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現在進行中でSNS等で行われている認知戦~アニメ・ダンまちでの主人公に対する記憶操作・認知戦よりの連想

ダンまちを含む、2024年秋アニメ全体に関する私的感想纏めは⬇️

現在放映中(2024年秋)のアニメ・ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか豊穣の女神編にて。
第5話あたりから、主人公ベル・クラネルは女神フレイヤから、都市住民全域にわたる記憶操作・認知操作による認知戦攻撃を受けます。

フレイヤは魅了の力を行使し、彼女の力を無効化できるベルやヘスティアを除いて、ベルがフレイヤの眷族であるという偽りの認識をオラリオ全体に強制してベルを奪取する。
フレイヤの本拠で目覚めたベルは、自身がフレイヤの眷族であると告げられる。驚いたベルは親しい者に会いに行くが、誰もが偽りの認識を当然としている状況に動揺する。

Wikipedia ダンまち あらすじ 本編第四部 17巻より

現在放送中のアニメでは、主人公ベルや彼の本来の主人である女神ヘスティア、そして仲間たちが、認知戦を仕掛けてきた女神フレイヤにどのように立ち向かうのかが、これから物語のクライマックスとして描かれていきます。

フレイヤの繰り出す認知戦は、「都市住民全員の記憶自体を直接改変し、改変に気づき対応しようとすると時間を巻き戻す」というファンタジー特有の直接全体魔法のような強力なものでした。

人間の記憶というものは不確かで可変するものであり、「絶対に間違っていない」と思い込んでいる過去の記憶が知らず知らずのうちに誤って認識されているというのは誰にでも考え得る話です。
記憶と同様に知覚や注意といった人間の認知のベクトルを、外部からの作用により徐々にズラすことにより、思考や行動といった精神的・行動的プロセスも知らず知らずのうちに、他者の介入によって修正されているという危険性を考える必要があります。

魔法に比すれば規模は小さく間接的ではありますが、現代の現実社会に於いても様々な「認知戦」がSNS等の身近で行われていると考えられています。 

今回はそのテーマの一部である「認知」や「認知戦」について、少し考察してみたいと思います。




脳における認知について

認知とは、思考、注意、言語、学習、記憶、知覚など、脳内で行われるさまざまな精神的プロセスを指します。

認知機能は以下のような主要な要素から成り立っています。
・記憶:新しい情報を受け取り、既存の知識と結びつけて保存し、後でアクセスできるようにするプロセスです。
思考:問題解決や意思決定など、より複雑な精神的プロセスを含みます。思考は他の認知機能と密接に関連しています。
注意:特定の情報に焦点を合わせる能力であり、注意が分散すると「認知バイアス」が生じることがあります。
知覚:感覚から得た情報を処理し、周囲の環境を理解する能力です。これは、視覚や聴覚などの感覚情報を統合することを含みます。


認知戦について

認知戦とは、敵の心理や思考に影響を与え、戦略的に有利な状況を作り出すための戦術を指します。
認知戦は、敵対する国や集団に対して、世論や政策決定に影響を与えることを目的としています。

現代における認知戦の重要性
現代の認知戦は、特にデジタルメディアの普及により、より複雑かつ広範囲に展開されています。SNSやインターネットを通じて、情報が瞬時に広がるため、認知戦の影響力はかつてないほど強まっています。これにより、国家間の対立や国内での意見の分断や社会的な緊張が高まる可能性があります。


認知戦が民主主義に与える影響は?

認知戦は、特に現代の情報環境において、民主主義に対して深刻な影響を及ぼす可能性があります。以下にその主要な影響を示します。

世論の操作と分断
認知戦は、特定の情報を操作することで世論を形成し、特定の政治目的を達成する手段として利用されます。例えば、偽情報やプロパガンダを通じて、特定の候補者や政策に対する国民の不信感を増大させることができます。これにより、民主主義の根幹である市民の意思決定が歪められ、政治体制が弱体化する危険性があります。

民主主義の価値観の揺らぎ
認知戦は、善悪の判断基準を揺らがせることを目的としています。特に、権威主義的な国家がこの戦術を用いることで、民主主義の価値観を相対化し、国民の間に混乱をもたらすことが可能です。これにより、民主主義の理念が脅かされ、社会全体の信頼が損なわれることになります。

社会的対話の喪失
認知戦は、特定の意見や思想を強化することで、社会の中での対話を困難にします。SNSなどのプラットフォームを通じて、特定の情報が繰り返し流布されることで、異なる意見を持つ人々の間にフィルターバブルエコーチェンバーといった溝が生まれ、建設的な議論が行われにくくなります。これにより、民主主義の基本である多様な意見の共存が脅かされます

選挙への影響
認知戦は、選挙プロセスにも直接的な影響を及ぼします。選挙干渉や情報操作を通じて、特定の候補者や政党に対する支持を操作することが可能です。これにより、選挙結果が不正に影響を受け、民主的なプロセスが損なわれることになります。

国家間の緊張の高まり
認知戦は、国家間の対立を激化させる要因ともなります。特に、情報戦を通じて他国の内部に混乱を引き起こすことで、国際的な緊張が高まり、結果として民主主義国家同士の信頼関係が損なわれることがあります。

認知戦は、民主主義に対して多方面からの脅威をもたらします。世論の操作、価値観の揺らぎ、社会的対話の喪失、選挙への影響、国家間の緊張の高まりなど、これらの要素は相互に関連し合い、民主主義の健全な運営を脅かす要因となります。したがって、認知戦に対する理解と対策が急務であると言えるでしょう。


AI技術は認知戦にどのように利用されているのか?

認知戦は、敵の心理や思考を操作することを目的とした戦術であり、近年では人工知能(AI)技術がその実施において重要な役割を果たしています。以下に、AI技術が認知戦にどのように利用されているかを詳述します。

情報操作と偽情報の生成
AIは、情報の生成や操作において強力なツールとなっています。特に、生成AI技術を用いることで、リアルな偽情報やディープフェイクコンテンツを作成することが可能です。これにより、特定のメッセージやナラティブを広め、敵の認知を歪めることができます。例えば、ロシアのウクライナ侵攻では、AIを利用してウクライナの指導者が降伏する様子を描いた偽の映像が作成され、情報戦の一環として使用されました。

心理的操作の強化
AIは、個々の心理的特性や行動パターンを分析することで、ターゲットに対する心理的操作を強化します。これにより、特定のメッセージがどのように受け取られるかを予測し、効果的なプロパガンダを展開することが可能になります。AIを用いた感情分析や意見分析は、対象とする閲覧者の反応をリアルタイムで把握し、戦略を調整するために利用されます。

ソーシャルメディア(SNS)の活用
SNSは、認知戦の重要な戦場
となっています。AIは、SNS上での情報の拡散を管理し、特定のメッセージを効果的に広めるためのアルゴリズムを最適化します。これにより、特定の意見や感情を強化し、社会的な分断を引き起こすことができます。

データ分析とターゲティング
AIは、大量のデータを迅速に分析し、特定のターゲットに対する効果的な戦略を立案するために利用されます。これにより、敵の行動や反応を予測し、より精密な攻撃を行うことが可能になります。AIを活用したデータマイニングオープンソースインテリジェンス(OSINT)は、認知戦における情報収集の効率を大幅に向上させます。

持続的な操作と適応性
AIは、認知戦において持続的な操作を可能にします。AIシステムは、リアルタイムで状況を分析し、変化する環境に応じて戦略を適応させることができます。これにより、敵の反応に対して迅速に対応し、効果的な情報操作を継続することが可能です。

AI技術は、認知戦において情報操作、心理的操作、SNSの活用、データ分析、持続的な操作の各側面で重要な役割を果たしています。これにより、敵の認知を効果的に操作し、戦略的な目的を達成するための新たな手段が提供されています。今後もAIの進化に伴い、認知戦の手法はさらに洗練され、複雑化していくと考えられます。


結論&感想

民主主義に基づく選挙制度を持つ国家において、認知戦による情報汚染や社会全体での認知の歪みは深刻な影響を及ぼすと考えられます。この戦いの主戦場は多数の国民に情報を一方的に発信できるマスメディア、及び多数の国民が情報を双方向に受発信するSNSであり、今後は主武器として効率的かつ効果的に情報を操作できるAIの利用がますます重要になるでしょう。

権威主義的な国家からの認知戦に対抗するためには、大規模かつ一方的に情報発信可能なマスメディアの統制も必要ですが、同時にSNSプラットフォームにおいても、一定の発言や議論を制限するルール作りが必要ではないかと考えます。
具体的には、分断を招く暴言や誹謗中傷に対処する為に、AIを活用した書き込み前のサジェスチョン(確認ポップアップ)を導入すること等が考えられます。誹謗中傷や差別表現については、現行法でも対応可能だと思います。

個人の発言の自由は尊重されるべきですが、その一方で、個人の発言が社会全体に与える影響についても認識されるべきです。発言の自由と社会的責任のバランスを取ることが、健全な民主主義を維持するために重要だと考えます。


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