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はじめての声優学入門*4時限目「言語3兄弟の実践」

4時限目!今週も張り切ってい楽しんでこー!と言う事で今回の講義は前回お話ししました音声が伝えていると考えられている3つの情報「言語情報」「パラ言語情報」「非言語情報」を例題の台本や音声で確認しながら実践的に理解を深めていきたいと思います!これで君はまた言語神拳伝承者候補にまた1歩近づくのだ。


■前回の復習
(1)音声が伝えている情報は「言語情報」「パラ言語情報」「非言語情報」
(2)3つの情報の定義は以下である。
・言語情報とは書き言葉として起こす事ができる「メッセージ」=演技だと台本
・パラ言語情報とは意図的に話者が表現する「感情」「態度」
・非言語情報とは「年齢感、性別感、個人性など」話者が制御不可能な情報=演技だとキャラクター。

今回みなさんには色々な問題を挑戦してもらう形で実践的に3つの情報への理解を進めていただきます!座学だけ、実践だけよりも座学&実践が絡み合う手法で学ぶ事で座学の理解も技術の向上も相互作用で高まると僕は考えるからなのです!あと単純に楽しいと思います!では早速挑戦スターーート!!


●問題1  次の文章を読みこの台本(言語情報)から受け取る事のできる情報をあげてください(実際に紙に書いてみてください、もちろんスマホやPCに打って頂いてもです。書いておくと何があっていて何が抜けていたかわかります。そして声優学は勉強なので書き残して後で復習する事が大切です)

例文:「誘拐犯?俺が?俺の名前はブライアン。聞いた事ないか?これでも伝説のミュージシャンって言われてたんだぜ」

それではスタート!(書き終わったら次を読み進めてくださいね)


おっと、書いてないのに(100歩譲って考えてくれたらまだ良き) 読み進めようと思ったあなた、せっかちさんなんだからもう🖤
書いてくれた方、では答え合わせしていきましょう。

◉問題1 考え方
台本(言語情報)から読み取れるのは
1.名前はブライアン(またはブライアンと言う名前を名乗ってる人)
2.日本語を話す(ただし日本語の流暢さ加減は不明)
3.「俺」と言う一人称や語尾の「ぜ」から男性、もしくはそのような一人称や語尾を使う個人性を持つ
4.誘拐犯か疑われている(本当に誘拐犯か否かは不明)
5.伝説のミュージシャンと言われてた(自分が思ってるだけかもだが)

と言った感じでしょうか。
とはいえ、前後の文脈や全体のストーリー、キャラ設定がないといくつかは確定情報とは言い切れない感がありませんか?推測の域を出ないと言いますか。このように設定や前後の文脈がない短い文章だと言語情報だけでは全体像を的確に捉えるのには無理がありますよね。事務所に入所する為のオーディションで提出する(または入所後にWeb siteに掲載する)ボイスサンプルはこのような文章の形も多いかと思います。実際の役柄のオーディションでもそこまで設定が説明されず台詞を読む事もあります。ですのでしっかり自分自身で足りない部分を想像、創作して演じていかないと演技力として不完全となるのがわかるでしょうか?逆に言えばそれだけ演じるキャラクター、感情は自由と言う事です。と言う事はここが周りの人と差を付ける、自分をアピールするポイント、いわゆる引き出しですよね!自身で想像、創作して補うべきもの、引き出しとなるのが「パラ言語情報」と「非言語情報」となる訳です!

では、次の問題に進みましょう!


●問題2
ここから問題2と問題3と音声を聴いて考えていく課題です。準備として紙に以下のように表を書いて用意をしてください(スマホの場合はメモなどで自身がわかる形で大丈夫です、3つの情報と、上段と下段に分けてもらえたらです。)

準備ができたら、次の音声を聴いて「パラ言語情報」「非言語情報」が何かを考えて作った表へ各項目ごとに書いてみましょう。


◉問題2 考え方
1.言語情報は台本の「誘拐犯?俺が?〜(以下省略)」である。
2.パラ言語情報(感情)を聴き取る。この声から伝わる、感じる感情は何か?どの台詞の時にどんな感情があり、この一連の台詞の中でどのような感情の流れがあるか。
3.非言語情報(キャラクター)を聴き取る。この音声から受け取る事のできるキャラクターにどんな個人性を感じるか。

上記の特に2のパラ言語情報である「感情」と、3の非言語情報であるキャラクターがそもそも持つ個人性、性格などを混同しないようにできると練習になるかと思います。あくまで「性格や個人性が音声に乗っている部分と、その個人性を持つ人がどんな感情を表現しているか」と考えていく形です。

実はこちらの台詞は僕が2012年に演じさせてもらった「TIGER & BUNNY THE LIVE」のブライアン・ヴァイと言う役になります。
その後 2016年の「SOUND OF TIGER & BUNNY」で一部をまた演じさせてもらいましたが、そに時ぶりの6年ぶりに発してみました。ストーリーと作品の世界観、キャラ設定が気になるーって方はどちらもBlu-rayとして発売されてますので観てみてください(宣伝か!)。そしてアニメの舞台化だったんですがオリジナルのアニメも超面白く今年10年ぶりの2期も配信されたので是非!(私的な発言)僕は当たり前だけどアニメには出てないよ笑


●問題3
次の音声を聴いて問題2と同様に「パラ言語情報」と「非言語情報」の各項目を書いてみましょう。

◉問題3 考え方
台本である「言語情報」は同じながら、受ける印象が全く違うのではないでしょうか?(演じてる人間は同じ ※僕です)言語情報(台本)は一緒ですから、聴いた際に印象が変わったとされる要因は「パラ言語情報」「非言語情報」の2つになると言う事ですね。問題2と問題3の音声から受けた印象の違いはどこから来ているのかは表を見れば一目瞭然になると思いますよ!


さてここで勘の良い方であれば表を見て、こんなパターンもできるのではないか?と考えるのではないでしょうか?


●問題4
最終問題です。
次の簡単な台詞を3つの異なるキャラクター(非言語情報)でそれぞれ3つの感情(パラ言語情報)「喜び、悲しみ、怒り」で読んでみましょう。

例文:「おはよう田中さん」

実際に声に出して試してみてくださいね、感情を変えた時に意外とキャラクターが崩れてしまったりする方もいるのではないでしょうか?こんな問題楽勝だったぜ!と言う方は素晴らしいです!

実践してみてもらった事を図にするとこんな感じです。

簡単に9種類の表現の演じ分けが出来たと言うことになりますよね。
参考までに僕も実際に試してみました!

実際にやってみるとなかなか難しい苦笑。やっぱり感情を変える時に
キャラクターが変わってしまったり、キャラクターを維持しようとすると感情がうまく表現できなかったり。。そう考えるとやっぱりプロの声優さんってすごい技術を持ってるんだなあと改めて実感致しました!!

ひとまずこれが出来た人は台詞を長く変えてみたり、キャラクターや感情の種類を少しずつ増やしたり、キャラクターや感情の難易度を上げていくように練習をしても良いと思います!


●今回のまとめ
4時限目の講義いかがでしたでしょうか?音声が伝えている3つの情報、そして声で演じる3つの情報でもある「言語情報、パラ言語情報、非言語情報」を実感する事が出来たとしたら嬉しいです。

前回3時限目と今回4時限目の内容である、いわゆる「藤崎の三分法」に関しては国立国語研究所、日本音声学会前会長の前川喜久雄先生の研究論文と著書を読みハッとさせられ、これは声優音声の指導に応用できるのではないかと考えレッスンでも話している内容となります。そして日本音声学会主催の音声学セミナーで講義させていただいた際にこちらも発表させていただき、前川先生ともお話しさせて頂きました。現在は音声学と芸能音声の交流はあまり盛んではない(ほぼない)のですが戦前は音声学と芸能音声との交流もあったとお聞きし、素晴らしい音声の研究をされている先生方の基礎研究を僕は芸能音声に応用していきたいなと考えています!音声学と連携が取れたら芸能音声教育の質はグッと向上し、声優や歌手を目指す夢を持った子供たちの力になれるのではと思います。曖昧な指導だと結局できないのは習う側のセンスがない、向いてないと思わされてしまうと思うからなんです。教える側の知識、技術の向上が大切と思っています!

※参考文献
・論文
音声はパラ言語情報をいかに伝えるか(前川・北川2002)
パラ言語情報の生成と知覚(前川2003)
・著書
音声は何を伝えているか 感情・パラ言語情報・個人性の音声科学/森大毅、前川喜久雄、粕谷英樹著(コロナ社)


と言うわけで今週の講義はここまでとなります!次回5時限目は「人がどんな音をどのように感じるか」と言った講義になりますよ!演技を聴くのは最終的に視聴者の方や、オーディションの審査員や事務所のマネージャーさんなどリスナーですよね。この知識知っておくと演技の考えがグッと変わると思います、お楽しみに!!

それでは5時限目の講義まで各自休憩くだされ。




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