トラックドライバー怪談8『憑き纏う者(2)』
[2,白い顔]
トラック運転手の朝は早い。
早朝どころか、深夜に出発することなんてざらだ。
その日は早朝3時に出庫して、とある高速道路を走っていた。
だが、その日、俺は急激な眠気に襲われていた。
気を抜くと、一瞬で意識が飛びそうになる。
これはヤバい…
どこかのパーキングでコーヒーでも買おう。
そう思って、一番近かったPAに立ち寄ることにした。
ウィンカーをあげて、減速しながらPAに入る。
大型駐車スペースが一箇所だけ空いていたから、ふらふらしながらそこにトラックを止めた。
異様なほどの眠気だった。
気を抜くと意識が飛ぶほどのレベル。
ちゃんと寝たはずなのに、この眠気は異様だ…
そう思いつつ、PAのコンビニにコーヒーを買いに行こうと、寝台に置いてあるバッグに手を伸ばす。
ふっと横をむこうとした時だ…
そいつは…
なんの前触れもなく、なんの気配もなく、そこにいた…
「っ…!?」
俺は思わず固まった。
声も出せないまま、そいつと正面から向き合ってしまった。
早朝の薄暗い闇。
キャビンにはメーターの淡い光だけが浮かんでいる。
仄暗い闇の中、俺の目の前に浮かんだ、顔。
ぼんやりと、真っ白な顔が俺の目の前にある。
緩いウェーブの髪。
その下にある、真っ白な顔。
だが、その顔には、目も口も鼻もない。
のっぺらぼうの顔。
跳ね上がる鼓動を抑えるように、俺はハッとそいつから目を離して、ハンドルを見る。
寝ぼけてるのか俺?
今のなんだ?
顔?
のっぺらぼうの顔が浮かんでる?
まじか…
いや、これは眠気で見てる夢か?
俺はそんなことを思って、わずかばかり考えこむと…夢か否か、それを確かめるために、もう一度、ゆっくりと寝台の方を振り返る。
「っひ!」
思わず変な声が出た。
夢か幻覚かと思ったが、どうやら、そいつは現実にそこにいた。
薄暗い空間に浮かんだ、顔。
先程と同じように、顔のパーツのないのっぺらぼうが、そこにあった。
なんだこいつ!?
俺は慌てて財布を掴み、転げ落ちるように運転席から外に出た。
慌ててコンビニに走る。
一体なんなんだ今のは!?
混乱した頭がフル稼働するが、さっきのあの顔が一体何者なのか理解できる由もない。
これを堺に、そいつは、怯える俺をあざ笑うかのように、頻繁に俺の元に現れるようになる…
〈ToBeContinue〉
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