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音楽配信とCDパッケージ

ストリーミングやダウンロード等の配信音源が音楽を聴くための選択肢として既に市民権を得ていることはみなさんにとっても既知の事実でしょう。

一部のネット記事や個人のブログでは「若者はもはやCDを買わない。彼らはスマホにダウンロードしたり、ストリーミングで音楽を聴いている」という内容の記事を見かけることがありますが、さすがにこれは極論です。

実際にタワーレコードにいくと高校生が普通にCDを買っています。米津玄師さんやヒゲダンさん(official髭dism)などの人気アーティストがパッケージ版を発売しているので当然かもしれませんが、ここで言いたいのは「すべて配信になる」というのは極論だと私は思います。

その音楽配信について、

私もリリース時には配信ディストリビューターさんにはお世話になっています。もちろん手元に形として残るパッケージ版も魅力的ですが、私も含めて知名度が低い、もしくはレーベルに所属していない人にとってはCDのリリースは金銭的負担が大きいのです。

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ここでは特定の会社の宣伝及び中傷につながってはいけないので、社名は出しませんが、某CD流通卸会社では初回登録時に約3万円の登録手数料がかかります。さらに、インストアイベントが決まった場合は営業担当者の人件費をアーティストが負担しなければなりません。CDプレス料金と卸業者への配送料金も自己負担で会社によって違いますが、100枚プレスした場合は5万円以上かかります。ここでは送料は調べていないので省きますが、ここまでで、8万円かかっています。さらに、余剰在庫は自宅に返送され、この分の送料もアーティスト負担です。

アルバムならまだしも一曲だけ入ったCDを売れるかどうかも不確定なまま、出すのは赤字のリスクが大きいのです。現実的に、私のような無名なミュージシャンの場合は売れずに大量の在庫を抱えてしまう可能性が高いです。

しかし、配信の場合は初期費用がかからない場合が多いです。もちろんTunecore のように有料のものもありますが、無料のサービスでは売上金の一部を差し引かれる代わりにタダでリリースできます。余計な費用がかからないということは失敗しても在庫を抱えることがないので、萎縮することなく思い切った曲作りが出来ます。私個人の意見としてはクリエイターの創作活動にとってもプラスではないかと思っております。

Tunecoreは初期費用が発生するかわりに利益は100%還元されます。私は費用を払い続けるのがあまり好きではないので無料のサービスを利用しています。これに関しては個人の価値観で好きな方を選択すればいいと存じます。

音楽活動をする側にとっては、配信はメリットも多いですが、私がリスナーの立場で音楽を聴くときはパッケージ版の方が好きです。CDはただ、曲を楽しむだけでなく、ジャケットのデザインも間近で鑑賞することが出来ます。デザイナーさんの個性が出ていて見ているだけで楽しいです。

最近の配信はハイレゾのような高音質な音源もあり、歌詞やクレジットも配信サイトのページで確認できるのですが、見れるのはテキスト情報のみです。一方、CDのブックレットでは見開きで片側がアーティスト写真でもう片方に歌詞が記載されている場合や、歌詞自体がデザインの一部として盛り込まれているなど、「ただ、詞を見る」、「ただ曲を聴く」のではない複合的な体験が出来る点が魅力的です。

今はシングルを配信、アルバムをパッケージでリリースされる方も多くいらっしゃいますね。私の場合は、シングルCDを全て買うことで収納ケースがすぐにいっぱいになってしまうのが嫌なので、よほど好きなアーティストさんの作品以外のCDはアルバムしか買いません。私のようにアルバムだけ欲しいというタイプの人間にとってもこの流れは合理的ではないでしょうか。

今後も音楽配信とCDパッケージは共存していくでしょう。


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