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エッセイ:大ちゃんは○○である64

「22番の方、3番の窓口へどうぞ。」
響き渡るアナウンス。フロア内は大勢の人で溢れ返っている。
25番の番号札を持った僕は、待ち合いのソファーで番号が呼ばれるのを待っていた。
ここ職業安定所には色々な事情を抱えた様々な人達が集まる。
年齢もバラバラ。服装もバラバラ。性別もバラバラ。そして、理由もバラバラ。
ただ一つ共通していることといえば、
『仕事を見つけたい』という意志を少なからず持ち合わせている人達であるということだろうか。
パソコンとにらみ合いながら、目ぼしい求人をプリントアウトする人。
壁一面に貼りつけられた求人内容に片っ端から目を通し、メモをとっている人。
相談窓口でなんとか面接まで取り次いでもらおうと、必死になって唾を飛ばす人。
ここにはある種の熱気があった。
朝も早くからどこからともなく集まってきて、席を取り合い行列を作る。
僕はキョロキョロと周りを見回しながら、妙に息苦しいような感慨を覚えた。
電話での問い合わせでは次から次にことごとく断られ、
面接さえもしてもらえなかった。
希望の蕾は花開く前に散った。
自分はダメな人間かもしれないとも思った。
しかし、だからといっていつまでも落ち込んでいるわけにもいかない。
職業安定所からの紹介という形であれば、
面接もしてもらいやすくなるのではないかと考え
足を運んできたのだ。

つづく

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