翌朝――。
式刻座の小屋は忽然と姿を消していた。昨夜の騒乱の中、小屋に巡らされた結界のおかげで、外からは普段通りの興行を行っているように見えていたが、その結界を解いたのちは、式達の手により夜陰に紛れて小屋を畳む姿が他の座により目撃されていた。その跡地には――小屋の材木を使い高々と組み上げられた磔台。そこに息も絶え絶えの空祁狂羽が縛られている。梺には札が立てられていた。曰く、式刻座を度々荒らしに入り小屋中を散々に壊した乱入者を此処に磔ける由、式刻座は小屋掛けの場所を京より移す旅に出立、積み上げた残りの材木は誰なりとも好きなだけ、この招かれざる客を炙りなぶるため使うが良し――。
ここから先は
1,015字
¥ 100
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?