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葬儀とコロナ

先週、父が亡くなった。
急逝だった。
山形で荷物をおろし、那須で積んで当日便で稲敷におろし、次の荷物を積にいく途中での訃報だった。
トラックを車庫に置き、慌てて病院にいく。
コロナ対策で親族とはいえ、すぐには会えない。
結局、俺が父に会えたのは、葬儀屋が自宅に運んでくれた後だった。

すっかり小さくなってしまった父の体。
死に顔は安らかだった。
死因は心筋梗塞。
去年の年末にコロナに感染し、正月明けまで入院して退院。
だが、あまり体調が優れなかったため、再度入院した次の日の急逝だった。
元から基礎疾患があったため、コロナに感染したことによる合併症だろうと言われた。

人間は、こんなにもあっさり死んでしまうんだな…
その時は、悲しみより驚きのほうが大きく、慌ただしく葬儀の準備をするために、家族は悲しみに浸ってはいられなかった。

葬儀の準備の最中。
今度は俺がコロナに感染し、高熱を出した。
高熱だしコロナだし、本葬に出席することはできなかった。
簡易キットで調べたら、コロナは陽性。熱と息苦しさ。
下半身が筋肉痛のように痛くて、足に力が入らない。
寒気と、まるでカッターの刃を飲み込んでるような激しい喉の痛み。
コロナは思ったより酷い症状だった。
週明けに病院に行き、やはりコロナと診断され、一週間の外出禁止令が出された。

熱と喉の痛みにやられたあと、やっと起き上がれたのは3日後のことだった。
あまりにも喉が痛くて食欲もないが、とりあえず何か食べないと…と思って、ふとたまご焼きを作り始める。

その昔、具合を悪くして父の家に行ったら、父は、たまご焼きを焼いて食べさせてくれた。
味噌汁と柔らかめの白飯とたまご焼き。
妙に美味かった、父のたまご焼き。

自分で焼いたたまご焼きは、父のたまご焼きの味ではなかった。
だけど…涙が溢れて止まらなくなった。

お父さん。
葬式すら出てやれずに、ほんとごめん。
お父さん。
ありがとう。
あの時のたまご焼き、ほんとに美味かったよ…

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