のみ見回りました。建築学科の換気塔の設計、彫刻科の巨大な自刻像が良かったです。

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記憶の珍味 諏訪綾子展
匂いのサンプルを嗅ぐ→自分が好きなものを選ぶ→それに紐づいたグミをもらう→音声を聴きながら食べる。斬新な体験形式かつ五感を使う展示でした。

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奇蹟の芸術都市バルセロナ展巡回
国際的な祭典によって発展した都市。また行きたいですね、バルセロナ。

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森村泰昌:エゴオブスクラ東京2020―さまよえるニッポンの私
好きな現代美術家の個展。三島由紀夫を題材にした動画作品は、今開催中の眠り展でも観れます。原美術館の予約がとれなかったので、これが事実上最後の原美術館になりました。

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大阪万博50周年記念展覧会
タイムマシーンができたら必ず大阪万博に行くぞ。警備員さんがノリノリで、なぜかオススメのアングルで記念写真を撮ってくれました。

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オラファー・エリアソン
偶然性を含んだ光学的な作品には神秘性が宿る。

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Cosmo-Eggs | 宇宙の卵
宇宙の卵には、黄身とカラザがある。

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杉本博司 瑠璃の浄土
リニューアルオープンした京都市京セラ美術館の最初の展覧会。リノベーションの方針が攻めてて面白い。流線型のガラスリボン導入によるエントランス階の変更。左右対象な中庭の片方のみにガラスの屋根を設置。中庭の茶室が綺麗でした。
網羅的な作品群に、初公開の作品と、杉本氏の私的なコレクション。とくに三十三間堂の千体仏を撮影した『仏の海』は見応えがありました。43枚撮った内の18枚らしい。

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バンクシー展 天才か反逆者か
本人公認ではないと物議を醸した展示会。それもバンクシーの作品だったのかと思うものが何個もあって、バンクシーの功績を再確認しました。

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横浜トリエンナーレ2020
コロナ禍で開催された数少ない国際的な芸術祭。外国人作家が来日できない中での開催は途方とない苦労があったことだろうと推察します。例年通りのクオリティとは言えないのが事実ですが、なにより開催してくれてありがとうございました。

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神宮の杜芸術祝祭 野外彫刻展「天空海闊」
明治神宮で名和晃平の鹿が見れます。六本木アートナイトから好きな作品シリーズ。全部を見ようとすると、歩いたことのない森の奥まで歩かされる。こんなところが東京のど真ん中にあるんですね。

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https://jingu-artfest.jp/tenkukaikatsu-2/

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展巡回
SOMPO美術館と合わせて、ゴッホの『ひまわり』、しかも連番が同時に東京で観れるという貴重な期間でした。


ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター
画家の目線を持っている写真家。1950年代のニューヨークに行きたくなる展覧会でした。

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作品のない展示室
空っぽの展示室を歩き回る不思議な経験ができました。早稲田卒の建築家らしいデザイン。

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ART STORAGE
今年オープンしたKAIKA 東京 by THE SHARE HOTELSに併設された、宿泊者しか入れない展示室。金氏哲平の作品が好きでした。

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田中信太郎展「風景は垂直にやってくる」
市原湖畔美術館にやっといけました。絵画と彫刻を組み合わせた独特なスタイルが格好良い。アーティゾン美術館のロビーにある作品も田中信太郎作。

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隈研吾/大地とつながるアート空間の誕生 − 石と木の超建築
プレオープン中の角川武蔵野ミュージアムに入れる展示会でした。隈研吾の作品で一番好きかもしれないです。よくみると全部の面が三角形。

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分離派建築会100年展
建築は芸術か、僕もたくさん考えました。今の時代なら間違いなく芸術なんですけどね。総合芸術としての建築が好きです。内藤廣のインタビュー映像も良い内容でした。


宮島達男 クロニクル 1995−2020
千葉市美術館のリニューアルオープンを記念した展示会。人間を使ったカウンターの映像作品がエグくて良かったです。

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森本草介展
名建築のホキ美術館にもやっと行けました。昨年の台風から復興して最初の展示会。写実性に特化した所蔵品の数々に度肝を抜かれました。

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生命の庭─8人の現代作家が見つけた小宇宙
これまた豪華な現代美術家たち。人工的なライティングとの親和性が高い作品はちゃんと新館の別室で展示して、使い分けが上手いなと感心しました。

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名和晃平 個展 「Oracle」
オペラシティの個展から透明なガラス玉で覆われた剥製のシリーズがずっと好きなんですが、はじめてカラスverを観ました。これが無料はすごいです。

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トラNsれーショNs展―「わかりあえなさ」をわかりあおう
“翻訳”が六本木で展示されるアートになる時代なんですよ。希望と可能性を感じる展示会でした。

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STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ
間違いなく最高峰の日本人現代美術家が集結している展示会。直島展と言ってもいいくらいです。

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ベルナール・ビュフェ回顧展 私が生きた時代
禁欲的な作風から劇的な作風に変わっていく過程に興味が湧く展示会でした。好きだった絵のポストカードがなかったので図録を買い、さらに渋谷に行くたびに通っています。


眠り展:アートと生きること ゴヤ、ルーベンスから塩田千春まで
コンセプトも面白いし、もともと好きなルドン・塩田千春・森村泰昌の作品で出ていて、単純に良かったです。しかも全体のデザインが良い。
会場設計:トラフ建築設計事務所
グラフィック:平野篤史
ファブリック:オンデルデリンデ

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所蔵作品展 MOMATコレクション 特集:「今」とかけて何と解く?
コロナ禍をうまく反映した常設展でした。まさに今見る価値のある展示。


藤田 クレア展
自然の中に転がる数学的な美しさがアートに昇華された展示会。

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トライアローグ:横浜美術館・愛知県美術館・富山県美術館 20世紀西洋美術コレクション
ポスト印象派以降の西洋美術史を体系的におさらいできるすごい展示会。こんなん教科書じゃん。

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生誕111年浜口陽三銅版画展 幸せな地平線
カラーメゾチントの解説は吉祥寺美術館の方が詳しいけど、作品数はこちらの方が多かったですね。


生誕100年 石元泰博写真展 伝統と近代
庭園や建築を撮るのが上手い。桂離宮の飛石を少し角度をつけたアングルで撮った作品で、東山魁夷の『道』を思い出しました。

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大岩雄典「バカンス」
漫才を放映する形式をとった展示会。新しい。

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特別展 海を渡った古伊万里~ウィーン、ロースドルフ城の悲劇~
戦時中に割られてしまった陶磁器を修復し初めて公開した展示会。ストーリーが乗るだけで興味が湧くものですね。

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コロナを意識したコレクション展、有名な現代美術家を一堂に会した展示会を数多く見かけました。
従来の絵画/彫刻/写真/インスタレーションだけでなく、漫才や翻訳や文章などの表現手法までが展示会という形に昇華していた点も、2020年の特徴と言えるでしょう。
数年前から未来の代名詞となっていた2020年の展示会では、しっかりと美術の新たな可能性を感じられました。来年も楽しみです。

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