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【やや裏話】トヨタ自動車系列の不正車検を見ての話

<おじさんDX Vol 219>

また、発生した不正車検💥



こうしたことは、業界では古くからあったのではないか?というのが、とある現役整備士の話です。そこでその背景について少々触れてみました。


✅行き過ぎた生産性向上の結果❓

今回の不正車検は、法律で決まっている事を行わなかった点にあります。比較的料金の高い部類にあるディーラーが、お客様から委託されているのに、このような不正が、慢性化しているような状況は、好ましくありません。


自動車販売以外で利益を出すとなると、車両のメンテナンス等が挙げられます。昨今の自動車は、信頼性が向上した事もあり、そう簡単に壊れることはありません。

定期的なメンテナンスとして、エンジンオイル交換がありますが、このエンジンオイル交換そのものは、それほど利益がないのです。

オイル仕入業者にもよりますが、粗利率にして5割~3割程度。1台あたり3,000円としても1台仕上げて1,500円~900円の利益と算出出来ます。

作業時間にして10分~30分少々。作業する人が必要ですし工場の設備も使っていますから、トータルで考えると「赤字気味」なのが、実情ではないでしょうか😅

それでもエンジンオイル交換に代表されるメンテナンスを積極的に行う理由は「来店動機作り」と言われています。

入庫車両の車検月のチェックが出来ますし、アプローチのきっかけになる様です。オイル交換そのもので利益が無くても、車検等を獲得すれば利益がでる仕組みとなります。


🍀必ず自動車にあるイベント❗それは車検


✅車検の流れ

全ての車検実施業者が行っている流れではありませんが、ザックリとした流れを聞いてみました。


🍀受入検査(入庫検査)
受入検査では自動車検査証(車検証)に基づいた検査を行います。車検をはじめる前の事務手続きのような検査です。

✅車検証、旧自賠責、リサイクル券、納税証明書(納税確認)等の確認。
✅駐車違反金を未払いの場合は、車検取得出来ませんので、調査する為に同意書へのサイン。代車使用の場合は、万が一の事故の際に弁済義務が、お客様に発生する事に対しての了承のサインを頂きます。
✅お預かりする車両に傷やへこみが無いか、ガソリン残量等をチェックして書類に記載しておきます(後々のトラブル防止の為です)
✅車体番号やプレート番号などで車検証の車と現物車両が同一かを確認。

これは主に車検フロント担当が行います。

作業員や整備士が行うのは入庫後に
✅外観寸法、座席数が車検証どおりか、違反している箇所がないかを目視でチェックします。
✅車両を一通りチェック。
玉切れ、ベルト類の消耗具合、ガラスの状態、ワイパーの動作+ウォッシャー液が出来るかどうか、タイヤの残溝と状態、ブレーキパッドの残量、エンジンオイルの汚れや量、その他油脂類の状況や量などなどあるのです。
✅見積書を作成。
作業員が、交換が必要もしくは交換や整備がおすすめと思われる箇所について車検フロント担当と共有し、見積書を作成します。

見積書作成には、部品発生がする場合は、価格と納期を調べる必要がありますし、その内容も含めてお客様に連絡をしなければいけません。
※お客様がお仕事中等で連絡が取れない場合は、ここで一旦ストップ。
✅作業する点検整備の整備士への指示書等作成。
お客様との連絡が取れ、実施内容で了承を得た場合には、部品の発注手配だけでなく、整備士に指示書を作成していよいよ点検整備となります。

指示書を作成するのは、過剰整備を防ぐ意味もあります。点検記録簿に点検箇所をチェックしていくのです。これは多岐ありますので、割愛します。

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🍀中間検査
中間検査では作業指示書の内容に従って作業が実施されているか、見積り以外に追加事項が、発生しないかを検査します。

事前検査で他の工場の整備士や提携先の業者などが整備した箇所も間違いがないか、整備主任者がチェックを実施します。基本的に点検整備に基づいたチェックで分解整備をした後や受入検査時に整備ミスをしていないかのチェックも実施します。

🍀完成検査
完成検査では各種テスターや計測機械を使い、車検の保安基準に適合しているかを検査員がチェックします。

検査車両を検査ラインに通す
✅サイドスリップが、基準値内である事。
✅ブレーキ制動力、前後バランス、左右バランス等が基準値内である事。
✅スピードメーターとの実際の誤差が基準内である事。
✅ヘッドライトの光軸、明るさが基準値内である事。
✅排出される排気ガスが基準値内である事。
✅車検担当フロントは、納品書、OCRシートを作成し新自賠責保険へ加入。
✅各項目をチェックし車検合格なら適合証を発行しますが、各書類を全て間違いがないかどうか事業場管理者がチェックして、保安基準適合証(保適)を発行。

この保安基準適合証を発行するにも、闇雲に発行出来ませんので、事業場管理責任者の抱える負担は、大きいのです。

事業所によって手順や内容に違いがあると思いますが、かなり端折ってもこれだけの内容と人の手がかかっています。ここまで出来て車両をお客様へお返しする事が出来るのです。


🍀最後に精算業務と納車です。

指定工場の場合は、自社で車検を通します。納車時に新しい車検証が出来上がっていませんから、保安基準適合証がそれまでの車検証替わりになります。期間にして15日間だったと思います。

後日、車検業者は、陸運支局か軽自動車協会へ行き、新しい車検証を発行してもらい、お客様へ新しい車検証を引き渡して1台の車検がやっと終わります。


✅受入、中間、完成検査、保適発行で45分😅

今回トヨタ自動車系列の販売店が不正車検となったのは、分解整備や追加整備以外での各検査の流れを45分で行うというものでした。

年式の新しい車であれば、実施は可能かも知れませんが、かなり無理があるのが実情のようです。車検基本料金は、ある程度の相場で決まっていますが、格安業者の場合は、この流れを9500円程度で行うところもあります。


理論上、多くの件数を実施すれば、利益は得られるのですが...。

トヨタ自動車系列の販売店で6600台を超える規模で不正車検が行われていたことが29日、明らかになった。背景には、作業時間の短縮や、人手が不足するなかで職場に過重な負荷がかかっていた実態がある。

私に話をしてくれた整備士によれば、記事にもあるように「無理をさせた...」というのは「何を今さら」という感想でしかないそうです。


自動車ユーザー全てが車に詳しいとは限りません。

しかし、所有する車両のメンテナンスは、所有者(使用者)の責任です。自分でメンテナンスが出来ない場合は、業者に委託して管理するというのが通例なのですが、その委託された業者が、効率を重視するあまり、整備を行わなくなっているのです。

(こんな事がある...については、機会があれば記事にします)


✅整備料金は相場が決まっている❓

標準作業点数表や作業点数表(指数)というモノがあり、その車両のどんな整備が、どの位の指数なのかが、示されているのです。

1時間当たりの工賃指数

FAINES会員ならば、オンラインで見れます。

例 Vベルト全数交換 0.7の車両。

その工場のレバーレート(1時間当たりの工賃)が、6,000円としたら、0.7x6,000円ですので、4,200円となります。これがレバーレート10,000円ならば、同じ車両で同じ点数でも7,000円となります。

この指数は、厳密に適応されている訳でもなく、レバーレートもその工場によって違いがあっても違法ではありません。高くも安くも出来てしまうのです。


✅車検基本料金

車検は、儲かるのでしょうか。

車検には、車検基本料金の他、下記の料金がありますが、利益が出るのは、車検基本料金によるところが大きいのです。

「法定費用はどこで車検を取得しても変わらない」
✅重量税 利益なし
✅自賠責保険料 1件獲得で利益1600円位(契約による)
✅印紙代 利益なし

※追加整備や部品が発生すれば、工賃や部品代から利益は出ます。


定期点検料 、完成検査料 、代行手数料のように表記される場合もありますし、一括して車検基本料金と表記される場合もあります。

🍀要は、その工場で車検時にどの位の費用を請求するかという料金。
※追加整備や部品代は除く、法定費用は別途

車種にもよりますが、車検基本料金の価格設定の幅が広いのです。1万円前後もあれば5万円以上というところもあります。


✅安い車検は駄目ですか❓

格安車検業者の全てが、駄目と言うのではなく、安い料金=台数を行う事で利益を出すと言うビジネスモデルです。扱い件数が多ければ、工員数も多いので、一度に多数の車両を点検整備できる体制にもなっています。


🍀安い=一概に安全性が低いという事はないです。
🍀車検は基本点検箇所が法律で決まっていますし、基準があります。


その業者が、しっかりと点検や整備を行っている事が、前提なのは言うまでもありません。

ただし闇雲に回転率を上げる事だけに集中すると、何かが疎かになっている可能性もあります。どのようなサービスでも「安く出来るには安くなるだけの理由」があるのです。

✅項目は同じでも、かける(かけられる)時間が違うのです。

個人的には、きちんと時間をかけて、点検や整備をしてくれる業者の方が、安心感があります。


✅そもそも車検は必要❓

皮肉な事に、今回の不正車検で事故等の報告はないそうです。

特に新車1回目の車検等、年式が新しく低走行な車は、細かく点検しなくても「安全性に関わるケースがほとんど無い」とも言えるのです。

車検に関わる定期点検もチェック項目が多く、書類の遣り取りが多いのも現実のようです。車の信頼性も向上しています。車検制度そのものが古く見直した方が良いと思うのです。

車検制度が無くなると、故障車両で円滑な交通の妨げになるなどの懸念はありますが、定期点検を2年毎にするなど簡素化した方が良いと思うのです。税金も保険も手数料も全て定期的に徴収されるシステムの負担感は、大きいと思うのです。

自動車社会であるアメリカでさえ、簡素で安いのです。

さらに毎年徴収される自動車税も不要と思います。自動車業界を外部から見ている私でも、日本の基幹産業であり雇用も多いのに、自動車となると目の敵にされているような気がしています😅



✅法定費用が高くないですか❓

車検代金が高く感じる原因は、法定費用の高さです。


とある人は言いました。

✅自動車税を払っているか、払っていなければ税金を回収し。
✅国家資格取得して、薄給で夜遅くまで整備し。
✅書類や紙の遣り取りが多いし、印鑑だ、日付だ、訂正印だと細かい。
✅お客様から、車検代が高いと言われ。
✅「そりゃ、法定料金が高いから」なんですよ。
✅纏まった各種印紙を購入する時に支払う金額の多さ...で溜息。

どうやら、ここ、こそAiやDX推進しないといけなさそうです😁


そんな、おじさんの話でした。




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