できることから始めよう 〜 「生成AI未使用マーク」の提案
創作の世界における生成 AI を取り巻く問題は日々深刻度を増してきています。
上記の記事を書いてからまだ数日しか経っていないのにも関わらず、ゴールデンボンバーの鬼龍院翔さん、プリキュア 20 周年グッズ、島本和彦先生の発言など次々と新たな炎上が発生しており、収束が全く見えてきません。
このような状況が続くことは創作・同人界隈にとって非常に好ましくないと考えます。実際私が生成 AI 問題に言及するようになったのも公式許諾済みの同人イベントに参加を申し込んだものの、私自身がソフトウェアエンジニアという仕事をしておりプログラミング補助や翻訳に生成 AI を利用している現状で、生成 AI に否定的な方の多い世界に足を踏み入れることの是非について考えたことがきっかけでした。 (詳細については 生成 AI と創作・同人文化の問題を真正面から考える をお読みください)
様々な議論や意見を読み私的に考えた結果、法的整備や議論が進むまでの一時的な解決策として "生成 AI 未使用マーク" というものを提唱すべきではと考えました。
"生成 AI 未使用マーク" の意図
"生成 AI 未使用マーク" は自身の創作において生成 AI を一切利用していない
ことを示すためのマークです。生成 AI を利用していないことを自主表示する目的があります。
マークを表示することで、制作側は生成 AI 利用を明確に否定し疑惑を持ちかけられる可能性を低減すること、作品を享受する側は何かと問題視されがちな生成 AI を利用していない作品を選べるようになることを意図しています。
この "生成 AI 未使用マーク" は様々な問題を抱えていますが、少なくとも、今できることの中では最善の手段なのではないかと思うのです。
オープンソースライセンスと生成 AI 未使用マーク
前述の通り、私はソフトウェアエンジニアとして企業で働いており、業務野中でオープンソースライセンスのソフトウェアを利用することも多々発生します。
オープンソースライセンスについての詳しい説明は省略しますが、要するに "著作権は作者に帰属するが、条項を守った利用方法であれば権利行使をしない" というルールを表明したものです。
では、創作の分野でも生成 AI 未使用マークなんて回りくどいものを使わず著作権を行使すれば良いのではないか、という発想になるかと思いますが、少なくとも二次創作の世界においてこれは不可能という現実があります。というのも、オープンソースライセンスは著作権を法的根拠としているためです。著作権上のグレーラインにある二次創作物で権利を行使することは困難です。
一次創作であればクリーンであり、オープンソースライセンスと同様の体制を取れるのでは?という疑問があるかと思います。これは確かにそうであり、創作物を販売 (権利的にクリーンであるためここでは頒布という言葉を使いません) する場合に利用許諾契約に同意させることで訴訟を行う際の有力な材料になるかと思います。
では著作権上グレーなラインにある二次創作の分野では生成 AI を無条件で受け入れるしかないのでしょうか。そうではないと思います。日本における二次創作は既に文化の領域に達していることにも留意が必要でしょう。以前の記事を読んでいただければ分かる通り、権利者側もこの暗黙の文化による運用を肯定している部分すらあるためです。
著作権的にグレーである二次創作の分野で生成 AI に対して行える唯一の対抗手段は、創作者、享受者の両者が生成 AI を利用して作られた物を避けていくくらいしかないと言えます。生成 AI 未使用マークは手っ取り早くそれを行うための手段として最も合理的なのではないでしょうか。
Q&A
マークがダサすぎるのでなんとかしたい
歓迎しています。筆者 のX (旧: Twitter) まで連絡いただけると助かります。
筆者は AI 推進派?規制派?
前述の通り筆者は既に生成 AI を業務・趣味の分野で活用しています。一方でイラスト生成に用いることについてはどちらかといえば否定的な見解です。ただしこれは単に自分の好きなイラストレーターが生成 AI で筆を折ったからという超主観的な理由からです。ぶっちゃけ人間なんてそんなもんだと思います。
自主表示だと未使用と偽れるのでは?
その通りですが、あくまで生成 AI を排除する目的は達成できると考えています。疑わしければ誰かが検証し糾弾するでしょう。糾弾の是非については議論の余地がありますが、生成 AI 登場以前よりトレス疑惑等でほぼ同様なことが起きており、生成 AI に起因する問題ではないと考えます。
そもそもグレーな二次創作を守る必要なんてあるの?
権利者側で黙認の上推奨している例があり、コミックマーケットやサンシャインクリエイション等の大規模な即売会が継続して行われている(社会的に許されている)以上、守られるべきだと考えます。
無断学習禁止も盛り込むべきでは?
無断学習の禁止については、著作権法30条の4の存在を根拠として現行の法律上合法であるという見方が強く、またマークの当初の意図とも外れることから盛り込みませんでした。個人的にもこれは法律の改正を訴えていくべきで、文化や自治で扱うべきではない問題に思います。
その他質問・提案などがある
X (旧: Twitter) やコメント等で連絡いただけると助かります。
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