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プロジェクトチーム チームアップTips #2|頻度高くチームメンテナンス

今日は、チームが最初に立ち上がった時に、まずやるべき基本中の基本…「頻度高くチームメンテナンス」です。

難易度 ★
効果  ★★★


使うタイミング

  • 毎回のミーティングの冒頭

  • (2時間以上の長めのミーティングの場合)1時間〜1.5時間に一度


やり方

一言で言えば、これは「チームの関わり合い」に関して、振り返りをして、意図を設定し直すことである。具体的な問いかけは、2段階ある。

1段階目: チームを振り返る問い

  • 前回以降、チームの関わり合いとして、うまくできたな〜と思ったこと

  • 前回以降、チームの関わり合いとして、まだまだだな〜と思ったこと

上記が十分にされた段階で、2段階目に移行します。

2段階目: チームのアクションを設定する問い

  • この後の会議をより有意義にするために、ここにいる一人一人が、この場に持ち込みたい約束はなんでしょうか?

  • あなた自身が、その約束を果たすために、周囲にリクエストしたいことは、何ですか?

自分が意図的に行うこと。そしてそのために周囲にリクエストしたいこと。この2つを明確に言葉にしていくことで、チーム力向上のためのアクションを協働で取りやすい環境を作り上げて行きます。


進行の例

毎回のミーティングの冒頭

(会議の文脈と趣旨の目線合わせ)
「じゃあ、今日のミーティングに入って行きたいと思いますが、その前に、前回は〇〇をしてきました。今日の会議の目的は、〇〇です。この活動全体の中での位置付けでいうと、〇〇です。で、今日は、〇〇のような流れで進めて行きたいと思います。」

(何をやるのか?)
「で、中身に入って行きたいのは山々なんですが、その前にチーム力を意図的に向上させて、この後のディスカッションをより有意義なものにするために、チームとしての振り返りを行います。」

(何故やるのか?)
「このチームは、組成してまだまだ日の浅いのチームです。普段一緒に仕事をしていないチームです。お互いの強み・弱みもわからなければ、役割も曖昧で、どうお互いに関わり合えば、お互いが気持ちよく成果を出せるのかが、まだまだ手探りな状態です。プロジェクト期間も〇〇ヶ月と決して、長い時間ではありません。このチームが、この短期間で、より高い成果を出すためには、意図的にチーム力を向上していく必要があります。」

(何が得られるのか?)
「このチームの振り返りをすることで、より効果的な関わり合い方がわかるようになります。」

(チームの振り返りのインストラクション)
「この後、2〜3人に分かれていただきます。そして、以下について話し合ってみてください。

⚫︎前回以降、チームの関わり合いとして、うまくできたな〜と思ったこと
⚫︎前回以降、チームの関わり合いとして、まだまだだな〜と思ったこと

時間は5分とります。戻ってきたら、全体でシェアします。重要なポイントとしては、『業務進捗が遅れている』とか、『アウトプットの精度が低い』などのコンテンツの話ではなく、『チームとしてお互いの意見を尊重し合えている』『チームとしてお互いの意見を尊重し過ぎるあまり意思決定ができなくなっている』など、お互いへの関わり合い方という視点での振り返りをしてみてください。それでは、どうぞ!」


(チームの振り返りのデブリーフィング)
「はい、お帰りなさ〜い。いかがでしたでしょうか?それでは、まず「うまくできたな〜」というところから行きましょうか?準備できたチーム、ぜひ他のチームにシェアしてください。」

<出てくる答えの例>
⚫︎"お互いの強み・弱みが朧げに見えてきて、役割が見え始めた"
⚫︎"皆、受け止める力や傾聴力があるので、安心して話せる関係"
⚫︎"どんなに突っ込んだ質問でも、嫌な顔をせずに答えてくれる"
⚫︎"コミュニケーションツールが立ち上がった"

<運用上の注意>
※出てきた声は、見えるようにする(ボードやチャットに記録)
※小さいことでも、褒めて祝福する(小さな成功体験の積み上げが、チームの肯定感を飛躍的に向上させる)
※勢いに乗って「まだまだだな〜」の声が出てくることが多々あるが、そこは優しく・ユーモアを交えて止める。

「はい、皆さん素晴らしいですね。僕からみていた視点で、いくつか付け加えると、〇〇という点と〇〇という点も、このチームの素敵なところじゃないかな?と思いました。じゃあ、引き続き、「まだまだだな〜」という声に行ってみましょうか?いかがでしたか?どんな話がありましたか?」

<出てくる答えの例>
⚫︎"自分が話し過ぎていて、他のメンバーが話せなくなっている"
⚫︎"ミーティング間のコミュニケーションも大事なのに、会話していない"
⚫︎"なかなか意思決定ができない。"
⚫︎"自分がリーダーとして役不足なんじゃないか?と心配になり出した。"

<運用上の注意>
※出てきた声は、見えるようにする(ボードやチャットに記録)
※どんなことであっても、「そういう視点もあるんですね。」「そういうのありますよねぇ」と受け止める
※もし誰かの誹謗中傷になった時の対応方法は、後述する

「はい、皆さん素晴らしいですね。もうね、皆さんの「まだまだだな〜」を聞いていて思ったんですが、これって、チームとしての改善欲があって、より良いチームになることに貪欲であるということではないでしょうか?これは「うまくできたな〜」だと思いますよ。

さてさて、ここまでで一旦振り返りが終わりました。この後、ディスカッションに入ってきます。ただ、この後のディスカッションをより有意義にするために、ここにいる一人一人が、この場に持ち込みたい約束はなんでしょうか?

<出てくる答えの例>
⚫︎"「わからないことは、わからない」と答える"
⚫︎"意思決定できない時は、リーダーである僕が決めます。"
⚫︎"相手の話を丁寧に聞くだけじゃなく、あえて振ってみるようにする"
⚫︎"異論がある場合は、遠慮せずにそれを言葉に出して話し合う"

「はい、ありがとうございます。で、最後の問いです。あなた自身が、そんな約束を果たすために、周囲にリクエストしたいことは、何ですか?

<出てくる答えの例>
⚫︎"「わからない」と答えた時は、一緒に考えてほしい"
⚫︎"僕が意思決定した時は、全力でフォローしてほしい"
⚫︎"ガンガン質問するので、嫌だと感じた時は、それを言葉にしてほしい"
⚫︎"異論を唱えていることにチャレンジするので、暖かく受け止めてほしい"

「はい、ありがとうございます。じゃあ、早速中身に入ります!皆さんの約束とリクエスト、忘れないでくださいね!どうぞ!」

ミーティングの途中

「はい、ここまでお疲れ様した!時間も1時間半経過したので、ちょっとここらで休憩を入れたいと思っています。10分後に戻ってきてください。」

「はい、お帰りなさ〜い。で、早速、後半の議論の入って行きたいのですが、その前に、ここでもチームの振り返りをします。前半の議論をしてみて、どうだったのか?何がうまく行ったのか?何がまだまだなのか?そんなことについて話してみたいです。で、それを話したら、後半の議論に向けて、お互いどんな関わり合いがあるとより効果的なチームになれそうか?を話して、後半に臨んで頂きたいと思います。

いかがでしょう?前半、うまく行ったことはなんでしたか?前半、まだまだだな〜と感じたことはなんですか?

では、後半の議論に向けて、改めてあなたはどんな約束をこのチームに持ち込みますか?その約束を守るためにも、周囲にリクエストしたいことはなんですか?

「では、そんな約束を守って、後半の議論をどうぞ」


効果

効果1: チーム立ち上がりスピードが上がる

お互い普段違う環境で仕事をしている人たちが、初顔合わせに近い形で協働をはじめるからこそ、お互いへの関わり方はわからないものです。

個人としての振り返りであれば、何が良くて、何がチャレンジなのかは、よりわかりやすいでしょう。しかし、チームとしての関わり合いは、人と人の間にある「関係性」にその要因があるため、個人としての振り返りだけでは、チーム力向上につながって行きません。

その見えない「関係性」について、個人で色々気を遣ったり、忖度したりしながら、双方への関わり合いを探り探りながらチーム組成して方法はありますが、気を遣ったり、忖度したりすればするほど、それが却ってズレていくことにもなります。時には、早い段階でチームに乗り切れず、周縁化して、ドロップアウトする人も出てきます。

それであれば、早い段階から、人と人の間にある「関係性」について、オープンに話し合い、「チームとしてより良い関わり方」を早期の段階で作り上げる習慣をつけ、そのチームの文化に変えていくことで、みんなでこのチームの文化を共に創り上げているという自覚を形成することができます。

そしてその習慣化こそが、チームとしての早い立ち上がりを促し、必要に応じてお互いへの関わり方を常にアップデートし続けることができます。

効果2: チームの心理的安全性の向上に繋がる

チームとしての振り返りをすることは、時には気まずい話、言い難い話をすることにもなります。しかし、チーム組成の早い段階から、徐々に慣れていくことで、「言いづらいことを率直に言っても、このチームであれば、必ず受け止めてくれる」という信頼関係を形成していくことができます。

それは徐々に、心理的安全性を高めることにもつながり、いずれ高いチーム力の形成に役立ちます。



参考: 誹謗中傷の時の対応

チームの振り返りの時に、「まだまだだな〜」のパートで、誰かの誹謗中傷が出てくることがあります。

誹謗中傷は、とても緊張感が増すタイミングです。一方で、誹謗中傷を乗り越えると、実はチーム力が飛躍的に上がるチャンスでもあります。「雨降って地が固まる」です。ハンドリングは、慎重さを求められますし、ある種ここがファシリテーターのアートな部分でもあるので、言語化が難しいところもあります。

ただ、チーム力向上のための好機と捉えて臨んでもらいたいので、架空のケースを想定して、いくつかTipsを書いてみます。

<架空のケース>
Aさんが、「Bさんがリーダーとして機能していない!」というフィードバックをしてきた。

<Tips>
⚫︎Bさんを保護しながら、Aさんも受け止める
「なるほど、Aさん(発言者)は、Bさんがリーダーとして機能していないと感じていらっしゃるんですね。」と復唱し、あくまでもそれはAさんの見解であることを強調する。あくまでAさんの見解であるということを強調することで、Bさんを保護しつつ、Aさんをも受け止めます。

⚫︎Aさんのエネルギーをファシリテーターに向けるようにお願いする。
必要であれば、Bさんには少し椅子を後ろにさげてもらい、Aさんの椅子をファシリテーターに物理的に向けてもらう。(オンラインであれば、Bさんをビデオオフにする)

⚫︎主語を自分にして、対象を人から行動・態度・考え方に修正
その上で、「私は、〇〇(対象人物)の〇〇(行動・態度)について、〇〇のように感じている」と主語を自分にし、(対象人物そのものではなく)対象人物の行動・態度・考え方に対して、感想を述べるようにお願いをします。(例: 「私は、意思決定の必要性が迫られている状況下でのAさんの優柔不断な態度に、リーダーとしての役割不足さを感じています。)

⚫︎問題行動の解像度を上げる
問いかけによって、問題行動の解像度を上げる。(具体的には、どの場面でそれを感じたのでしょうか?どの行動や態度を見て、そう感じたのでしょうか?)

⚫︎Aさんの気持ちを表面化させる
問いかけによって、Aさんの中の気持ちを言葉にしていく。(それによって、Aさんはどんな気持ちになっているのでしょうか?、Aさんにとって、その何が残念なんでしょうか?Aさんのその感情の裏にある願いは何でしょうか?)

⚫︎Bさんがどう受け止めたのかを確認する
Bさんに話を振る。(今の話を聞いているのは、どんな体験でしたか?何を感じていましたか?)

⚫︎AさんとBさんの協働関係を構築する
最終的に、AさんとBさんの間を行き来しながら、「意思決定を効果的に行う」という目的のために、お互いがどう協力し合えるか?という点に焦点を当てていく

…と、こんな感じで、丁寧に書いてましたが、僕が本当にやるとしたら…

「意思決定を迫られる場面において、Aさんが優柔不断になってしまうことが、Aさん1人で引き起こしているのではなく、このチーム全体でそのような状況と作り出しているとしたら、それはなんでしょうか?」

「あなたは、それにどのように加担していると思いますか?」

…と、チーム全体に乱暴に問いかけてしまうかもしれません。



騙されたと思って、ぜひチャレンジしてみてください!


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