novel: 森の人魚
森の中にある湖上のコテージには、床下に続く四角い蓋がついている。
釣りでもするためだろうか。
「帰るわ」
濡れ髪のまま、乳房もあらわな裸体で女は床を這っていき、その床穴からじゃぶんと湖に戻っていった。
「あなたとても良かったわ。友達の蛇女《ラミア》に紹介していい?」
水に落ちた女の下半身には青白い鱗があった。
「その子、半分は蛇だろ?」
「私なんて魚よ」
濡れた唇でうふふと笑い、人魚は水の奥底に潜っていった。
さよなら……。声ではない声が別れを告げた。
――完――
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