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狼吞虎咽ーー食べる力は、生きる力

(992字・この記事を読む所要時間:約3分 ※1分あたり400字で計算)

【狼吞虎咽】

ピンイン:láng tūn hǔ yàn
意味:勢いよくガツガツ食べている様。


『食べる力は、生きる力』

 私が通った中学校は、中国福建省の山奥にある全寮制の学校だ。
 自然だけが豊かなド田舎で何も無く、一面の山や森に囲まれ、ぽつんと校舎が一つ建ててあるだけだった。

 建物はガタガタで設備も古く、小さな寮部屋に6人がぎゅうぎゅうに詰められて暮らしていた。
 クーラーも暖房もない。夏冬は本当に過酷だった。
 洗濯機もなかった。どんな寒い日でも、自分達で洗面器に手を突っ込んでせっせと服を洗うしかなかった。

 食事はどうしていたかというと、校内の食堂を利用していた。
 ただ、学校が食料費を節約していたせいか野菜や果物がほとんどで、肉類はあまり食卓に出なかった。

 育ち盛りの私達はいつもお腹を空かせていた。

 たまにしか出されない肉を狙っては、いつも目をギラギラ光らせていた。


 肉の誘惑は大きい。
 どうしても譲れない、何としても食べたいものであった。


 そこで起こったのが、「ザ・肉争奪戦」

 朝の授業の終了チャイムが鳴ると同時に教室から猛ダッシュして肉を奪いにいくもので、一刻も他の人より早く食堂に着く為に、階段で押し合ったり(めっちゃ危ない)、あれやこれやの手を使って互いに足を引っ張ったりする、何とも過酷な戦争だったのだ。

 転んでもすぐに起き上がって走り続けた。
 中にはデジタルウォッチでカウントダウンし、30秒前から準備運動をするやつもいた。


 1秒でも足が遅いと肉が食べられない。
 まさに優勝劣敗の世界。


 ごちそうが手に入っても、うかうかしてはいられない。
 気を抜くと横取りされてしまう恐れがあるからだ。

 だからいつもすぐさまがっついた。
 その姿は、まさに「狼吞虎咽」そのものだ。


 大人になった今。
 お金さえ足りればいくらでも肉を食べられるようになったが、それでも「すごい食べっぷり」と周りから言われる。
 当時流し込むように必死に食べ物を口に入れた、あの日々の習慣がまだ身に沁みついているせいからだろう。

 うわべでは味わって食べているようには見えないかもしれない。
 が、実はガツガツ頬張りながらも、こうして心行くまで好物をお腹いっぱいいただけるありがたさを噛み締めているのだ。


 「食べる力は、生きる力」。
 これは、私があの中学生活で学べた大事なことの一つである。

 食べていける為の一つだけに、人というのは実に命をかけられるものなのだと、それを思い知らされた3年間であった。


📚お腹いっぱい食べると、心も平和になります


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