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『アンダー・ザ・シルバーレイク』

原題「Under the Silver Lake」

◆あらすじ◆
無為な日々を過ごす無職の青年。ある日、彼は向かいに越してきた美女に恋をし、デートの約束を取りつける。だが、彼女は前触れもなく失踪。もぬけの殻となった部屋で妙な記号を見つけた彼は、真相究明に乗り出す。


なかなか、からかってくれるノォ(笑)
(今回は書きたい事がいっぱいで長〜くなっちゃうなぁ。)

前振りが【ヒッチコックでデヴィッド・リンチ】なんてあるから「これは観なきゃ」って足運んだわ!

冒頭から『BEWARE THE DOG KILLING』なんて怪しげなキーワードぶっ込んで来てさ!

面白いんだか面白くないんだかちっとも分からんちんだけど最後まで引っ張り回された! ww

結局は田舎から出てきたけど職にも付けず家賃催促ばかりされてる超暇人のサムが、一夜にして忽然と消えた一目惚れの女の子を必死で探す過程の謎解きに付き合わされるって事でイイですか?(笑)

でもあれよあれよと引き摺り込まれて、行き着いてみたら【現実】では結果オーライか?みたいなね。
あれさ、あの中年女とネンゴロになってヒモ状態になりそうな終わり方だと思ったのはアタシだけじゃない筈。
でも、これが主人公サムが妄想世界と決別して現実に向き合う決意みたいなものに感じた。

とにかく、都市伝説や架空(妄想)世界、及び検証・考察好きは嵌る一作。

それとD.リンチ好きは好みかもな。
映像の彩色は「マルホランド・ドライブ」なんかを思わせるし(でもあそこまでキツくない)
確かにヒッチコック風味あるわ。大好きな『裏窓』とかその他【風味】がね。
SEの使い方も然り。
あの何でもないシーンでかなりサスペンス感溢れる効果音やBGM嵌め込んでそれ風に仕立ててるの結構面白かった。で過ぎてみたら別に怖くも何ともないただの日常だったりねww
そう、この映画が面白いのはただ気にせず通り過ぎてしまえばただの【日常】だけどちょっと視点を変えてみたら摩訶不思議な世界に入り込んでしまうって事。

まるで現実と背中合わせのパラレルワールドを彷徨うが如く展開されるストーリーには何にでも答えを求める想像力や創作力が欠如した今の思考の貧困さに【この世のものは答えなんて出せないものばかりなんだから】っつー根底のメッセージが在って、そう言う目線で映画撮ってる監督が居るのがなんだか嬉しい。
オイテケボリになってもイイ映画だって事だね。

その上、かなりポップカルチャー盛り込まれてるから細部が楽しい。
序でにバイオレンスもあるのが好み。

音楽は言うまでも無く素晴らしかった!
エンディングで流れるR.E.M.の『Strange Currencies』は沁みる。
何処かで読んだけどこれと劇中に使用されてる同R.E.M.の『What's the Frequency, Kenneth?』はカートが自殺した同年(1994年)に発表されたアルバム『モンスター』に収録されてるらしい。
確かにカートとマイケル・スタイプは友好関係だったみたいだしね。


とにかく、これからの映画への期待値は上がる。
ガンバレ!デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督!!


それにしてもアンドリュー・ガーフィールドの俳優としてのポテンシャルの高さがまた一段と見えたよね。仕草や視線、表情のどれ一つとっても凄くてそれもあっての引き込まれ感だったと思うよ。あのサムのダメっぷり見てたら彼の『BOY A』を思い出した。全然違う役だけどはまり込んで演じてる雰囲気は同じ。アンドリューがサム(のオタクぶりw)に実存感を与えてるからこの馬鹿みたいに混沌としたカオスな物語が普通に観られてしまったんだって思ったよ。
素晴らしかった!!
また次回作楽しみだわぁ。

でも140分必要だったかな?とは思う。



★ネタバレとキーワード達★


23
カート・コバーン
犬殺し・Beware the dog killer
フクロウ🦉
コヨーテ
Jesus & The Bride of Dracula
逆再生
セレブ↔︎ホームレス
天↔︎地
上↔︎下

などなど、まだまだあるけど…。

主人公がカート・コバーン好きで後半に世界の名曲と言われるものは全て自分が作ったって言うソングライター爺さんが出て来るんだけどその頭をカート・コバーンのフェンダー・ムスタングで殴り殺すバイオレンスシーンがあったり(このシーン好きだった)・・・実際カートは自分の頭を撃って(ぐちゃぐちゃになって?)死んだわけだけどその辺を意識しての演出なのか?とかカートはあの『ニルバーナ』(涅槃)と言うバンド名にした途端ヒットが生まれる・・・ヒットメーカーとしての自分への巨大産業との葛藤、「自分は商品じゃない!」と言う主張との狭間で苦悩し精神的に病んだ経緯を考えるとヒットメーカー達が【ソングライター】に魂を売ったと言う業界の主観が否定されるシーンでもある。しかしこの一連のシーンはミュージシャンを目指して上京したと思われるサムの意思決定みたいにも捉えられる。

それと不気味なフクロウや犬殺しも結構耳にする都市伝説。「犬殺しは人も殺すかも」って台詞あるけど実際殺人鬼がその場所に表れたりって言う事がまことしやかにアメリカでは言われてるとか??

あと、これはかなり気になったんだけどこの映画に登場する【上・下】【天・地】【セレブ・ホームレス】みたいな上下の図式。

サム自身が夢を求めて上京し(さすがセレブの街)割りと思ったよりイイ部屋に住んでていつもプールを見下ろしている。でも実際は家賃滞納で立ち退きを迫られててもう目の前にホームレスな自分が迫ってる。この映画のシーンで空を見上げたり上から何か不吉なものが降って来たり(冒頭の小動物グシャリなシーンはちょっと面白かったけど・・・)と天地を対照するシーンがかなり登場する。それはサムの状況にもしっかり関わってて結局最後のシーンは自分が無意識に作り上げてきてしまった妄想世界への決別・・・振り回されてきた自分を拭い去り意思を以てあの中年女性の部屋へ一歩を進めるって解釈出来ると思うわけ。そして視線の先の【HOLLYWOOD】の看板文字。はぁぁ、やっと馬鹿げた架空世界から抜け出して現実に向き合うって事でよろしいかな?自室の【◇◇=静かにしろ】はもう俺にかまうな?とか放っといてくれとかって意味にも捉えられる。自分はもう画面の向こうの女は追いかけず生身の女を抱いてるから現実に戻って来たってね。で、取り敢えず、熟女のヒモになるってか?笑わせんなよ!!ww

結局、暇が過ぎて自分が作り出した妄想に振り回されただけって捉え方も出来るのがこの作品。物を見る視点は幾つもあるからどう見るか?どう考えるか?でいくらでも現実離れした解釈に嵌れる。答えを求め過ぎるあまりに無限の妄想世界に陥る。
嵌り過ぎると・・・・こわ~~~


セレブ女性とお散歩中ホームレスと遭遇するシーンがめちゃ好きだった。あのシーンでサムは1セントもホームレスに渡さない。セレブさんが次はいくらかあげてって言うんだけど「いやぁ、アンタの隣で手を繋いでる男ももう直ぐホームレスだぜ」ってココロの中で呟いたね。

現実と空想のパラレル世界・・・結構楽しめたね。


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